誰も読んでいないような気がするプリンスカテゴリの記事です。ブログ記事が混ざってしまうなあと思いつつも、他にはけ口がないので一人で続けます。

関連するイベントのようなものも色々と行われているようですが、「Sign O' The Times」の上映に一度行ったきりで、まだそういうイベントという気分にはなれません。 昔はネットのコミュニティ等を通して他のファンの方とお会いしたこともあったのですが……昔、ジル・ジョーンズのアルバムを持っていないと言ったら貸してくれた方、他のアーティストへの提供曲を纏めた手作りコンピレーション CD をオランダのファン経由で入手してくれた方、もう連絡先もなくしてしまいましたが、今でも感謝しています。


She Gave Her Angels」は1996年にレコーディングされたとされる曲です。この曲は、もし当時の妻マイテとの子供に不幸がなければリリースされるはずだった、「Happy Tears」プロジェクトのために書かれました。プロジェクトは消えてしまいましたが、この曲は、その後、もしブート業者が同じことをやったら1枚も売れないんじゃないかと思うくらい適当に未発表曲をごちゃまぜにして1998年にリリースされた「Crystal Ball」に収められています。

この曲は、言葉で表現すると、cheesy というか、コテコテにやりすぎているというか、後半のギターソロまで入れるとちょっと甘すぎて食べられないお菓子のようです。個人的には cheesy すぎて滅多に聴こうと思わない曲なのですが、この前ちょっとした切っ掛けがあって聴き直しました。この曲は歌詞がとても素敵なのです。

アメリカの子供番組 Muppets Tonight で放送されたギターの入らない短いバージョンです。

この曲は歌詞の意味が分かりづらくて、おそらく殆どの人に誤解されていると思われます。 というのも、「Crystal Ball」がリリースされた当時、これは亡くなってしまった子供のことを歌った曲だと言われていたのです。確か。 そのため、おそらく一般的には悲しい曲だと思われています。 私も最初は悲しい曲なのだと思っていました。 今でも曲名で検索すると、日本語ではそういう言及しか見つかりません。

確かに「犠牲」「彼女は天使をあげた」「運命と愛は手を取り合わない」「胎児」「男は天使を持っていなかった」といった歌詞を、当時起こった不幸と重ね合わせると、自然とそのような解釈になってしまいます。

しかし、その線で全ての歌詞を読み解こうとするとどうもすっきりしません。

And now I'd like 2 turn your heart / 2 a tale of sheer delight
さて心を向けてもらいたい - ある純粋な歓びの話
A song of adulation, love and fear
称賛、愛と恐れの歌
No one loved him better / No one better sacrificed
彼女は誰よりも彼を愛し、誰よりも犠牲になった
She gave her angels that summer night
あの夏の夜、彼女は天使をあげた

Fate as she designed it / Took her from her man
彼女の持つ運命は、彼女をその男から離した
Destiny and love don’t always go hand in hand
運命と愛は必ずしも手を取り合わないもの
As the world lay waiting / Like an embryo in a womb
母の中の胎児のように世界は佇み待つ
She gave her angels that night in June
あの6月の夜、彼女は天使をあげた

She gave her angels 2 her man / Because her man had none
彼女はその男に天使をあげた - なぜなら男は天使を持っていなかったから
2 watch over him 'til she returned...
彼女が戻るまで見守ってあげられるように…
Her man, her lover, her son, her father
伴侶、恋人、息子、父親
4 all these things he meant 2 her / She felt it right
彼は彼女にとってそれらの全てだったから - そうするのが良いと感じた
She gave her angels that summer night
あの夏の夜、彼女は天使をあげた

実は、謎めいた感じのするこの歌には、これを知らずにいたら勿体ないと思うような、そして歌詞の意味もすっきり腑に落ちるような素敵なエピソードがあります。

それは二人の結婚式でのことです。 プリンスは教会で誰も座っていない席があるのに気付き、それをマイテに話すと、マイテは「あそこは天使たちの席よ」と答えたのだそうです。 当時、二人の間では「天使」ブームみたいなものがあって、 マイテは、スペインに戻るためプリンスの元を離れなければいけないとき、その間プリンスが一人で寂しい思いをしないように、「私の天使たちを置いていくわ。替わりに天使たちがあなたを見守ってあげるから」と言ってあげたのだそうです。

このエピソードを背景にもういちど歌詞を読むと、今度は全ての言葉がすっきりと理解できます。 全く深読みをする必要がありませんし、他の解釈をしようという気にもなりません。 何だかコテコテすぎるメロディやアレンジも、このエピソードを知った後なら「仕方ないか」と思えてきます。

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