少し気が早いのですが、9月25日にリリースされる「Sign O' The Times Deluxe」の収録曲から「A Place In Heaven」を取り上げます。元々は「Dream Factory」のコンフィギュレーションに含まれていましたが、ザ・レボリューションの解散とプロジェクトの取り下げによってお蔵入りになった曲です。

今回のリリースでは楽しみな曲が沢山あります。それにアルバムの音質がどれくらい改善されているのかも気になります。そんな中で、今回のリリースを知って私の頭に真っ先に思い浮かんだのはこの曲でした。実のところ、私はそれ以来ほとんどこの曲ばかり聴いています。「A Place In Heaven」とはそれほどの曲なのか?と思うかもしれません。それについては私ははっきりと答えられます。

はい、「A Place In Heaven」とはそれほどの曲です。

「A Place In Heaven」はワルツのリズムで奏でられる可愛いらしい子守唄、といった佇まいをしています。尺も3分に満たない小曲なので、他の様々な楽曲の陰に隠れてしまい、あまり注目されることのない曲かもしれません。ですが、この「A Place In Heaven」もまた、紛れもなくプリンスの偉大な曲の一つです。私は、この曲を聴いている間、まるで自分が世界で一番素敵な音楽を聴いているかのような気分になります。私にとってはそれほどの曲です。

「A Place In Heaven」は歌詞がとても意味深い曲です。この曲は、己への哀れみに囚われた一人の女性の描写から始まります。彼女は自らの命を断つことを考えながら生きていますが、そこから歌は展開していきます。人は既に天国にいるかもしれないのに、自ら進んで世界を地獄に作り変えているのかもしれないとプリンスは歌います。歌詞の全体的な調子、それに「Life's what U make it / 人生は自分でつくるもの」や「3-year-old leaders of all colors / あらゆる色からなる三才のリーダーたち」といった言葉は、回顧録「The Beautiful Ones」を思い起こします。過去記事の「プリンスの回顧録: The Beautiful Ones」でも引用した文章を再び引用します。「PART II. FOR YOU - 7. SOUTHSIDE」の注釈からです。

If I want this book to be about one overarching thing, it's freedom. And the freedom to create autonomously. Without anyone telling you what to do or how or why. Our consciousness is programmed. We see things a certain way from a young age - we're programmed to keep doing them that way. Then you have to spend adulthood learning how to overcome it, to read out the programs. Try to create. I want to tell people to create. Just start by creating your day. Then create your life.
もし僕がこの本に全体を跨ぐテーマを持たせたいとしたら、それは自由だ。何を、どのように、なぜするかの束縛を他の誰からも受けずに、自律的につくることのできる自由。僕らの意識はプログラムされたものだ。僕らは幼少の頃から一定の物の見方をするように育ち、その見方を継続するようにプログラムされている。そして大人になるとそれをどのようにして克服し、プログラムを読み解くかを学ばなければならない。つくり始めよう。僕が皆に言いたいのは、つくる、ということだ。まずは君の一日をつくることから始めればいい。そうしたら、次は君の人生をつくろう。

また、回顧録を読んだ方は「PART II. FOR YOU - 3. KISS」の章を覚えていますでしょうか。一緒におままごとの夫婦ごっこをしたローラという名前の女の子との素敵な話です。その中に次の文があります。

We weren't the 1st interracial couple in Minneapolis, but we were no doubt the youngest. All lives mattered back then because race didn't. At least not in r fantasy world.
僕らはミネアポリス初の異人種カップルというわけではなかったが、疑いようもなく最年少の異人種カップルだった。あの当時は全ての命が大切なものだった。なぜなら人種はどうでもいいものだったから。少なくとも僕らの空想の世界ではそうだった。


この曲はプリンスのヴォーカルと、リサ・コールマンのヴォーカルの2つのバージョンがあります。プリンスバージョンの音源には、イントロ部分に "So, do you like environmental records?" から続く面白いセリフが入ったものがありますが、これはこの曲ではなく「Movie Star」のものです。これは「Dream Factory」制作途中のコンフィギュレーションで一時「Movie Star」の後に繋がっていたためで、オフィシャルリリースではセリフが入らないものが収録されるものと思います。

「Dream Factory」の最終コンフィギュレーションにはリサ・コールマンがヴォーカルのバージョンが含まれていました。


She wants a place in heaven
But she can not face the truth
She lives on a rope of self-pity
It only requires a noose
彼女は天国に居場所を欲してる
けれども真実と向き合えずにいる
己への哀れみでできた綱の上に生きている
あと必要なのは首を括る輪だけ

Why are the ones so afraid 2 live
Much more afraid 2 die?
It's as easy 2 imagine laughing
When U really hear a cry
In hell, they sound the same
なぜ生きることを恐れるの?
それ以上に死を恐れながら
本当は泣き声が聞こえているのに
それを笑い声だと思うのは簡単
地獄ではどちらも同じに聞こえるのだから

U want a place in heaven
Maybe U're already there
Life's what U make it, stop whining, baby
Love comes 2 those who care
君は天国に居場所を欲してる
もしかしたら君はもうそこに居るのかも
人生は自分で作るものだから
泣き言は終わりにしなきゃ
愛は思い定める者にやって来るもの

There must be children in heaven
Ones who know nothing from hate
3-year-old leaders of all colors
I'd feel safer with them in control
3-year-olds in control
天国にはきっと子供たちがいる
憎しみの欠片も知らない子供たちが
あらゆる色からなる三才のリーダーたち
彼らの権力下にいる方が安全だと感じるよ
三才の子供たちによる治世

We all want a place in heaven
Suites of that level are few
Let's not be lazy, there's no room service
It's all up 2 me and U
Let's not be lazy, there's no room service
it's all up 2 me and U
僕らは皆天国に居場所を欲してる
でもその階の部屋数は限られてる
のんびりするのは程々に
ルームサービスは付かないよ
全ては僕と君しだいさ
のんびりするのは程々に
ルームサービスは付かないよ
全ては僕と君しだいさ