「Leaving For New York」は、プリンス単独の録音としては最初期にあたる1976年初旬から中旬頃の時期に作られた未発表曲で、ジャズ風なピアノに乗せて、ニューヨークでの成功への希望を歌った素敵な一曲です。プリンスは最初この曲をホームレコーディングで作成しますが、1976年の夏にはクリス・ムーン (Chris Moon) の Moon Sound でもう一度ベーシック録音を行っています。クリス・ムーンはミネアポリスのプロデューサーで、当時プリンスにスタジオを使用させてあげていた人物です。
プリンスは高校卒業となる1976年の秋、異母姉のシャロン・ネルソン (Sharon Nelson) の住むニューヨークへ赴き、レコード会社への訪問を試みます。しかしプリンス単独の力ではどうすることもできず、クリス・ムーンに電話し、レコード会社とのミーティングをセットアップしてくれるよう頼みます。それでもなかなか上手く行かず、苦慮したクリスは自分はスティーヴィー・ワンダーの代理人だと偽って漸く電話対応まで漕ぎ着けます。そして「いや、実は私はスティーヴィー・ワンダーの代理人ではないけれど、私が紹介するプリンスという若者は、ニュー・スティーヴィー・ワンダーで、18歳にしてあらゆる楽器に精通し、しかも目が見えるんだ」と説明を切り替えて約束を取りつけたのだそうです。プリンスにとってこれが最初のレコード会社との契約のための試みとなりましたが、このタイミングでは良い結果は得られませんでした。オーウェン・ハスニー (Owen Husney) をマネージャーとして、プリンスがワーナー・ブラザーズとの大型契約を得たのは翌1977年のことです。
※ 上記のエピソードは prince.org のスレッド (コレやコレ) を参照しました。
「Leaving For New York」の歌詞に目を通すと、当時そんな状況にあったプリンスが、成功への希望を胸に、仮想の恋人 (?) をミネアポリスに置いてニューヨークへ旅立つという内容になっています。また、こんな初期の歌詞で「紫」という言葉が出てくるのが興味深いです。
それにしても、若干17〜18歳の高校生にしてこれほど魅力的な曲がポンと作れるというのはどんな気分なのでしょう。この曲は未だリリースされていませんが、発表の時期を逸した曲はどんなに優れていてもお蔵入りにしてしまうというプリンスの特徴は、何とキャリアを踏み出す前からのものだったようです。こんなに劣化した音質でも素敵なこの曲、いつかより良い音質でオフィシャルで聴くことができる日が来るといいなと思います。
この曲では、面白いことにプリンスは最後にスキャットで歌う展開を聴かせます。私の中では「スキャット = 由紀さおり」というイメージなのですが、プリンスがこんな正統なスキャットを披露している曲って他にあるでしょうか? ちょっと珍しいです。
由紀さおり - 夜明けのスキャット
由紀さおりと安田祥子 - トルコ行進曲
Sitting there on the purple lawn
U've been there since dawn
Wonderin' why I've gone
And 4 just 2 long
夜明けからずっと
君は紫に染まる芝生に座ったまま
なぜ僕が去ってしまったのか考えている
それもあまりに長い別れ
U're sorry U gave into me
Giving up your virginity
U're so afraid that U will be
So alone away from me
僕に折れて純潔を捧げたことを
君は後悔している
僕が君の元を離れれば
独り寂しい身になってしまうと
君は畏れている
Though I said I'd never leave U
This is something that I must do
But I never will forget U
Unless U forget 2 come into my dream
Ooh
決して君の元を離れないと言ったけれど
僕にはやらなければならないことがある
だけど僕は決して君を忘れないよ
ただし君が僕の夢の中に会いに来るのを忘れない限りはね
Leaving 4 New York in the morning
But I'm leaving behind a love extraordinaire
But I'm taking with me memories of when we made love
And all the other lovin' feelin' that we share
朝になれば僕はニューヨークへ発つ
とびきりの恋人を残したまま
だけど僕らが愛し合った思い出は一緒に持って行くよ
残りの互いに愛し合う気持ち全てと共に
U'll overcome that misery
Passed up by life's complexity
Picturing your love around me
Only adds 2 your agony
その惨めな気持ちも君は乗り越えるよ
人生の雑然の中に消えるのさ
僕の周りに君の愛を描くのは
ただ君の苦悩に追い打ちをかけるだけ
U're undisturbed by the rain
Your pain must be 2 strong
And even though U wait in vain
U wait 4 me no matter how... how long
君は雨の中でも平然としている
君の痛みが強すぎるためさ
たとえ報われないと分かっていても
君はずっと、ずっと僕を待ち続ける
Though I said I'd never leave U
This is something that I must do
But I never will forget U
Unless U forget 2 come into my dream
Ooh
決して君の元を離れないと言ったけれど
僕にはやらなければならないことがある
だけど僕は決して君を忘れないよ
ただし君が僕の夢の中に会いに来るのを忘れない限りはね
I'm leaving 4 New York in the morning
But I'm leaving behind a love extraordinaire
But I'm taking with me memories of when we made love
And all the other lovin' feelin' we share
朝になれば僕はニューヨークへ発つ
とびきりの恋人を残したまま
だけど僕らが愛し合った思い出は一緒に持って行くよ
残りの互いに愛し合う気持ち全てと共に
I'm leaving 4 New York in the morning
But I'm leaving behind a love extraordinaire
But I'm taking with me memories of when we made love
And all the other lovin' feelin' that we share
Oh
朝になれば僕はニューヨークへ発つ
とびきりの恋人を残したまま
だけど僕らが愛し合った思い出は一緒に持って行くよ
残りの互いに愛し合う気持ち全てと共に
{scatting}
{スキャット}
コメント
コメント一覧 (6)
由紀さおり姉妹のトルコ行進曲は時々聴きたくなっては検索して聴いちゃうのですごく嬉しかったです。
それにしてもこの曲を聴くと、プリンスは高校生の頃から、デビューアルバムで披露したよりもずっと幅広い才能を開花させていたんだなあと分かります。Originals が出てから色々な感情が渦巻いて、ちょっと初期の曲を取り上げてみました。
そうですね、プリンスはキャリアの最初から常に自分のスタイルで作品を作ることにこだわりましたよね。これも凄いことだと思います。
> 大都会NYでプリンスが歌ったのは田舎歌手的だなぁと本人が思ったかも知れませんね(^^)
(笑) とても素敵な曲ですけど、デビューアルバム制作時にはもう過去の曲になっていたんでしょうね。
別れの悲しみと、未来へのワクワク感が混じっていて良いな。
それに、プリンスが亡くなってしまった寂しさを、癒してくれる気がします。
そうですね。本当にそう思います。寂しい気持ちよりも何よりも、素晴らしいなあ…という気持ちに包まれます。