「Controversy」は1981年の同名アルバムのタイトルトラックで、この時期のプリンスを象徴する非常に強力な曲です。しばらく話が別方向に飛んでいましたが、一応流れとしては、先日の Vanity 6 の「3 x 2 = 6」と、そこで言及したザ・ローリング・ストーンズのオープニングアクト事件からこの曲を取り上げています。

「Controversy」とそれに続く「Sexuality」は、私がプリンスに惹きつけられる決定打となった曲です。私の選ぶ曲の中でこの2曲は同率で10位にしています。

私は1991年のアルバム「Diamonds And Pearls」からプリンスを熱心に聴くようになりました。続いて前年の「Graffiti Bridge」を聴き、これも私は気に入りました。そして「1999」「Purple Rain」「Sign O' The Times」などのプリンスの代表作とされる作品も聴いてみました。そうして私はプリンスにハマっていき・・・とはなりませんでした。

私の場合、プリンスの代表作の凄さをある程度理解できるようになるまでには結構な年月を要しました。中でも私がまず困惑したのが、作品の核となるタイトルトラックが、サビを突出させて聴かせるタイプの曲ではなかったことです。耳慣れた邦楽ヒットチャートの音楽とは全く異なる価値観で作られている音楽に、私はどうにも埋めることのできない距離を感じました。

このように、プリンスの代表作とされる作品に最初はピンと来なかった私でしたが、思いがけず決定的にプリンスに惹きつけられる瞬間が訪れました。それを引き起こしたのが「Controversy」と「Sexuality」の2曲です。この2曲は私がそれまでの人生で聴いたことのあるどの曲にも似ていませんでしたが、初めて出会ったその瞬間に私の魂は揺さぶられました。私がこの2曲を初めて耳にしたのはテレビで放送されたプリンスのドキュメンタリー番組を通してでした。その番組でこの2曲のミュージックビデオの断片が流れる瞬間があり、それを見た私は「一体何なんだこの曲は」と衝撃を受けました。


「Controversy」のアルバムバージョンは7分15秒あります。私はアルバムバージョンを聴いて、最初は「シンプルな曲なのにずいぶん長い尺を取るんだな」と思いました。今となっては、衝撃を受けていながらいかに私がこの曲を聴けていなかったことか、と思います。この曲は、ぱっと聴いた感じではシンプルな曲に思えるかもしれませんが、よく聴くと密度の濃さに改めて驚かされます。曲が展開していくにつれ、この曲が最初から持っている強烈な重さに加えて、まるでファンクの真髄を見せつけるかの如くどんどん緊張感が積み重なって、曲の密度はひたすら増していきます。

曲の展開の中では、メインとなるパートの他に、さらに二つの山場があります。一つは3分27秒からの主の祈りの呟きと、もう一つは5分29秒からの「People call me rude / I wish we were all nude」の輪唱です。輪唱というと、私が真っ先に思い浮かべるは「かえるの歌」の「ケケケケケケケケ / クヮクヮクヮ♪」や、「静かな湖畔」の「カコー カコー♪」になるのですが、このパートによって輪唱の新たな可能性を認識させられました。

また、この曲の歌詞は非常に強いメッセージを持っています。現在ではそのメッセージ性を素直に解釈することが可能ですが、当時のプリンスは、自身にイタリア人などの血が入っていると語ったり、性の嗜好に誤解をきたす内容の「Jack U Off」を歌ったり、トレンチコートに「RUDE BOY」のバッジを付けたりと、自ら論争を呼び起こす天の邪鬼な行動を取っていました。


プリンスの存在が世に広く受け入れられるようになったのは、翌1982年のアルバム「1999」や1984年の「Purple Rain」になりますが、「Controversy」という曲は、プリンスの作品の中でとても重要な位置を占める曲のひとつだと思います。

Alex Hahn と Laura Tiebert 著の「The Rise of Prince 1958-1988」を参照すると、プリンスの5枚目のアルバムである「1999」の成り立ちについて興味深いことが書いてあります。プリンスの5枚目のアルバムは、最初の完成段階では「1999」が存在していませんでした。PrinceVault.com を確認すると、「1999」のベーシック録音の時期は1982年6月または7月となっており、「1999」はアルバム収録曲の中で一番最後に録音された曲であることが分かります。

プリンスは5枚目となるべきアルバムの最初の完成版をマネージャーの Bob Cavallo と Steve Fargnoli に聴かせますが、ヒットになりそうな曲は入っているものの、「Controversy」のようなアルバムコンセプトの土台となる曲が存在しないということで、一旦難色を示されます。宿題を渡されたプリンスはマネージャー達に文句を言ったそうですが、ロサンゼルスからミネアポリスに帰ってレコーディングを続けます。そうして出来上がったのが、あの「1999」なのだそうです。もし「Controversy」がなかったら、プリンスの5枚目のアルバムは「1999」なしでリリースされていたのかもしれません。「1999」なしの「1999」って、アルバムタイトルが全く想像できません。

ミュージックビデオです。


I just can't believe all the things people say (Controversy)
Am I black or white? Am I straight or gay? (Controversy)
皆があれこれ言うことなんて
僕には信じられない
(論争)
僕は黒人なのか、それとも白人なのか?
僕はストレートなのか、それともゲイなのか?
(論争)

Do I believe in God? Do I believe in me? (Controversy)
僕は神を信じるのか? それとも僕を信じるのか?
(論争)

Controversy
Controversy
論争
論争

I can't understand human curiosity (Controversy)
Was it good 4 U? Was I what U wanted me 2 be? (Controversy)
人間の好奇心なんて
僕には理解できない
(論争)
それって君には良いものだった?
僕は君が望んだ通りの僕だった?
(論争)

Do U get high? Does your daddy cry? (Controversy)
君はハイになるの? 君の父さんは泣くかい?
(論争)

Controversy
Controversy
論争
論争

Do I believe in God? Do I believe in me?
Some people wanna die so they can be free
I said, life is just a game, we're all just the same
Do U wanna play?
僕は神を信じるのか? それとも僕を信じるのか?
中には死を望む人もいる、自由を求めるがために
人生はただのゲームさ、結局僕らは皆同じ
興じてみるかい?

Controversy
Controversy
論争
論争

{Lord's Prayer}
Our Father, who art in heaven, hallowed be Thy name
Thy kingdom come, Thy will be done on earth as it is in heaven
Give us this day our daily bread and forgive us our trespasses
As we forgive those who trespass against us
Lead us not into temptation but deliver us from evil
For Thine is the kingdom and the power and the glory forever and ever
{主の祈り}
天にまします我らの父よ
願わくはみ名をあがめさせたまえ
み国を来たらせたまえ
みこころの天になるごとく
地にもなさせたまえ
我らの日用の糧を今日も与えたまえ
我らに罪をおかす者を我らがゆるすごとく
我らの罪をもゆるしたまえ
我らをこころみにあわせず
悪より救いいだしたまえ
国と力と栄えとは
限りなくなんじのものなればなり

Love ya, love ya, baby

(Oh yeah, yeah)
(Everybody, oh yeah)
Listen...
People call me rude
I wish we were all nude
I wish there was no black and white
I wish there were no rules
人は僕を無礼だと言う
僕は皆がヌードになればと願う
僕は黒も白も無くなればと願う
僕はルールが無くなればと願う

People call me rude
I wish we were all nude
I wish there was no black and white
I wish there were no rules
人は僕を無礼だと言う
僕は皆がヌードになればと願う
僕は黒も白も無くなればと願う
僕はルールが無くなればと願う

{repeat 2 more times}
Yeah! (Controversy)
Oh yeah (Controversy)

Do I believe in God? Do I believe in me?
Let me tell U, some people wanna die so they can be free
I said life is just a game, we're all just the same
Don't U wanna play?
僕は神を信じるのか? それとも僕を信じるのか?
中には死を望む人もいる、自由を求めるがために
人生はただのゲームさ、結局僕らは皆同じ
興じてみないかい?

Controversy
Controversy
Controversy
Controversy
論争
論争
論争
論争