「If The Kid Can't Make You Come」は The Time の 1984年のアルバム「Ice Cream Castle」に収録されている曲です。スムーズな肌触りで心地良く、また、面白い曲ではあるのですが、我が家では教育上の理由でスピーカーでの再生禁止、という憂き目にあっている曲のひとつです。
The Time のフロントマンであるモーリス・デイは、アルバム「Ice Cream Castle」の発表を待たずして、ソロのキャリアを模索し、プリンスの元を去りました。プリンスとモーリスの関係にもヒビが入った状況だったのでしょうが、Duane Tudahl の本を読むと、二人の不和に関する話はどうも誇張されすぎている、との記述があります (参照ページ: FRIDAY, JANUARY 13, 1984 - Ice Cream Castles)。特に、スタジオでのレコーディング作業は良いムードの中で行われたようです。普段スタジオでは寡黙なプリンスも、モーリスと一緒にレコーディングをするときはオープンになって色々な話をしたのだそうです。ジェシー・ジョンソンもこれに同調したコメントをしており、モーリスとプリンスと一緒のときは、二人がふざけるのでとにかくよく笑ったと回想しています。
さて、何をどこから書いたらよいものか悩みますが、今回取り上げる「If The Kid Can't Make You Come」は色々とおかしな曲です。
まず、曲を聴かずとも明らかにおかしな点は、モーリスが自分をキッドと呼んでいることです。モーリスは「Chili Sauce」でも自分をキッドと呼んでいますが、映画「Purple Rain」を知る人にとって、キッドとは、モーリスのライバルであるプリンスのことです。「Chili Sauce」や「If The Kid Can't Make You Come」がレコーディングされた1983年4月の時点では、アルバム「Purple Rain」の曲はまだ何も出来ておらず、映画の仮タイトルは「Dreams」で、撮影可能な脚本も作られていませんでした。そのため、モーリスは何も知らないまま、一般的な呼称としてキッドという言葉を受け入れたのだと思いますが、だとしたらプリンスは悪戯がすぎるというか、本当に人が悪いです (笑)。
また、実際に曲を聴いてみて明らかにおかしいと分かる点は、曲のテンポです。この曲は最初はゆったりとしたテンポでとても良いムードで始まります。しかし、段々とテンポが上がっていき、最後はせわしなくアップテンポな曲になってしまいます (笑)。この曲でドラムを叩いているのはジェシー・ジョンソンです。最初はモーリスがドラムを叩いたのだそうですが、テンポがどんどん速くなってしまい、それじゃあと次にプリンスがドラムを叩いてみたら、やはりテンポがどんどん速くなってしまい。結局、最終的にジェシーが飲めないワインを飲んで頭グルグルの酷い気分の中でドラムを叩いた、というエピソードをジェシーが明かしています (PrinceVault のリンク)。
このどんどんテンポが速くなる意味不明な展開は、おそらく曲を犠牲にしてコントを優先させた結果で、モーリスもプリンスも当然ふざけてわざとそんなことをしたのでしょうが、あまりの悪ノリに、クラス委員に見つかったら「ちょっと男子! 真面目にやってよ!」と怒られそうなレコーディングだったのではないか思います。それにしてもプリンスがモーリスと組んでできた作品には、どれも独特な良さがあります。
最後に、個人的に言及しておきたいのですが、歌詞に目をつぶって音楽だけに注目すると、この曲の序盤はとてもスムーズで心地良いです。具体的にここから想起される曲名を挙げると、この柔らかく琴線に触れる感じはまるで私の好きな Donald Fagen の「One The Dunes」のようです。そして歌詞を見比べて、その落差に何とも言えずトホホな気持ちになります (笑)。
U like my crib, baby?
Well, come a little closer. Don't be shy
俺の家、気に入ったかい、ベイビー?
もう少しこっちに来なよ、恥ずかしがらないで
Darling, I want U so bad
I can almost taste the smell of your skin
And honey, I'd be so sad if U didn't break down and let me in
U better let me in, baby
Don't U know...
ダーリン、君がたまらなく欲しい
君の肌の匂いで舌鼓を打ちそうなほどさ
ハニー、君が心を許して俺を受け入れてくれなかったら
俺はとっても悲しくなるよ
俺を受け入れてくれよ、ベイビー
だってそうだろう
If the Kid can't make U come
Nobody can
Am I gettin' through, baby?
もしこのキッドが君をいかせられなかったら
誰にだって無理さ
俺の言ってること分かるかい、ベイビー?
Sweetheart, I can be gentle as a lamb
If that's what gets U off
I wanna get U off, baby
And lover, straddle my brass
And we'll dance in the land of the hard and soft
I don't care, baby
Whatever gets U off?
スウィートハート、俺は羊みたいに優しくできるんだ
それで君が感じてくれるならね
君に感じてほしいんだ、ベイビー
あのさ、俺のブラスに跨がってよ
一緒に硬いのと柔いのでできた地で踊るんだ
俺なら構わないさ、ベイビー
君が感じてくれるのなら何だってね
If the kid can't make U come
Nobody can
もしこのキッドが君をいかせられなかったら
誰にだって無理さ
Need I say more, baby?
Do U wanna straddle my brass?
もっと言わなきゃダメかい、ベイビー?
俺のブラスに跨がりたいかい?
If the kid can't make U come, nobody...
もしこのキッドが君をいかせられなかったら
誰にだって・・・
That's a pretty blouse
Thank U
Take it off
Is that better?
A little bit, I'd rather see it live in concert though
Well, I'll tell U what, cutie
I'll let U take that off
Oh, yes!
とっても素敵なブラウスだね
- ありがとう
脱いでよ
- これでどう?
悪くはないね、でももっとライブコンサートで見せてほしいな
- それならこういうのはどうかしら
- あなたに脱がせてもらうの
そう、そうこなくっちゃ!
This little hook went 2 Holland
This little hook went 2 France
This little hook went 2 London
And this little hook went 2...
Uhmm
Oh Lord!
Honey, don't U ever try and breastfeed no baby
Why not?
Never mind
このホックはオランダに行っちゃった
このホックはフランスに行っちゃった
このホックはロンドンに行っちゃった
そしてこのホックは・・・
- ウフン・・・
おや、まあ!
ハニー、このおっぱいは絶対に赤ん坊にはあげたらいけないよ
- どうしてダメなの?
いや何でもないさ
What time is it?
Tea time
I know that's right
Uhmm
今は何の時間かい?
- お茶の時間かしら
そういうことさ
- ウフン・・・
What's my name?
Morris
No, come on baby
What's my real name?
Uuh, uh, uhh
Talk 2 me, talk 2 me
M ... Mo ... Mor ... Morris!
Yes!
Oh, baby, U're just 2 sexy
俺の名前は何だい?
- モーリス
違うよ、違うったらベイビー
俺の本っ当の名前は何だって訊いてるのさ
- あ、あ、あ・・・
そうだ、言ってくれよ
- ム・・・モ・・・モ・・・モーリス!
そうさ!
ああベイビー、君はセクシーすぎるよ
Morris?
Yeah, baby
What's my name?
It's "Baby", ain't it?
Oh, Morris, what's my ...
Ah ga ga ga ga!
Oh, Morris!
2 sexy!
- モーリス?
何だい、ベイビー
- 私の名前はなあに?
君の名前は「ベイビー」じゃないの?
- ああモーリス、私の・・・
ああ、ガ、ガ、ガ、ガ!
- ああ、モーリス!
セクシーすぎるよ!
I bet U never thought I'd be this good, did U?
俺がこんなにすごいなんて思わなかっただろう?
Let me hear the pledge of allegiance, baby
What do U mean?
U know, like U used 2 do in school
U got 2 be kidding
I guess U're not
Come on, baby
Morris is listening
忠誠の誓いを聞かせておくれよ、ベイビー
- どういうこと?
ほら、昔学校でやったようにさ
- ちょっと冗談でしょう?
- そういうわけではなさそうね
ほら、ベイビー
モーリスがここで聞いててあげるから
OK...
I pledge allegiance...
2 the flag... of the United States... of America...
And 2 the republic... 4 which it stands
- いいわ・・・
- 私は忠誠を誓います・・・
- アメリカ・・・合衆国・・・国旗と・・・
- それが象徴する・・・共和・・・国に・・・
Oh Lord!
U're just 2 sexy
Uuh
Ain't nobody bad like me?
ああすごい!
君は何てセクシーなんだ
- ウフン
俺ほどの男はいないだろ?
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