私は高校卒業まで主に岩手県の盛岡という場所で育ちました。 近年は暖冬傾向であまりそういうことはないのかもしませんが、子供の頃は、盛岡ではこの時期になってもたまに雪が降ることがあったように覚えています。小さな頃はただ珍しいだけだった4月に降る雪は、ある時から私にとって特別な感情と結び付くものになりました。


時は流れて大学時代のある日、プリンスが好きな私は西新宿に出掛け、あるブートレグ CD を買いました。ブートレグとは非正規に流出したミュージシャンの音源のことで、西新宿はそのような音源を扱う店が揃っていることで有名なエリアなのです。プリンスには公式にはリリースされていないものの優れた未発表曲が数多くあり、プリンスのブートレグを探すのは私の楽しみでした。

家に帰った私は、その買ったばかりの CD を再生しました。3枚組の CD だったので、長い時間かけて、ようやく最後から2番目の曲に差し掛かりました。最後の曲は既発表曲の別バージョンだったので、実質的にこれが最後かと思いつつ何気なく聴きました。

それは「(Excuse Me Is This) Goodbye」という曲でした。適当に歌詞の一部を取り出しただけっぽい名前なので、曲名不詳の未完成曲なのかなと思ってあまり期待せずに聴き始めた私は、それがとんでもない思い違いであることに気付きました。最初聴いて、それからしばらくはこの曲だけを何度も何度も繰り返し聴きました。

それ以来、この曲は私がプリンスで一番好きな曲になりました。プリンスで一番ということは、私にとってはこれが人生で一番好きな曲ということです。この曲は後年、「Goodbye」という曲名で正式にリリースされました。下の動画の最初から 4:33 くらいまでの曲です。ちなみに、次のイントロが長くてなかなか歌に入らない曲は、たまたま「Sometimes It Snows In April」です。


プリンスの代表的なアルバムは、一般的には1984年の「Purple Rain」、内容の質と量からいうと1987年の「Sign O' The Times」だと思いますが、私が特別に好きなのは1986年の「Parade」です。記事タイトルの「Sometimes It Snows In April」はアルバム「Parade」の最後の曲です。 それまで張り詰められていた緊張がこの曲でフッと消え、儚い余韻を残してこの40分程の短いアルバムは終わります。

動画は2010年のノルウェーでのライブのもので、アンコールを終えて去る前に、ピアニストを残してサラッと演奏したものだということです。本人は半分引いてオーディエンスに歌わせているのでファン向けの動画です。 YouTube では、著作権に反しているプリンスの動画は全て消されるというしきたりになっているのですが、しばらく残っていてほしいと思います。

Sometimes it snows in April
時には4月に雪が降ることもある

Sometimes I feel so bad
時には酷い気分になることもある

Sometimes I wish that life was never ending
時には命が永遠に終わらないものだったらと思う

But all good things, they say, never last
でも、良いことはずっとは続かないものだと人はいう

All good things, they say, never last
良いことはずっとは続かないものだと

And love, it isn't love until it's past
そして愛は、過ぎ去るまでは、愛ではないと