先日、Housequake の FB ページに興味深い投稿がありました。Partymind さんの掲示板にも投稿させていただいたのですが、1994年9月に書かれたプリンスの手紙です。この手紙は、ローリングストーン誌に掲載されたアルバム「Come」に対する批評を受けて書かれたもので、この批評の筆者であり、アルバムに星2/5という低評価を付けた Tom Moon という人に宛てられたものです。

とても美しい手紙だったので翻訳してみました。なるべく元の文章の美しさを損なわないように翻訳したつもりですが、最後の方など、上手く日本語にできなかったので安易に訳した部分もあります。ちなみに最初の言葉は、元の英語では "There is joy in repetition" です。また、1994年の手紙に、90年代以降は影を潜めるようになったカミールの名前が出てくるのも面白いです。

Tom,

人は悦びを求めるなら、繰り返しの中に悦びを見出します。一方で敵意と不和を見出すこともできるでしょう。全ては見る者の捉え方次第です。全ての音符 - それが声であっても楽器であっても、全ての音 - それが人間のものであっても人間のものでなくても、それは生み出す者の感情に従って生み出されます。その感情には、様々なものが寄与します。その日の天候や時間帯、その日それ自体。例えばダンスミュージックならば、週末のスタジオに居場所を見つけるといったように。

月にも、星たちにも、全てに役割があります。偶然というものは存在しません。涙がより信じられるのは、それを抑えられずに流す時です。そして、ちょうど生きるために呼吸をするのと同じように、音楽は必要に駆られて生み出されます。これは人生における事実です。内なる声が、生まれるべき歌が存在することを告げるのです。

全ての子供は美しく生まれます。それが他人からどのように認知されるかは、別の問題であるに過ぎません。まだ生まれる前の子供と同じように、歌とは決して最初から完全な状態で存在するものではありません。それは口述を取るようなものです。喜びは、赤ん坊がどのような性格になるか分からないことから生まれます。喜びは、慈しみ育む過程から生まれます。我々が何者であろうとも、我々が何を作ろうとも。

カミールが音楽を作る日は、子供は良心や抑制を持たぬまま生まれます。しかし重要なのは、カミールの「声」を認めることです。近頃ではカミールは姿を現すことはなくなりました。

肯定的な心と否定的な心は、常に近接した状態にあります。我々が蒔く種は、大きく育つ花です。物事が、起こり変わろうとしています。それはこの世代だけの話ではありません。その後は、永きに渡る平和が訪れると信じます。全ての人とはいえないまでも沢山の人が、それを享受することを願います。

Love & peace
Prince

原文は以下です。

There is joy in repetition if one looks 4 joy. There can also be tension & discord. It's all up 2 the beholder. Every note—be it voice or instrument, every sound—be it human or inhuman is produced according 2 the way the producer feels. Many things contribute 2 that feeling. The climate, the time of day, the day itself. Dance music seems 2 find it's way into the studio during the weekend. The moon, the stars, everything plays a part. And there are no accidents. Tears are more believable when u can't hold them back. Here—music is made out of necessity. It's a fact a life. Just like breathing. The voice inside tells u when there is a song 2 be born. All children are born beautiful. How they are perceived by others may be another matter indeed. Much like an unborn child—A song is never conceived whole. That would be like taking dictation. Pleasure comes from not knowing what your baby's character will be like. Pleasure comes from the nurturing process. Whatever we are… whatever we make.

On the days when Camille records, children are born without conscience or inhibition. It is important however 2 allow Camille his 'voice.' He hasn't been around lately.

Positivity & negativity are always very close. The seeds we sow are the flowers that grow. Things are coming 2 a head. And not just 4 this generation. Believe that after it does there will be peace 4 a long time. Maybe not 4 everyone but 4 most. Hopefully more than not.

1991年の雑誌記事から - I make music because if I don't...

これに関連して、上記の手紙と少し似たようなプリンスの言葉が、DETAILS という雑誌の1991年11月号の記事にみつかります。こちらも印象深いので、一部引用します。

"I make music because if I don't, I'd die. I record because it's in my blood. I hear sounds all the time. It's almost a curse: to know you can always make something new."
僕が音楽を作るのは、そうしないと僕は死ぬからなんだ。僕の体に流れる血は、僕にレコーディングをさせるようにできている。いつだって僕には様々なサウンドが聞こえてくる。常に新しいものを生み出せると知っているというのは、殆ど呪いのようなものだね

Have you always been like that? I ask him.
昔からずっとそうだったのですか? 私は尋ねた。

"No. When I was younger I had...other interests...but you know how the very first song I learned to play was 'Batman'...?"
「いや、若い頃は他のことにも興味があったよ。でも君も知ってるように、僕が最初に弾き方を覚えた曲はバットマンで・・・」

He leaves the sentence open. Yes, I say, and I fill in the inference. You don't think that's an accident, do you?
プリンスはそこで含みを残して言葉を止めた。成り行き上、私はそれを埋めることになった。
「それは偶然だと思ったりしませんか?」

"There are no accidents," he says. "And if there are, it's up to us to look at them as something else. And..." At this point he pauses, and even though we're talking over the phone I can see him do one of those long fawn-eyed stares that make you believe every curious syllable he speaks. "And that bravery is what creates new flowers."
偶然なんてものは存在しないよ。もし存在するとしたら、それは見る者の捉え方によるものなんだ。そして・・・
そこでプリンスは間を置いた。私たちは電話で会話をしていたにもかかわらず、その時の私には、彼の口から発せられる不思議な言葉を節々まで信じ込ませてしまうような、あの小鹿のような眼差しが見えた。
そして、その勇気が新しい花を生み出すんだ

Whenever I tell anyone about it, they say it sounds weird. It sounds like he should grow up. But it sounds like the real Prince. It makes perfect sense to me.
このことを誰かに話す度に、おかしな話だと言われる。プリンスは大人になりきれていないみたいだと。しかし私には、これこそが本当のプリンスだと思える。私には、どこにもおかしな点はなく、完璧に筋の通った話だと感じられるのだ。

この雑誌記事をブログで取り上げたのには、単に発言が印象深いという以外に、もうひとつ理由があります。実は私の中では、この記事は、プリンスが書いたとある素敵な曲と密接に結び付いているのです。ただ、これは少々意外な曲かもしれません。続いてその曲を取り上げるつもりです。