For most of all of my adult life, I have labored under one construct. I compose music, write lyrics, and produce songs for myself and others. My creativity is my life; it is what guides my everyday, my sleepless nights. My songs are my children. I feel them. I watch them grow and I nurture them to maturity.
僕は成人後の大半を一つの契約の下で働いてきた。僕は音楽を作り、歌詞を書き、自分や他人のために曲をプロデュースしてきた。僕のクリエイティビティは僕の人生だ。それは僕の過ごす毎日を導き、眠れない夜を導いてきたものだ。僕の曲は僕の子供たちだ。僕はそれらを感じる。僕はそれらが育っていくのを見守り、成熟するまではぐくむ。

- プリンス, TheDawn.com, 1996年2月

12月23日に発売された「プリンス・ファミリー大全」(CROSSBEAT、シンコー・ミュージック・ムック) を買いました。主な内容は、「1999 Super Deluxe」、2016年以降のリリースやリイシュー、それに他人への提供曲315曲のレビューや紹介等です。

このムックの監修者・スーパーバイザーは npg-net-com の KID さんです。「監修」という言葉を三省堂国語辞典で引くと「自分が責任を持つことにして、ほかの人に編集や著述をさせること」とあります。このため、KID さんは一歩引いたアドバイザー的な立場で関わっているだけなのだろうなと思っていたわけですが、実際に本を手に取ってみて、まあびっくりしました。どの項目を開いても「文●KID」となっているではありませんか (笑)。いや、笑うところではないんですけど。

とはいえ、「監修」の先入観からこの本を手に取った私は、すぐには「文●KID」に気付きませんでした。本屋でこの本をパラパラとめくって「何かがおかしい」と感じ、筆者の名前を確認してやっと気付いたのです。何がおかしいと感じたかというと、それは、作品の説明が的確なことです。プリンスを知らない人にはこれがどれほど違和感を引き起こすものなのか理解が難しいかもしれませんが、実際のところ、2016年に発行された様々なムックの出来が壊滅的だったように、これができる評論家は日本にはほぼ存在しないのです。

プリンスの凄さの一つは、プリンスと同じ水準で作品を作り続けた人は歴史上誰も存在しないために、プリンスの残した作品をただ淡々と紹介していくだけで、プリンスの凄さの説明になってしまうことです。ただし、これには説明が的確であること、という条件が付きます。音楽ライターがよくやる安易な美辞麗句を使った誤魔化しは通用しないのです。

冒頭にプリンスの言葉を引用した通り、プリンスの作品はプリンスの子供です。「プリンス・ファミリー大全」は、言うなればプリンスの家系図から養子に出した子供たちを紹介したような本です。

ああ、そういえばこの子はあそこに行ったんだっけな。元気でやってるかな。ちょっと聴いてみようかな

この本はそんな思いで読むことができます。この本の内容に関係して Twitter で目にした曲を二つ挙げておきます。

With This Tear - Celine Dion

「With This Tear」はセリーヌ・ディオンに提供され、1992年にリリースされた曲です。

これは私にとってはとても思い入れのある曲なのですが、個人的にずっと気になっていた曲でもありました。この曲では、フィクションながら、愛する人を失う悲劇的な内容が歌われます。そして2016年1月にセリーヌ・ディオン自身に同じことが起こりました。その後セリーヌ・ディオンはコンサートで「Kiss」や「Purple Rain」をトリビュートとして歌っていますが、プリンスからもらった唯一の曲である「With This Tear」は、その内容から記憶から消したいと思っても不思議ではないくらい振り返るのが辛い曲なのではないかという心配が私にはありました。

ところがセリーヌ・ディオンは、この曲をプリンスからもらった経緯に関する当時のインタビュー動画を、まだ夫を失って日が浅い2016年4月28日に自身の YouTube チャンネルにアップロードしていたことを、上の npg-net.com サイトから知りました。動画の2分9秒頃に、彼女はフランス後で次のように語っています。

It's a really delicate song and in my opinion it will be the most sensitive song of the album.
とても繊細な歌で、個人的にはアルバムで最も繊細な感情が表現された歌になると思う。

この動画を知ることができ、ずっと胸に引っ掛かっていたものが消えてくれました。

Song About - Wendy & Lisa

「Song About」はウェンディ&リサの1987年の曲です。プリンスのインプットはなく、彼女たちにより作られた曲です。「プリンス・ファミリー大全」にはウェンディ&リサの1987年のインタビュー記事も掲載されており、そこでこの曲が言及されています。プリンスが Parade Tour の後、ザ・レボリューションを解散したこと、そしてプリンスのことが歌われた曲です。

It makes me want to cry
Thinking about you
Beautiful, you said
The way you shook your head
So strange that no one stayed
At the end of the parade
あなたのことを考えると
泣きたくなるの
美しい、そう言ったあなた
首を横に振ったあなたの仕草
とても奇妙に思えたわ
パレードの終わりには
誰も残らなかった

次の歌詞は私の Twitter のプロフィールで引用させてもらっています。

I gave colors to you
You'd never seen
You washed my heart
With many dreams
Dreams I'd never see
私はあなたに色をあげたわ
あなたが見たことのない色を
あなたはたくさんの夢で私の心を洗ってくれた
私には決して見られなかったであろう夢で