常々思うのですが、ダイエットやフィットネスについて正しい知識を得るためには、英語ができるようにならないとダメだなあと思います。英語に触れずに日本語だけで生活していると、日本語だけで十分で英語なんて必要ないと思ってしまいがちなのですが、とりわけダイエットやフィットネスに関する限り、得られる情報の「質」には英語と日本語では絶望的なほどの格差があります。

英語と日本語で、情報の「量」に差があるだろうというのは、英語が全くできない人であってもフィットネス人口やマーケットの規模から考えて容易に想像がつくと思います。それでも単に量に差があるだけならば大した問題ではありません。むしろゴミをかき分ける作業が減るのならば、情報の総量は絞られていた方が嬉しいです。しかし、残念ながら実態はそうではありません。フィットネスにおいては、英語と日本語では情報の「量」だけでなく、情報の「質」の方にも著しい格差があります。この質の差がどれ程のものであるかというのは、もう英語が全くできない人にはどんなに説明しても想像できないと思います。しかし、誇張でも何でもなく、実際にそれほど大きな情報格差があるのです。

この状況を何とかしたいと考えている人はいます。例えばこのブログでリンクさせてもらっている AthleteBody.jp は今まで日本になかったタイプのサイトだと思います。

いきなり話がどこに向かっているのか分からなくなりました。去年の年末からパワーリフティング種目やバーベル種目についていくつかブログ記事を書きましたが、私のような者がそんなことを書くのは小っ恥ずかしいという思いがあったので、トピックを変えて、フィットネスからも離れて、今回は純粋に英語の勉強の話です。

話が逸れたついでに、一応私と英語について少し書いておきます。私は長年に渡って英語を勉強中です。実際にはあまり努力は足りていませんが、頑張って努力したいと思う気持ちなら常にあります。海外に長期で滞在したことはありません。海外に初めて行ったのは大学を卒業して社会人2、3年目くらいの頃です。飛行機に乗ったのもそれが初めてです。行先はアメリカだったのですが、アメリカではみんな英語をしゃべっているし、車は右側を走っているし、ウインカーを出そうと思ったらワイパーが動き出すし、それはもうたまげる体験をしました。

英語は難しいです。私にとって英語のどこが難しいかと問われれば、特に次の2点を挙げたいです。

  • 1位: 覚えるべき語彙や表現が多すぎる
    英語を難しいと感じる理由は挙げようと思えばいっぱい挙げられるのですが、私にとってはどれもこれも集約すればこの一点に尽きます。いつの日かこれをクリアできたら私にとって英語は苦でなくなるのだと想像していますが、今のところただの妄想です。
  • 2位: 聞き取れない
    発声される英語がノイズにしか聞こえず、頭が言語と認識してくれないことがよくあります。アクセント(訛り)が強いとさらに難しくなります。少々例外的ですが、例えば訛りの強いインド系の英語はゆっくり話してもらっても、それでも全く言語として認識できず、聞き取ることができないことがあります。

私の場合、英語習得において特に大きな障壁となっているのはこの2点だと思うのですが、話を日本人一般に広げると、どうもそれよりもさらに大きな問題があるように思います。

日本人にとって英語習得の最大の障壁は冠詞である

日本人にとって英語を覚えるのは難しい、日本人は英語が下手だというのはよく言われますし、実際その通りだと思います。しかし、なぜ日本人にとって英語を覚えるのが難しいのか、その理由の説明には個人的にイマイチ納得できないものが多いような気がします。日本人が英語ができない具体的な理由として、例えば「日本人は英語を自然に覚えられるような環境で生活していないから」というのには大いに同意できるのですが、「言語の仕組みがこれこれこう違うから」といった類の理由はどうもピントがずれていると感じることが多いです。

私は「英語と日本語における言語の仕組みの違い」なんてものは、実際に英語を使い出したら大部分はそれほど苦労せずとも乗り越えられるものだと思っています。例えば、よく挙げられる「語順の違い」のような障壁は、英語を自然に使わざるをえない環境で生活したら、日本人にだって特に苦労しなくても乗り越えられるはずだと思います。少なくとも個人的には、大人になって真面目に英語を勉強するようになってからは基本的な語順の違いを大変だなんて思ったことはありません。それに、海外経験を経て英語が話せるようになった人を見ても、基本的な語順の違いなんかで躓きながら話す人はいないような気がします。

しかし、言語の仕組みの違いとしては大きな問題として取り上げられることはあまりないような印象があるのですが、英語と日本語で決定的に異なることで、かつ日本人にはネイティブスピーカーのように自然に習得するのが極めて困難なのではないかと思われることがあります。それは a とか the といった冠詞の概念です。特に、単数・複数、可算・不可算の概念に関係してくる a の使い方は難しいのではないかと思います。

私が見てきた少ないサンプルでは、英語の冠詞の概念をネイティブスピーカーのように自然に習得できるかというのは高校を英語圏で過ごしたかというが一つの分かれ目になるような印象があります。大学以降に英語圏で留学したり働いたりして英語ができるようになったという人の場合、英語でのコミュニケーションは淀みなくできてとても羨ましく思うのですが、いざそういう人が書いた英語を読んでみたら冠詞の使い方が予想外に不自然でびっくりすることがあります。

間違いの例 - その1

最近、知り合いの中学生に英語のテストを見せてもらいました。中学生といっても親の仕事の都合でカナダに住んでいたことがあり、結構スムーズに英語を話すことができる子です。そのテストでこんな間違いがありました。

(誤) have a lunch

これは「昼食をとる」と言いたかったわけですが、この表現の何が誤りかというと、「a」がついていることです。「a lunch」と言ってしまうと、人を集めて昼食会をするとかランチ会議をするといったように何かイベントがあるということになり、ただの昼食とは別の意味になってしまいます。ただ単に「昼食をとる」と言いたいときは、英語では数えられないモノとして昼食という概念を思い浮かべるので次のように言います。

(正) have lunch

その後の会話で、その子が誕生日プレゼントに親から何を買って欲しいかという話になりました。

What do you want for your birthday?
(誕生日に何が欲しい?)

I want the game.
(あのゲームが欲しい。)

ところが、その子は何のゲームが欲しいのかには触れることなく、続いて全く別のことを喋りだしました。そのゲームが何なのか説明せずにただゲームが欲しいというだけのときに「the」と言ってしまうと、聞き手は「あのゲーム?それって一体どのゲーム?」と混乱してしまいます。具体的にそのゲームが何なのか説明する気がなく、ただゲームソフトが一本欲しいと言いたいだけならば次のように言えば良いのです。

I want a game.
(ゲームが欲しい。)

間違いの例 - その2

しばらく前の話になりますが、会社で産休から復帰した人が書いたメールにこんな文がありました。

I was gifted baby girl.
(私、赤ちゃんのころ、神童だったの。)

なんとも微笑ましい英語ですが、いつも電話で流暢に英語を話していてすごいと思っていた人のメールだったのでかなりびっくりしました。もちろん状況から「女の子の赤ちゃんを授かりました」と言いたいのだというのは分かるのですが、a が付いていないために、ぱっと見て変なところで区切って読んでギョッとなりました。

話はまだ続くのですが

とりあえず、記事を一回切ります。

このような a や the の間違いは、取るに足らない小さな問題のように思えるかもしれません。英語なんて動詞や名詞のような意味のある言葉を並べれば一応は通じるんだから、そんな細かいところは気にする必要はないと言いたくなるかもしれません。

しかし、実は、これを重大な問題だと認識することすらできないという、その意識こそが日本人の英語における最大の障壁だといったらどうでしょうか? 言葉の間違いというものは、普通は間違っていたら間違っていると気づくものです。少なくとも間違いを指摘されたら「ああ、それは間違ってるね」とすんなり理解できるものです。しかし、冠詞の場合、間違いを指摘されてもなお、なぜ修正しなければならないのか腑に落ちる感覚を持てず、冠詞が意味のある言語の構成要素であることを認識できないという日本人はかなり多いのではないかと思います。

日本語は冠詞の概念がすっぽり抜け落ちた言語です。日本語では冠詞は言語の要素として必須な存在ではないため、多くの日本人は英語を使う時に冠詞の扱いが適当であっても違和感を覚えることがありません。私の周りの英語が出来る人達を見渡しても、最初に言語脳が日本語でガッチリ形成されてしまったら、英語では冠詞が言語の要素として重要な意味を持つものだと認識する感覚は、もう自然には身に付けることはできないのではないかという印象があります。

日本語とは異なり、英語では冠詞は言語の要素として必須な存在です。このためにネイティブスピーカーが英語を話すときは、おそらく一般の日本人が自然に習得することがないであろう、日本語には存在しないプロセスを辿って言葉を発します。続きではこのことについて書きます。