「Power Fantastic」は、1993年のベストアルバム「The Hits / The B-Sides」の「The B-Sides」の最終曲に収録されています。貴重な曲が並ぶ「The B-Sides」の中でも、この曲はこのリリースの目玉とも言える曲です。元々は前回の「In A Large Room With No Light」と同じく、未リリースプロジェクト「Dream Factory」の1986年6月3日の構成に含まれていた曲です。

この曲はリサ・コールマンが作曲した「Carousel」なる曲がベースになっているそうです。ウェンディとリサは、これを自分達のソロプロジェクトで使うことを考えていましたが、この曲を気に入ったプリンスはウェンディとリサを説得し、アレンジを変更し歌詞を書き変えて新たな曲にしました。そうして出来上がったのが「Power Fantastic」です。

このように、曲の成り立ちとしてはウェンディとリサからアイデアをもらった形になりますが、個人的には、「Power Fantastic」はプリンスの最高傑作のひとつに数えられる曲だと思います。プリンスの凄さは、どのように言葉を尽くしてもその凄さをごく一部しか説明できないところにありますが、プリンスの何が凄いのか分からないという人でも、この曲をヘッドホンで聴けばその一片を否応なしに体験できるはず、と私は思います。

ちなみに私は、ジムでウエイトトレーニングをするとき、エネルギー補給のカーボドリンクとしてファンタを飲むことがあります。
・・・いや、やっぱり何でもありません。


ファン以外にはあまり認知されていないかもしれないプリンスの凄さのひとつに、その異常なボーカル能力があります。これを単に「歌が上手い」と言ってしまうと、そういう歌手は世の中に大勢いるので適切な表現ではありません。ここではその表現は避けて「異常」という言葉を使うことにします。

現在の商業音楽では、一般的にボーカルは色々と修正が施され、世に出る段階では綺麗な加工品になっているものです。そのため、昨今では歌手の能力がどれほど優れているのか、あるいは逆に能力がどれほど欠けているのかが分かりづらくなっています。ちなみにプリンスのボーカルは、そういった修正が加えられることはなく、歌い直すこともなく、一発録りされたテイクがそのまま完成品になるのが基本です。実際、1990年に東京でのレコーディングに立ち合ったエンジニアの方々も、プリンスは歌詞カードも譜面もないまま作業を進め、1曲につき1度しかメインボーカルを歌わず、そのときの録音がそのままアルバムに使われていることを証言しています。

そして「Power Fantastic」のプリンスのボーカルです。これをもって単に「プリンスは歌が上手い」と評するのは単純にすぎるように思います。「Power Fantastic」のプリンスのボーカル表現は、上手いとかどうとかという物差しで価値を測れるレベルを完全に越えています。このボーカルも一発勝負で録られたもので、まさに異常というほかありません。そしてこの曲は、ボーカルのみならず曲自体がバンドの一発録りであり、初回のワンテイクがそのまま完成版になっています。Alex Hahn と Laura Tiebert 著「The Rise Of Prince: 1958 - 1988」を参照すると、フルートを演奏したエリック・リーズはこの録音を回想して、「これは我々が成した最高のもののひとつだ (That's one of the greatest things we ever did)」と鳥肌が立ったと発言しています。また、プリンスはスタジオ録音ではコントロールルームで一人で歌うのが常でしたが、このときはヘッドホンが足りなかったとかという理由で、エンジニアのスーザン・ロジャースも一緒に部屋に入ることになり、スーザンは自分に背を向けて部屋の隅で歌うプリンスの声を間近で聴くという特別な体験をしました。彼女にとってもやはり最も印象深い瞬間のひとつだったそうです。

この曲の神秘的なアレンジと歌詞、そして人外の化生が乗り移ったかのようなプリンスのボーカルパフォーマンスは、これ以上の組み合わせはないと言えるほど神がかったものだと思います。


Late at night when the world is sleepin'
U are frightened cuz the power's creepin'
In your room with somethin' U're afraid of
Life or doom is what this feeling's made of
夜は深く、世界が寝静まる頃
這い寄るその力に君は恐れおののく
君を畏怖させる何かを伴い部屋をうごめく
生さもなくば破滅、そこからこの情感は織り出される

Power fantastic is in your life at last
U're a little apprehensive
Cuz what it is is what U want and need, ooh
パワー・ファンタスティック
君の人生は遂にそれを迎え入れる
君は幾莫かの不安に駆られる
なぜならばそれこそが君が求め
そして必要とするものだから

Minor G is the chord of pleasure
It will be played 11 measures
U will see fire but U're cool as ice
And U lie, huh, if U say this isn't nice
Gマイナーは悦びのコード
それは11小節で奏でられる
君は炎を見る、だが君は氷のように冷たい
これを素晴らしくないと言うのなら
それは嘘をつくことになる

Power fantastic is in your life at last
U're a little apprehensive
What it is is what U want and need
パワー・ファンタスティック
君の人生は遂にそれを迎え入れる
君は幾莫かの不安に駆られる
なぜならばそれこそが君が求め
そして必要とするものだから

Power, power
Ooh...

Power fantastic is in your life at last
U're a wee bit apprehensive
Cuz what it is is what U want and need, ooh
Power, power
Power fantastic
Ooh
パワー・ファンタスティック
君の人生は遂にそれを迎え入れる
君は幾莫かの不安に駆られる
なぜならばそれこそが君が求め
そして必要とするものだから
パワー、パワー
パワー・ファンタスティック