It's been 7 hours and 13 days / Since you took your love away
7時間と13日が過ぎた / あなたが私への愛を取り去ってから

これは「Nothing Compares 2 U」というプリンスが書いた曲の歌い出しです。世界の様々なラジオ曲で、4月21日の午前10時7分から7時間と13日後にこの曲が流れたそうです。

この曲の初出は1985年で、プリンスのサイドプロジェクトで作られた The Family というバンドの同名アルバムに収められています。しかし、このプロジェクトはまともにプロモーションされなかったため、殆ど世に知られないまますぐに消滅してしまいます。アルバムは大昔に廃盤になっていて、私は高校生の頃、廃盤直前にこのアルバムのことを知り、運良く買えたのを覚えています。

後の1990年に、この曲は Sinead O'Connor のカバーが世界的に大ヒットしたことで世に知られるようになりました (1990年の年間セールスで3位)。このカバーは大幅にアレンジが変更されているだけでなく、なぜか歌詞まで違っていて7時間と15日と歌われています。一般的にこのカバーは色々な理由を付けて大絶賛されていますが、私は個人的には The Family のオリジナルバージョンの方が議論の余地がないほど優れていると思っています。また、この曲が有名になってからはプリンス自身もコンサートで演奏しています。

少し余談を挟むと、アルバム「The Family」は、1986年のプリンスのアルバム「Parade」の試作品のような雰囲気があり、ファンの間では隠れた名盤として愛されています。それどころか、このアルバムは出来上がりが未成熟なだけで、個々の曲の潜在的な質は「Parade」を上回っているのではないかという印象すら私は持っています。

バンドとしての The Family は、まともにプロモーションをしてくれないことに不満を持ったボーカルの St. Paul が、ソロのキャリアを目指してプリンスから離れたことですぐに消滅してしまいます。ちなみに、プリンスはこの時期に「Dream Factory」という曲を書いています (princevault のリンク)。かなり後で知ったことなのですが、この曲でプリンスは、自分から離れる選択をした Paul に対する当て付けをかなり辛辣に歌詞にしています。簡単に要約すると「夢工場で自分を見失い自暴自棄で助けを乞う、プリンスではないある男の話」の歌で、歌詞の意味を知ったときは思わず苦笑いしました。ただ、「Dream Factory」は、錯乱したような曲調が楽しい、個人的にはすごく好きな曲です。

話を戻します。「Nothing Compares 2 U」は様々なバージョンが存在するので、どれが一番好きかというのはよく議論の種になります。私が最も好きな「Nothing Compares 2 U」はというと、Clare Fischer オーケストラのストリングスと Eric Leeds のサックスが入った The Family のオリジナルバージョンです。最初聴いたときはアルバムの中でこの曲だけドラムがないので少し違和感があり、ドラムを入れたらどうなるのだろうと思ったのですが、ブートレグでドラムなどが追加されたバージョンを聴いたらドラムは入れないのが正解なのだと分かりました。それと、少しオーバーにやり過ぎているところも気になるのですが、それは脳内で改修して受け入れていました。

長い空白期間を経て、現在このバンドは fDeluxe という名前で再結成しています。変な名前なのは元の名前が使えないためです。

そして、7時間と13日後の特別な時間のために、このバンドがオリジナルのアレンジをベースに再びこの曲を演奏してくれました (Facebook の fDeluxe の投稿)。私にとって、この曲の最も美しいバージョンが更新されました。