仕えの修羅: はーーっ、はーーっ。ハ…ハン様、あなたはそうやって 何曲プリンスの曲の評価を翻してきたのですか!?

第三の羅将ハン: 百曲から先はおぼえていない!!

これは漫画「北斗の拳」の修羅の国編に登場する、白き雪も紅に染める男、第三の羅将ハンという人物の有名なセリフです。

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今回取り上げる曲は「The Latest Fashion」です。この曲はオフィシャルには1990年のアルバム「Graffiti Bridge」に収録され、モーリス・デイとプリンスの両リードボーカルで The Time の曲としてリリースされています。また、この曲は元々1987年4月に最初のベーシック録音が行われ、その後1989年に The Time 未リリースアルバム「Corporate World」用にモーリス・デイのボーカルオーバーダブが行われましたが、これらはいずれも未リリースの状況です (PrinceVault の説明)。

実を言うと、私は30年近くに渡って「The Latest Fashion」は自分の好みに合わない退屈な曲だと思っていました。そして何とも鈍いことに、私は今になってやっとこの曲の意味に気付き、驚きと感激と懺悔の気持ちが入り交じる中、この文章を書いています。

Graffiti Bridge バージョン

まずはお馴染み、「Graffiti Bridge」のオフィシャルバージョンです。実を言うと、私は今までこの曲があまり好きではありませんでした。

The Time のアルバム「Pandemonium」を聴いたことがあればご存知の通り、この曲は「My Summertime Thang」と共通の音楽で作られています。しかし、素直に気持ちの良い「My Summertime Thang」とは異なり、こちらは何かと引っ掛かる曲になっています。

  • モーリスの変な笑い声が入っている
  • 歌詞の意味がよく分からない
  • シナリオ上まだプリンスとモーリスは和解していないのに、プリンスがボーカル参加している
  • プリンスはあまつさえ、敵対する The Time の曲でノリノリでラップまでしている
  • 音楽が妙に捻られており、カンフーテイストが漂っている
  • そもそもなんで音楽が「My Summertime Thang」なの?

個人的には、中でも音楽テイストの捻りが気になります。私だけかもしれませんが、この曲を聴くとどうもカンフー映画の音楽が頭をよぎってしまうのです。具体的には、例えばブルース・リーの「燃えよドラゴン」のテーマ曲がそれです。

……はい。いざ実際に聴いてみたら、音楽パーツに被っている箇所がひとつもなくてびっくりしました。絶対似ているはずだと思ったのですが (苦笑)。それでも私はこのバージョンの「The Latest Fashion」からカンフーテイストを感じます。詳しくなくて見つけられないのですが、これとは別に似ている曲がありそうな気がします。


いずれにせよ上記の様々な理由により、以前の私はこの曲にあまり良い印象を持っていませんでした。しかし、この曲を調べる中で、私の認識は改めさせられることになりました。それは、映画「Graffiti Bridge」からカットされたシーンに「The Latest Fashion」のパフォーマンスがあることを知り、それを見て私はこの曲を完全に誤って解釈していたことが分かったからです。

そのカットされたシーンでは、プリンスとモーリス・デイが同じ路上に立ち、「The Latest Fashion」でバトルを繰り広げます。

モーリス達は、「Bird」のところで勿論バードのダンスをやっています (笑)。

完成版の映画では、後半にモーリスと The Time が「Shake!」、プリンスが「Tick, Tick, Bang」をそれぞれ演奏し、バトルをします。ここにどのように組み込むかは何とも難しいところですが、ひょっとして、もし「The Latest Fashion」が入っていたら、このパフォーマンスは映画のハイライトとなっていたのではないでしょうか?

これが二人のバトルだと分かると、奇妙に思えたカンフーテイストが非常にグルーヴィーに聴こえてきます。それにプリンスに立ちはだかるモーリスの高笑いは、手に汗握る展開をいっそう際立たせる心憎い演出です。

音楽やエフェクトだけではありません。この曲は歌詞だって完璧です。曲の最初、モーリスは「これは暇潰しだね」と余裕しゃくしゃくで登場します。

Fellas! (Yeah!) Hit me!
Are we ready? I do believe we are ready
What time is it? (Yount) (It's killin' time, Morris)
I know that's right cuz I am
The latest fashion, hahaha...
Go Morris, Go Morris... (Mmm) (Yount)
Go Morris, Go Morris...
お前ら! (おう!) やってくれ!
準備はいいか? どうやらいいようだな
今は何の時間だ? (暇潰しの時間さ、モーリス)
もちろんその通りさ、何たってまさに俺がしてることだからな
流行の最先端さ、ハー・ハ・ハ・ハ
Go・モーリス、Go・モーリス・・・
Go・モーリス、Go・モーリス・・・

そして第2ヴァース。ターンが変わり、今度はプリンスがリードボーカルを取ります。

People, tell us what we want 2 hear (Time)
This time the tables have turned (Yeah)
This time we're the ones that's building fires (Time)
Instead of getting burned (Oh) (Yount)
みんな、俺達が聞きたいことを言ってくれ
今度は立場が逆転したのさ
今度は俺達が火を焚き付ける番さ
火傷を負うのは俺達じゃないぜ

この背景として、映画の序盤、モーリスがプリンスのクラブ Glam Slam に赴き、観葉植物に火を付けるシーンがあります。プリンスが歌う第2ヴァースは、見事にそれをやり返す歌詞になっています。

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それにしても、同じ曲でモーリスとプリンスが代わる代わるリードボーカルを取り合うなんて、「Purple Rain」でもこんなシーンはありませんでした。何なんでしょう。感激が込み上げます。まさか「The Latest Fashion」がアルバムや映画のハイライトとなるポテンシャルを持った曲だったとは……30年近くも私は気付きませんでした。プリンスに脱帽です。


Fellas! (Yeah!) Hit me!
Are we ready? I do believe we are ready
What time is it? (Yount) (It's killin' time, Morris)
I know that's right cuz I am
The latest fashion, hahaha...
Go Morris, Go Morris... (Mmm) (Yount)
Go Morris, Go Morris...
お前ら! (おう!) やってくれ!
準備はいいか? どうやらいいようだな
今は何の時間だ? (暇潰しの時間さ、モーリス)
もちろんその通りさ、何たってまさに俺がしてることだからな
流行の最先端さ、ハー・ハ・ハ・ハ
Go・モーリス、Go・モーリス・・・
Go・モーリス、Go・モーリス・・・

I know I said I loved U
I know I said I needed U
I know I said that I'd be here always
But I what I didn't tell U is that...
ああ、俺はお前を愛してると言ったよ
ああ、俺はお前が必要だと言ったよ
ああ、俺はいつもここにいると言ったよ
でもお前に言ってなかったのは・・・

This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ

People tell us what we want 2 hear (Time)
This time the tables have turned (Yeah)
This time we're the ones that's building fires (Time)
Instead of getting burned (Oh) (Yount)
みんな、俺達が聞きたいことを言ってくれ
今度は立場が逆転したのさ
今度は俺達が火を焚き付ける番さ
火傷を負うのは俺達じゃないぜ

This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ

Hahaha... (Go Morris...)
Jellybean, don't be so mean, uh!
Cowboy (Ow!)
Heh heh, U're fired (Oh)
Jam Jimmy...
Mmm
ハー・ハ・ハ・ハ
ジェリービーン、いじわるはよしてくれよ
カウボーイ
ハハ、お前はクビだよ
ジャムだジミー・・・

People tell me what I want 2 hear
This time the tables have turned
Jerome, body language (Go Morris...)
Now do The Horse, yes (Go Morris...)
Oak Tree! Look out, I like that, Oak Tree! (Go Morris...)
Get ready, Chili Sauce (Go Morris...)
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
みんな、俺が聞きたいことを言ってくれ
今度は立場が逆転したのさ
ジェローム、ボディランゲージ
ザ・ホースをするんだ
オーク・ツリー! 良いね、オーク・ツリー!
準備はいいか、チリ・ソース
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ

Fellas (Yeah!), hit me and don't cha lag (Go...)
Tell me what dance 2 do, it start with an M (Murph Drag)
Good God (Go...)
I ain't thru yet, band
Squawk! Hallelujah, whoa
Uh
お前ら (おう!) やってくれ、グズグズするなよ
次のダンスを言ってくれ、Mから始まるやつ (マーフ・ドラッグ)
グッガー
まだ終わりじゃないぜ、バンド
スクヮーク! ハーレルーヤー
オーオーオーオー

Everybody wanna tell me how 2 play the game
When I run it better than a Madame runs dames
Tryin' 2 beat me is like playin' pool with a rope
My funk will leave ya dead cuz it's good and plenty dope
All in all, I'm still the king and all y'all's the court
If U're pregnant about ruling me, U better get abortions
Yes, it's jacked cuz I'm back
And I'm harder than a heart attack
Said I'm the cure 4 any disease cuz ain't nobody funky like me
誰もが俺にゲームのやり方を教えたがる
俺はマダムがデイムを手玉にとるより上手くやるってのに
俺を負かそうとするのはロープで玉突きするようなもの
たっぷりキマった俺のファンクでお前はイチコロさ
つまるところ俺は王様でお前達は皆臣下のままさ
お前が俺を支配しようと企ててるなら堕ろした方がいいぜ
俺が戻ってきたからにはもう観念しな
俺は心臓発作よりもハードだし
どんな病だって治癒させる
俺ほどファンキーな奴はどこにもいないからね

Hahaha... (Go Morris...)
Don't be a fool
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion
The latest fashion {repeat}
Hahaha...
ハー・ハ・ハ・ハ・ハ
愚かなマネはよすんだ
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ
最先端の流行 {繰返し}
ハー・ハ・ハ・ハ・ハ

Corporate World バージョン

この曲は「Corporate World」のバージョンも必聴です。

唐突なのですが、海外ドラマ「Breaking Bad」に出てくるトゥコ・サラマンカ (Tuco Saramanca) というキャラクターをご存知でしょうか? わずか4エピソードの出演ながらも、狂人として非常に強烈なインパクトを残したキャラクターです。

以下は「Breaking Bad」のシーズン2、エピソード1で、トゥコと主人公であるウォルターが取引をする場面です。トゥコは、ウォルターの合成したメタンフェタミンが透明ではなく青みがかっていることで「何だコレ、青いじゃないか」と面白がりますが、ひとたびブツを試すと反応を一変させます。

Tuco: Tight, tight, tight, yeah! Blue, yellow, pink, whatever man. Just keep bringing me that.

「これが曲と何の関係が?」と思われるかもしれません。ですがちょっと聴いてみてください。

何とびっくり、リリースバージョンとは全然違う曲です。しかもこちらのバージョンは、「Tight! Tight! Tight!」、ただひたすらにタイトです。

ちなみに、これはこの曲だけの傾向ではありません。前回の「Nine Lives」もそうですが、プリンスとモーリスがより密にタッグを組んだ「Corporate World」は、The Time が自分達の色を出した「Pandemonium」と比べ、全体的に音楽がよりタイトなのが特徴です。そこにはより生々しいプリンスのサウンドがあります。「Pandemonium」と「Corporate World」は構成に一部の重複がありますが、両作品から受ける印象はかなり違います。

また、こちらのバージョンは歌詞や歌のテーマも違います。「Graffiti Bridge」バージョンでは意味が取りづらかった部分も、こちらを聴くと「本当はこんな意味だったのか」と分かります。恋人とのイザコザを通して「お前を好きだとは言ったけど、昨日は昨日、明日は明日さ。それよりも情熱に身を任せて生きるのが最新の流行だぜ」と、こちらの方がストレートに意味が取れ、またモーリスのキャラもよく出ています。


Huh!
- Morris? It's me - Listen, about last night
- That guy, he really was my cousin.
- Um, it's not what U think
- Oh that what U see, he's always curious about the way I kiss
- U know, like... so... Morris?
- モーリス、私よ - 聴いて、昨夜のことだけど
- あの彼、本当に私の従兄弟なのよ
- あなたの勘違いなの
- 彼はずっと私のキスのやり方を知りたがってたから
- だから、その・・・モーリス?

I know I said I loved U
I know I said I needed U
I know I said that I'd be here always
But what I didn't tell U is that...
ああ、俺はお前を愛してると言ったよ
ああ、俺はお前が必要だと言ったよ
ああ、俺はいつもここにいると言ったよ
でもお前に言ってなかったのは・・・

(chorus)
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion.
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion.
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ

- Morris, please don't do this, I love U
- モーリス、お願いよ、愛してるわ

People, tell me what I want 2 hear
This time the tables have turned
This time I'm the one that's building fires
Instead of getting burned.
- Come on, it's not what U think.
みんな、俺が聞きたいことを言ってくれ
今度は立場が逆転したのさ
今度は俺が火を焚き付ける番さ
火傷を負うのは俺じゃないぜ
- お願いよ、あなたの勘違いなの

(repeat chorus)
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion.
This year the latest fashion
Is 2 lie in the heat of passion.
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ
今年の最先端の流行は
灼けつく情熱の中で寝そべることさ

- Why can't U just believe? I'm telling the truth
- どうして信じてくれないの? 本当のことを言ってるのに

Lying in the heat of passion - Isn't that the game?
This week's love is next week's old flame
灼けつく情熱の中で寝そべること - そいつで決まりかな
今週の恋人は、来週にはもう昔のオンナさ

I know I said I loved U
- U don't know the meaning
I know I said I needed U
- Yeah, well I know what U need
What a body, what a face!
- Oh, is that what time it is?
U're just my style, U're just my taste
U say U want a love that's true
But I say, "Don't be a fool."
ああ、俺はお前を愛してると言ったよ
- あなたは分かってないわ
ああ、俺はお前が必要だと言ったよ
- そうよ、私はあなたが必要なものを知ってるわ
なんてカラダになんておカオだ!
- え、今ってそういう時間?
君は俺にぴったりだね、バッチリ俺の好みだよ
君は本当の愛が欲しいんだね
なら言ってあげるよ
「バカを言っちゃあいけないよ」

(repeat chorus)

- I don't believe this, what U did!
- Double-faced, conceited, inconsiderate, son of a...
Don't be a fool!
- 何て人なの、信じられない
- この二枚舌の、高慢ちきの、無神経なスケコマ・・・
バカを言っちゃあいけない

I will always remember the love U made 2 me
俺はいつまでも、お前が俺に注いだ愛を覚えてるぜ

(repeat chorus)