「The Holy River」は、私にとっては1996年のアルバム「Emancipation」の核をなす、美しい喜びの歌です。ただ、その意味の重さのために、今となっては聴くのが少し辛い曲でもあります。

私には、プリンスはベタな曲が大好きで、隙を探ってはそういうベタな曲を作るチャンスを窺っている人、というイメージがあります。私はプリンスのそういうところがとても好きです。この曲も少しベタに聴こえるかもしれませんが、ヴァースの地声レンジとコーラスのファルセットでボーカルが交互に切り替わるところや、3分35秒頃にそれが一度逆転して、コーラスが地声になり、続くヴァースがファルセットになるところなどは、本当に美しいです。

この曲を聴いて真っ先に気付くのは、コーラスの歌詞が、1984年のアルバム「Purple Rain」からの自身の最大のヒットシングル「When Doves Cry」と繋がっていることです。

How can U just leave me standing
Alone in a world that's so cold?
なぜ僕を置き去りにできるの
この冷たい世界にひとり

So over and over U ask your soul
Why'd U come down 2 a world so cold?
だから自分の魂に何度も聞き返す
どうしてこの冷たい世界に生まれて来たのかと

「When Doves Cry」は、フィクションを混在させたとはいえ、自身の内面や生い立ちを曝け出して作られた曲で、若きプリンスの痛ましい苦悩が生々しく投影されていました。対して「The Holy River」は、その苦悩の先に遂に辿り着いた場所であり、喜びに涙を流す曲です。本来であれば、この曲は純粋な喜びの曲であるはずでした。

そういえば、オプラショウでのプリンスの発言に、「She makes it easier to talk to God / マイテは僕を神と話しやすくさせてくれるんだ」というものがありました。曲が神への信仰心を歌う場面に入ると、この発言と重なるように思えます。


ところで、後に発表された未発表曲集「Crystall Ball」には、「Goodbye」という曲が収録されています。そして、プリンス自身によるライナーノーツには、「Goodbye は元々 Emancipation のために書かれたが、The Holy River に置き換えられた」という旨のことが書かれています。私は当時、「The Holy River と Goodbye なんて全然違う曲なのに、プリンスはなんでそんなことを言うのだろう?」と思ったものでした。しかし、今聴くと何を思っていいのか分からなくなります。

また、「Goodbye」はアルバム「Emancipation」でボツにされてしまった曲ですが、私の選ぶ曲の1位は、実はこの曲になります。順位と記事の順番が滅茶苦茶ですが、ようやく辿り着いたので、そろそろこの曲を取り上げたいと思います。私の選曲リストは一般的なプリンスの紹介ではあまり選ばれない曲を中心に構成されているので、その点について少し補足となるような前置きを挟んだうえで取り上げることにします。


こちらはテレビ出演でのライブで、さらっと短くまとめたパフォーマンスです。コーラスをファルセットにせず、地声のレンジで歌うのが印象的です。

また、上記のテレビ出演のインタビュー部分もアップロードされていました。番組ホストの態度が終始軽薄で、プリンスが真剣に話そうとしている場面でもジョークで流してしまっているので、少し複雑な気分になります。おそらく本意ではないと思われるものの、その場の雰囲気に合わせて面白可笑しく振舞うプリンスを見ると、何となく次の歌詞が頭をよぎります。

U surrounded yourself with all the wrong faces
Spending your time in all the wrong places
Puttin' your faith in things that only make U cry
望まない顔ばかりにに周囲を囲まれ
望まない場所ばかりで時間を費やし
悲しみしかもたらさないものに信念を預ける

ちなみに細かい話なのですが、番組のライブパフォーマンスでは、プリンスは一箇所歌詞を間違えていて、正しくは "Putting your faith in things..." となるのを、"Putting your things in faith..." と歌っています。何だか微笑ましいです。


Let's go down 2 the holy river
If we drown then we'll be delivered
聖なる川へ行こう
そこで溺れるならば、僕らは産まれ変わるだろう

U can still see the picture upon the wall
One eye staring at nothing at all
The other one trying 2 focus through all your tears
まだ壁には絵が飾られている
一つの目は全く何も見つめていない
別の目は涙の先で精一杯焦点を合わせようとしている

U can try and try but there's nothin' 2 hide
U can't run from yourself and what's inside
U got 2 find the answers 2 the questions that U most fear
いくら目を逸らしても隠すことはできない
自分自身から逃げ出すこともできない
最も怖れる問いの答えを探さなればならない

So over and over U ask your soul
Why'd U come down 2 a world so cold?
And the voice inside says 2night the truth will be told
だから自分の魂に何度も聞き返す
どうしてこの冷たい世界に生まれて来たのかと
内なる声は言う - 今夜真実が明かされるのだと

U surrounded yourself with all the wrong faces
Spending your time in all the wrong places
Puttin' your faith in things that only make U cry
望まない顔ばかりに周囲を囲まれ
望まない場所ばかりで時間を費やし
悲しみしかもたらさないものに信念を預ける

People say they love U when they wanna help
But how can they when U can't help yourself?
The more they say they love U, the more U just wanna die
人は優しい言葉を掛けてくれ、助けを差し伸べる
だが自分で自分を救えないというのに彼らに何ができるだろう?
優しい言葉を掛けてもらうほど、死んでしまいたくなる

So here we go again, the self analysis
Have another glass of Port and uh.. forget this
The band's playin' at the club 2night and they're bound 2 groove
だからまた自己分析に取り掛かる
ポートワインをもう一杯飲み… いや、またにしよう
なぜなら今夜のクラブで演奏しているバンドは最高なのだから

There U are, U think U're high
U can't ask yourself cuz U'd only lie
If U had a dollar 4 every time U tried
そしていつも通り、ハイになった自分を演じる
嘘でしか答えられないから自分自身に尋ねることもできない
この繰り返しのたびに1ドルを得られていれば、それだけで財産を築いていただろう

U can't call nobody cuz they'll tell U straight up
Come and make love when U really hate 'em
Relationships based on the physical are over and done
They're over and done (They're over and done)
U'd rather have fun
With only one, with only one
Only one... one (one)
思いが異なるから誰かを頼ることもできない
本心の望まぬままに愛を交す
肉体のみの関係はもうたくさんだ
愛する一人の人と喜びを分かち合いたい
愛する一人の人と
愛する一人の人

And then it hit 'cha like a fist on a wall
Who gave U life when there was none at all?
Who gave the sun permission 2 rise up everyday? (Ooh, oh yes)
Let me tell it (Go'n)
そして壁に拳を打つような衝撃が走る
全くの無から誰が命を与えたのか
誰が太陽に毎日昇る許しを与えたのか

If U ask God 2 love U longer
Every breath U take will make U stronger
Keepin' U happy (happy) and proud 2 call His name (Go'n and say it)
Jesus (Jesus)
神からより長く愛されることを願うなら
呼吸を重ねる度に強さを増していく
幸福の中で誇らかに彼の名前を呼ぶ - ジーザス

And over and over U ask your soul
Why'd U come down 2 a world so cold?
And the voice inside said 2night the truth will be told
そして自分の魂に何度も聞き返す
どうしてこの冷たい世界に産まれて来たのかと
内なる声は言った - 今夜真実が明かされるのだと

And this time I was listening, hear me
そして僕は確かにその声を聴いた - 聴いてほしい

Let's go down 2 the holy river
If we drown then we'll be delivered (Yes we will)
If we don't then we'll never see the light (No)
聖なる川へ行こう
そこで溺れるならば、僕らは産まれ変わるだろう
さもなくば、僕らは決して光を見ることはないだろう

If U die before U try
U'll have 2 come back and face the light (Oh yes)
When U believe it, U got a good reason 2 cry (Oh my, my)
もし飛び込む前に命を落とせば
再び戻り光と向き合わなければならない
それを信じる時、涙を流すのに十分な理由を得るだろう

So I went on down 2 the holy river
I called my girl and told her I had something 2 give her
I asked her 2 marry me and she said yes, I cried
そして僕は聖なる川へ訪れた
彼女を呼び、あげたい物があると伝えた
僕は結婚を申し込み、彼女は受け入れ、僕は泣いた

Oh, that night I drowned in her tears and mine
And.. and instead of a glass of sorrow and wine
Looking back y'all, I don't miss nothing except the time
その夜の僕は彼女と僕の涙に溺れた
それはワインと悲しみに満たされたグラスに溺れるのではなく
振り返っても、時間以外に何も惜しくはない

And when I see that picture upon the wall
The one eye staring at nothing at all
My eyes trying 2 focus but these are much different tears
Oh, yes they are
そしてあの壁の絵を見ると
一つの目は全く何も見つめていない
僕の目は精一杯焦点を合わせようとしたけれど、それは全く違う涙だった

Let's go down 2 the holy river {x3}
Let's go down 2 the holy river {x3}
聖なる川へ行こう
聖なる川へ行こう