「Why You Wanna Treat Me So Bad」は1979年のセルフタイトルが付けられたセカンドアルバム「Prince」の曲です。デビューアルバムの路線を拡張させ、よりダイナミックに、よりキャッチーに仕立て上げられた素敵なポップ・ロック曲です。シンセとギターが絡み合うサウンドはとても洗練されています。

しかしながら、少々語弊があるかもしれませんが、この曲は私の中では「ザ・普通の曲」として不動の地位を得ています。このような見事に洗練された曲をこう呼ぶのも妙なことかもしれませんが、私には、この曲は「プリンス」の基準から少しズレているように感じられるのです。この感覚は、前回取り上げたもうひとつの「普通に良い曲」こと「17 Days」とも似ています。共通しているのは歌詞への違和感です。「17 Days」は元々ブレンダ・ベネットのために書かれたこともあり、通常プリンスが自身の名義でリリースする作品とは異なる雰囲気の歌詞が付けられていました。それと同じように、「Why You Wanna Treat Me So Bad」の歌詞はプリンス本人ではなく、まるでどこかの疑似プリンスバンドの人間が、プリンスを意識して書いたもののように私には感じられます。

そうは言っても、真っ当な男性キャラの男性で、この曲を歌っておかしなことにならない人はプリンスくらいしかいないであろうことも痛感します。YouTube で見つかるカバーをいくつか聴くと、女性が歌っているものはそれほど違和感がないのですが、男性にこの曲を歌われるともの凄く変な歌に聴こえます。それに、曲の始まりと共に入るシャウトは非常に強い「プリンス感」を漂わせます。

歌詞のどの辺がズレているのかはっきり説明していなかったので一応書いておくと、それは、実際にこの曲の相手の身になってみると「これはちょっと・・・」と引いてしまうところです。私の場合、プリンスに歌詞でこのように感じるのは珍しいことです。

プリンスは1978年にデビューした時点で既に素晴らしい作詞家でした。例えば「For You」の真摯な美しさには心を打たれるよりほかはありませんし、際どくユーモアが混ぜられたデビューシングルの「Soft And Wet」も素敵です。プリンスのように私の心に響く歌詞を書く作詞家は、他には誰一人として存在しません。セカンドアルバムも、この曲以外には違和感を抱かせる歌詞はありません。それだけに、この曲の歌詞は余計に引っかかります。


この曲にはミュージックビデオがあります。前述の歌詞もそうですが、ビデオを観ても、これはまだ「プリンス」という存在が発展し始める前の、1979年という絶妙なタイミングが生み出した曲なのだ、というのが分かって面白いです。プリンスは一切カメラに目線を向けず、取って付けたような過剰アクションで動き回ります。また、ドクター・フィンクが素肌に光沢のあるジャケットを合わせるという服装をしているのも注目に値します。ドクター・フィンクは、翌1980年の「Uptown」や「Dirty Mind」のビデオになると、トレードマークの手術着を着てカクカク動く姿が確認できます。


There's some talk goin' around town that U really don't give a damn
They say U really put me down when I'm doin' the best I can
I gave U all of my love, I even gave U my body
Tell me, baby, ain't that enough?
What more do U want me 2 do?
街の噂じゃ僕はどうでもいい男なんだってね
僕は精一杯やっているのに君は酷い言いようだって
君には僕の愛の全てをあげたし、カラダだってあげた
教えてよ、それじゃ足りないっていうの?
これ以上僕は何をしたらいいの?

I play the fool when we're 2gether
But I cry when we're apart, yeah
I couldn't do U no better
Don't break what's left of my broken heart, baby
一緒の時はおどけたふりをしているけど
離れ離れの時は泣いているんだ
これ以上は上手くなんてできないよ
僕の壊れた心の残骸まで壊さないでおくれ

Why U wanna treat me so bad when U know I love U?
How can U do this 2 me when U know I care?
Why U wanna treat me so bad when U know I love U?
どうして僕につれない仕打ちをするの?
僕の愛を知っていながら
どうして僕をこんな目に遭わせるの?
僕の想いを知っていながら
どうして僕につれない仕打ちをするの?
僕の愛を知っていながら

U know I try so hard 2 keep U satisfied
Sometimes U play the part, sometimes U're so full of pride
And if it's still good 2 ya, why U wanna treat me so bad?
U used 2 love it when I'd do ya
U used 2 say I was the best U'd ever had
君を満足させるために僕が一生懸命なのは知ってるよね
時に君はその役に応え、時に君はプライドの固まりになる
それで気持ち良くなってくれるなら、どうして僕につれなくするの?
前は僕がすると喜んでくれたのに
前は僕が今までで最高だと言ってくれたのに

I play the fool when we're 2gether
I give U everything I can, yeah
And if it's still good 2 ya
There's just somethin' that I can't understand
一緒の時はおどけたふりをしているけど
僕は君になら何だって捧げられる
それでまだ気持ち良くなってくれるなら
どうしてなのか僕には理解できないんだ

Why U wanna treat me so bad when U know I love U?
How can U do this 2 me when U know I care?
Why U wanna treat me so bad when U know I love U?
どうして僕につれない仕打ちをするの?
僕の愛を知っていながら
どうして僕をこんな目に遭わせるの?
僕の想いを知っていながら
どうして僕につれない仕打ちをするの?
僕の愛を知っていながら