You can always renegotiate a record contract.
You just go in and say, 'You know, I think my next project will be a country & western album.'
レコード契約ならいつだって再交渉できるよ。ただこう言えばいいんだ。
「あのさ、僕の次のプロジェクトはカントリー&ウエスタンのアルバムにしようと思ってるんだけど」

何から書き始めたら良いのか分からないので、とりあえず1990年の Rolling Stone 誌の記事に出てくるプリンスの言葉を引用しました。

今回取り上げる曲は、カントリー歌手の大御所ケニー・ロジャースに提供された「You're My Love」(1986年) の、プリンスによるオリジナルバージョン (1982年録音) です。といってもこの曲は特にカントリーというわけではなく、ミドルテンポの王道ラブソングといった感じです。プリンスがこんな王道ソングを作ってしまうのかという珍しさはあったものの、従来知られていたケニー・ロジャースのバージョンは取り立てて注目を集めるような曲ではありませんでした。

しかしながら、私にとっては、この曲は長年特別な位置を占める大切な曲でした。今でこそ YouTube でもプリンスの様々な楽曲を聴くことが可能になっていますが、昔はプリンスの音楽は YouTube では禁じられていました。そんな時代に、私がプリンスの癒しを得るために真っ先に向かうのがこの曲だったのです。そんな経緯で、もしプリンス本人のボーカルによる「You're My Love」が存在するならば、それを聴くことは私の人生の願いの一つであると言えるほどに、この曲の存在は私の心の中でとても大きなものに育っていました。

そして、私の人生の願いは「Originals」のリリースによって叶えられることになりました。

私は「With You」や「I Spend My Time Loving You」を聴きながら、作品のリリースを心待ちにする日々を過ごしました。プリンスの歌う「You're My Love」も、きっとこのような優しくて素敵な曲なのだろうという思いを馳せながら。あまり注目度の高い曲ではなかったため、私は世界で一番この曲のリリースを待ち望んでいたファンだったかもしれません。


そして遂に作品がリリースされました。

それは全くの予想外の曲でした。というか、これを予想できた人は誰もいないでしょう。この曲を初めて聴いたときは、作品リリース前のイベントに参加して断片を聴いたのみだったので、私の中で何かが音を立てて崩れていく……のを感じる余裕もなく、私はただ困惑することしかできませんでした。何しろ断片的に聴いたその音源からは、ボーカルが誰の声なのか識別できなかったのです。例えばリハーサル音源の「When Doves Scream」でも、知らない人が聴けば「どこの UK パンクバンドがカバーしたの?」としか思えないような声をプリンスは出しています。「You're My Love」はもちろんそれとは違うダンディな声ですが、これまで聴いたことのない正体不明な声をプリンスは発していました。

私の中で何かが音を立てて崩れていったのは、家に帰ってこの曲をフルで聴いてからです。

I love U babe, love U babe, love U babe, love U love U love Uoouuuh

……本当にこの人、誰ですか? (笑)

この衝撃は、個人的には少年隊の「I love you, no, no, no」に迫るものがあります。

それでも何度も繰り返し聴くうちに、ああ、これを歌っているのはプリンスなんだな、と思えるようになりました。私が一人でこの曲ばかり聴いていると、妻が訝しげに聞いてきました。

- 何でこんな曲を何度も繰り返し聴いてるの?
いや、これ私の好きな曲だから
- 私も知ってる人?
そうだよ
- ジェームス・イングラム? いや違う……誰?

下は Linda Ronstadt & James Ingram の「Somewhere Out There」です。

この調子で「The Arms Of Orion」の正体不明バージョンも想像できるような、できないような……。

とにかくプリンスがなぜこのような王道ラブソングを書いたのか、プリンス自身のボーカルを聴いて何となく合点がいったような気がします。この曲は存在自体がジョークみたいなものだったんですね。プリンスは、2度目のコーラスでおそらく間違って、「U're my love, I love when U're around」を2回歌っています。しかし修正のために歌い直すこともなく……。

プリンスの Originals のバージョンを実際に聴くまでは「私の選ぶ曲一覧」を書き換えなければいけないかも、などと思ったりもしたのですが、良かったのか良くなかったのか、それは杞憂に終わりました。真面目に歌ってくれたらどんなに素敵な曲だったのだろうとも思いますが、これもまたプリンスということで、私にとってはやっぱり好きな曲です。


U want 2 know if I care 4 U
When U ought 2 know by now
How can U stand there just pretending?
When U know how I feel
僕が君を愛してるのか知りたがるんだね
君はとっくに知ってるはずなのにね
どうして突っ立ってそんな素振りをするの
僕の気持ちならちゃんと知ってるくせに

Oh baby, U're my love and I love everything U do 2 me
U're my love and I love when U're around, oh
U're my love and I'll never let U down
ねえ君は僕の恋人だから、君のしてくれること全てが嬉しいんだ
君は僕の恋人だから 君が傍にいてくれると嬉しいんだ
君は僕の恋人だから、僕は決して君を落ち込ませたりはしない

U want 2 know what I see in U
But I can't really say 4 sure
All I know is that I needed U
More, more than I've ever needed anyone else before
僕が君に何を見るのか知りたいんだね
だけど僕にはきちんと答えられない
ただ僕に言えるのは僕には君が必要だということ
今まで他の誰にも感じたことがないほどに

Oh baby, U're my love and I love what U do, do 2 me
U're my love, I love when U're around, yeah
U're my love, I love when U're around
ねえ君は僕の恋人だから、君がしてくれることが嬉しいんだ
君は僕の恋人だから、君が傍にいてくれると嬉しいんだ
君は僕の恋人だから、君が傍にいてくれると嬉しいんだ

Seasons changing faster than they did when we were young
It's funny but we didn't seem 2 care
The only thing we cared about was keeping our love strong
And as long as U're there, I'll always care
季節は僕らが若かった頃よりも早く移り変わってゆく
おかしなことだけど、僕らは気にも留めなかったね
僕らはただ愛を強く保つことだけを思い続けてきた
君が傍にいる限り、僕はいつだって思い続けるよ

U're my love, I love what U do 2 me, my love
U're my love, I love when U're around, oh baby
Honey, I love, yeah...
君は僕の恋人だから、君がしてくれることが嬉しいんだ
君は僕の恋人だから、君が傍にいてくれると嬉しいんだ
ハニー、愛してるんだ・・・

Stop your pretending, U know how I feel
I love U babe, love U babe, love U babe, love U, love U love U... yeah...
I love U...
U're my love, U're my love, yeah
そんな真似はよしてくれよ、僕の気持ちなら知ってるくせに
愛してるよ、愛してるよ、愛して愛して愛して愛してるよ
愛してるよ・・・
君は僕の恋人さ、君は僕の恋人さ・・・