前回の記事では、私のトレーニング観を変えたことを3つ挙げました。

  1. ビクター・マルティネスの慣習にとらわれないトレーニングフォーム
  2. ロニー・コールマンは胸のトレーニングでフライ種目を一切しなかったこと
  3. ドリアン・イェーツは背中のトレーニングでワイドグリップのプルダウンやチニングを一切しなかったこと

今回の記事は3つめの点に関するものです。

ラットプルダウンで肩甲骨を寄せるという誤解・再び

ドリアンの話をする前にひとつ。広背筋のトレーニング、特にラットプルダウンのやり方に関して、個人的に面白いと思うことがあります。まず、ラットプルダウンのやり方について一般的なフィットネスサイトなどを参照すると、ほぼ必ず「肩甲骨を意識してしっかり寄せるように」といった指示がされています。一般的な情報源では、肩甲骨を意識することは、あたかも絶対に外してはならない超重要な必須ポイントであるかのように扱われがちです。

しかしその一方で、プロのボディビルダーが広背筋のトレーニングについて話をするときに、「肩甲骨を寄せる」という表現が使われているのを私は聞いたことがありません。それどころか、「肩甲骨」という単語すらまず出てこないように思います。

どうも一般のフィットネス情報源とプロのボディビルダーの間には、広背筋のトレーニングについて根本的な意識の違いがあるように私には思われます。これに関連して、2015年に以下の記事を書いています。

広い背中を作るためにワイドグリップでトレーニングすべきという迷信

20年程前は一般に「広い背中を作るのに最適なトレーニングはワイドグリップのプルダウンやチニング」と言われていましたが、今はどうなのでしょう? 今でもその考えは広く信じられているのでしょうか? いずれにせよ、「ドリアン・イェーツは、チャンピオンとして君臨した時代、ワイドグリップのプルダウンやチニングを1セットたりとも行わなかった」というのは、個人的にはとても興味深い事実です。2011年の Muscular Development の記事に、その理由をドリアンが解説した記事が見つかるので引用します。

The Myth of Wide-grip Superiority
ワイドグリップの優位性に関する迷信

One myth that has held back the development of lats the world over is the persistent idea that using a wide grip on chins and pulldowns is the best way to build wider lats. This myth probably has its origins in the fact that using a wide grip on any vertical pulling motion will selectively recruit the smaller upper back muscles like the teres major and minor, the upper portion of the traps, and the rhomboids.
ワイドグリップのチニングやプルダウンが広い背中を作るのにベストな方法だという根強い考えは、世界中で広背筋の発達に悪影響を与えている迷信だ。おそらくこの迷信は、ワイドグリップで上下方向のプル動作を行うと、大円筋や少円筋、僧帽筋の上部、菱形筋などの小さな上背部の筋肉が選択的に動員されることから生まれたのだと思う。

When a bodybuilder feels these smaller muscle groups at the top of the back working, he often assumes he is making his lats wider. But the lats actually originate under the armpits and insert near the waist. Using a wide grip does not provide anywhere near a full range of motion for them. A narrower grip, in contrast, allows both a better stretch and a more complete contraction. If you don't believe me, pantomime two types of pulldowns right now as you read this, doing your best to contract the lats as hard as possible: a wide-grip pulldown and a narrow, underhand grip. I guarantee you that you will feel a more powerful contraction of the lats with the narrow underhand grip.
ボディビルダーは背中のトレーニング中にこれらの小さな筋群を感じると、しばしば広背筋を広くするためのエクササイズをしていると勘違いしてしまう。しかし、広背筋は実際には脇の下あたりに停止部があり、そこから伸びてウエスト付近に付着している。ワイドグリップでは広背筋のフルレンジ動作はカバーすることができない。それに対して、ナロウなグリップではより優れた伸展とより完全な収縮を得ることができる。私の言うことが信じられないというなら、これを読みながら今すぐ2つのタイプのプルダウン動作をパントマイムで実行してみてほしい。ワイドグリップのプルダウンと、ナロウのアンダーハンドグリップのプルダウンのジェスチャーをして、広背筋を最大限に収縮させてみてほしい。ナロウのアンダーハンドグリップの方が、より力強い広背筋の収縮感を得られるはずだ。

In my early career, I experimented with various types of grips, and I found that using a closer grip with the hands either parallel (facing each other) or fully supinated (underhand) actually provided the best contraction and most complete range of motion for the lats. Throughout my Mr. Olympia reign, I never did a single set of wide-grip chins or lat pulldowns. My two choices for vertical pulling were always a narrow underhand grip for lat pulldowns, which I would go up to 400 pounds on, and the Hammer Strength Iso-lateral pulldown machine.
私はキャリアの初期に様々なタイプのグリップを研究し、狭めにしたパラレル (両手の平が向かい合わせ) または回外位 (アンダーハンド) のグリップが、広背筋の最も強い収縮と完全な稼動域をもたらすことを見出した。ミスター・オリンピアのタイトル保持期間、私はワイドグリップのチンやラットプルダウンを1セットたりとも行うことはなかった。私の上下方向のプル・エクササイズの選択肢は常に2つ、最大400ポンドで行うナロウ・アンダーハンドグリップのラットプルダウンと、ハンマー・ストレングス・アイソ・ラテラルのプルダウン・マシンだった。

まとめとして、記事は次の言葉で締め括られます。

これらの知識を活用すれば、君にも私やロニー・コールマンのような背中を作り上げられるだろうか? それには私は答えられないが、少なくとも、適切な背中のトレーニングをすることで、その可能性に挑むことはできるだろう。そして、背中の発達度合いを改善させるにあたって、適切なトレーニング知識に基づいた自信を持てば、必ずや、現時点の背中よりも、より広く、より厚く、より素晴らしい背中を作り上げることができるだろう。

ベントロウの上体の角度について

ついでなのでもうひとつ触れておきます。前回の記事にも同じ画像を貼りましたが、ドリアンのベントロウは一般的なお手本フォームとは異なり、上体を割と立たせた状態でバーベルを引きます。その理由は、上体はある程度立てた姿勢の方が、下背部の耐久性を確保しやすくなるとともに、広背筋がより強く力を発揮できるからだとドリアンは説明しています。実際に真似をしてみると、ドリアンのアドバイスに従った方が一般的なフォームよりも広背筋にフォーカスしやすいと感じるはずです。

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