「Walk Don't Walk」は1991年のアルバム「Diamonds And Pearls」に収録されている曲です。濃くて存在感の強い曲が並ぶこのアルバムにあって、素直で可愛らしい感じのするこの曲は尺も3分7秒と短く、あまり目立たない曲に思えるかもしれません。しかし、私はこの曲がたまらなく好きです。

この曲に対する思いは、この曲から何を感じ取るかによって変わります。私にとって、この曲をより特別なものにしているのはその歌詞です。しかしながら、素直な曲調とは対照的に、その歌詞はなかなかのあまのじゃくで一瞬戸惑います。曲の前半は、まるで自分を抑えて他人にいいようにされる生き方を肯定するかのような言葉が並び、かなりの違和感を受ける内容になっています。ちなみに "walk (all) over" というのはイディオムで、他人に敬意を示さず酷い扱いをする、といった意味があります。

Don't walk with a confident stride
Then people will walk all over U
But don't talk till they tell U 2
Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
自信ありげな足取りでは歩いちゃダメ
そしたら君は皆のいいようにされるだろう
でもいいと言われるまでは話しちゃダメ
ルール違反になるなら話しちゃダメ
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね

しかし、後半になると主張が変化します。そして最終的に次のポジティブなメッセージに行き着きます。

The sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

この部分だけを抜き出すと、安直とも受け取れるほどにシンプルなメッセージです。しかし、そこに至るまでの歌詞にも目を向け、そしてこの曲を書いたのがプリンスであることを思い出してください。このメッセージに辿り着くまでにどれほどの葛藤があったのでしょう? そして逆境に打ち克つためにどれほどの勇気と覚悟が必要だったのでしょう? プリンスは世の中の誰にも真似のできない人生を送った人でした。プリンスがどんな人物で、どんな人生を送ったかを知らないと、私がどれほどこの曲を特別に感じているかが伝わりにくいと思います。そんなこともあって、前回と前々回の記事でスーザン・ロジャースのインタビューを2つ紹介しました。

また、個人的には、後に表面化することになるマスターテープの所有権を巡るレコード会社との戦いにも思いが及びます。特に思うのは、プリンスが頬に "SLAVE" と書き、名前を変えてシンボルになっていた時期にあたる1996年の、Rolling Stone 誌のインタビューでの発言です。

Then people say I'm a crazy fool for writing on my face. But if I can't do what I want to do, what am I? When you stop a man from dreaming, he becomes a slave. That's where I was. I don't own Prince's music. If you don't own your masters, your master owns you.
今、頬に "SLAVE" と書いていることで僕は頭のおかしい人だと思われている。しかし、やりたいことをさせてもらえないのなら、僕は何者だっていうのだろう? 他人の夢を断つということは、その人を奴隷 (slave) にするということ。それが僕が置かれていた状況なんだ。僕はプリンスの音楽の所有権を持っていない。マスター (マスター音源) を所有しない者は、マスター (レコード会社) に所有されるんだ。

マスターを所有するか、それともマスターに所有されるか。この発言は、何となくこの曲のタイトルや主張にも通じるところがあるように思います。


さて、この曲が素晴らしいのは歌詞だけではありません。この曲のさらに素晴らしいところは、これほどの意味深いメッセージが、とても愛らしい素敵な音楽に乗せられていることです。

ちなみに、Peach & Black ポッドキャストのレビューでは、この曲はセサミストリートでやったら楽しいだろうね、と言っていて、なるほどと思いました。例えばマペット放送局バージョンの「Starfish And Coffee」を思い浮かべてみてください。「歩くの?歩かないの?」とマペット達と一緒になってプリンスが道を行ったり来たりして、道の真ん中でクラクションを鳴らされながらも「そんなの気にしないよ」と言わんばかりに「シャーララーラララー♪」と歌うビデオがもし作られていたら・・・。そんなビジュアルイメージが脳裏に浮かぶと、ますます素敵な曲に思えてきます。

ところで、PrinceVault を確認すると、この曲のベースギターはリーヴァイ・シーサー・Jrが演奏していることになっているようなのですが、実際にはベースギターの音は聴こえません。「ンンンー♪ ンンンー♪」というプリンスの低音ハミングが聴こえるだけです。この曲は遂にプリンスのコンサートで演奏されることはありませんでしたが、もし演奏されていたとしたら低音ハミングは誰がやることになったのでしょうか。トニー・Mでしょうか・・・なんてことを思ったりします。


Walk on their side of the street
Don't walk where it feels the best
Walk away from people U meet
Don't talk 2 strangers unless
They walk the way U want them 2
Don't walk unless the others do
歩かなきゃ - 通りの彼等の側を
歩いちゃダメ - ベストだと感じる場所は
離れなきゃ - 出会う人達から
話しかけちゃダメ - 見知らぬ人が君にとって
好ましい歩き方じゃなかったら
歩いちゃダメ - 皆も歩いてなかったら

I said walk like U could use a ride
Don't walk with a confident stride
Then people will walk all over U
But don't talk till they tell U 2
Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
Yeah, that's what they want U 2 do
歩かなきゃ - 乗り物に乗りたそうな素振りで
歩いちゃダメ - 自信ありげな足取りでは
そしたら君は皆のいいようにされるだろう
でも話しちゃダメ - いいと言われるまでは
話しちゃダメ - ルール違反になるのなら
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね
それが皆の望むことだからね

Sha, na, na, na, na {x4}
シャ・ナ・ナ・ナ・ナ {x4}

Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
話しちゃダメ - ルール違反になるのなら
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね

So U gotta walk like U wanna make it
Don't walk like U just can't take it
G'on walk on whatever side U like
Don't walk wherever they tell U 2 - psyche!
The sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way
だから間に合いたいと思って歩かなきゃ
耐えれられなそうな素振りで歩いちゃダメ
どんどん歩かなきゃ - どちらでも好きな側を
歩いちゃダメ - 言われた通りの所は - なんてね!
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

Oh, the sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way (Hey)
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

Sha, na, na, na, na {x4}
シャ・ナ・ナ・ナ・ナ {x4}

(Checkin' me now just walkin')
Said I'm walkin' on your side of the street
(Checkin' me now just walkin')
I'm talkin' 2 the people I meet
(Checkin' me now just walkin')
Alright
Hey
(Alright)
(ほら私は歩いているわ)
ほら歩いているよ - 通りの君の側を
(ほら私は歩いているわ)
話しているよ - 出会う人達とも
(ほら私は歩いているわ)
オーライ
ヘイ

Walk - don't walk
Talk - don't talk
Walk - don't walk {fade out}
Talk - don't talk
歩いて - 歩いちゃダメ
話して - 話しちゃダメ
歩いて - 歩いちゃダメ
話して - 話しちゃダメ