「Damn U」は1992年のアルバム「o(+> / Symbol」に収録されています。甘いメロディと歌詞、それにプリンスの円熟したボーカルパフォーマンスが魅せる極上の一曲です。この曲は100人が聴けば100人全員が良い曲だと答えるのではないのでしょうか。

ですが、ここは個人ブログなので私個人の感想を書きます。実を言うと、「Damn U」は、私が初めてプリンスでガッカリさせられた曲です。1991年の「Diamonds And Pearls」からプリンスを聴き始めたばかりの私にとって、音楽評論家が下すプリンス評の影響は避けられるものではありませんでした。そのため、当時の私は「プリンスの音楽は、たとえどんなに優れていようとも、誰も踏み込んだことのない革新性を持っていなければ評価はマイナス」という評価軸を持っていました。

そして、全体として濃いエネルギーに満ちてギラギラと尖った印象を受けるアルバム「o(+> / Symbol」にあって、円熟味で魅せる「Damn U」は場違いに感じられ、革新性がなく後ろ向きに作られた曲だとしか私には思えなかったのです。

また、このアルバムは発売当時、音楽雑誌などでは気持ち悪いほどの異常な大絶賛で紹介されました。前作の「Diamonds And Pearls」の異常な大酷評に心を痛めたばかりの私にとって、嬉しさもないことはありませんでしたが、この大絶賛はそれよりも気持ち悪くて不快なものでした (私は「Diamonds And Pearls」は1990年代から現在までの音楽史における最高傑作だと思っています)。「Damn U」も「あの凄いプリンスが帰って来た!」という調子で紹介されていたりして、「いやいや、この曲こそお前たちが散々酷評した後ろ向きの音楽だろ」と当時は一人で気分を害していました。

とにかく、これで前々回から密かに続いていた、私にとっての「プリンス・三大普通の曲」が出揃ったかたちになります。

ただし、この曲をアルバムから切り離して単体で聴くと、その素晴らしさに心の底から感動します。メロディもボーカルも歌詞も、何もかもが極上です。


この曲について、プリンスはとても興味深いコメントを書き残しています。プリンスは1993年のベストアルバムをリリースするにあたって、ライナーノーツを担当した Alan Leeds への参考として、様々な曲について自らプライベートなコメントを送りました。この曲自体はベストアルバムに含まれていないものの、その中で、"「Damn U」はプリンスが最も誇りに思っている曲のひとつである" とプリンス自身がコメントしているのです。

"DAMN U" - one of the songs PRN is most proud of; he adores it. Used to play it live even fore it was released. Through the years this has been the indication of his feelings about a new composition.

プリンス自身のライナーノーツの全体は、以下で紹介されています。ちなみに、ここではプリンスは自身を PRN (Prince Rogers Nelson) と称しています。

この情報を公開した Anil Dash という方は、「このコメントは、プリンスの自身の作品に対するフィルターの欠如を示す好例だ」と反応しています (リンク)。「Damn U」は確かに極上の一品ではありますが、例えば「Do Me, Baby」のようなプリンス・クラシックと比べれば、ファンが選ぶのはまず後者でしょう。いずれにせよ、1990年代以降、プリンスが80年代のファンが望む通りの音楽を作らなくなったことを象徴するようなコメントだと思います。



Damn U, U're so fine
Seems 2 happen 2 me each and every time we make love
I can't hold back
It's like having a hundred million little heart attacks
Damn U
Baby, U're so fine
ちきしょう、君は何て素敵なんだ
愛し合うたびにこうなってしまうんだ
抑えておくことができないのさ
まるで100万回の心臓発作が起きているみたい
ちきしょう
ベイビー、君は何て素敵なんだ

Damn this kooky love affair
All I ever wanna do is play in your hair
2 people crazy in love
Into one another like a hand in a glove
Damn this kooky love affair
ちきしょう、まるっきりいかれた艶事さ
僕はただ延々と君の髪と戯れていたい
すっかり夢中で愛し合う二人
まるで手袋に手が包まれたようにぴったりだ
ちきしょう、まるっきりいかれた艶事さ

Like animals just born 2 breed
Come 2 think about cha, baby, U're my only need
I'm on fire till U come and put me out
All I'm trying 2 say is that my psychedelic shouts
When U damn me, damn U
When I'm in your arms it's all that I can do
When we're makin' love, I can't hold back
It's like having a hundred million little heart attacks
Damn U
Baby, U're so fine
まるで交配するためだけに生まれた動物のよう
考えてもみれば、僕が必要とするのは君だけなんだもの
僕は燃え盛っているよ、君が火を消しに来てくれるまで
僕が言いたいのは、君が愛してくれると
僕の幻覚が叫び声を上げるってことさ
ちきしょう
君の腕に抱かれていると、僕は他に何もできないんだ
まるで100万回の心臓発作が起きているみたい
ちきしょう
ベイビー、君は何て素敵なんだ

Damn U
Baby, U're so fine
ちきしょう
ベイビー、君は何て素敵なんだ