前回、「Illusion, Coma, Pimp & Circumstance」(Musicology 収録、2004年) から脱線して「Sex」(Scandalous B-side、1989年) を取り上げましたが、脱線ついでに1999年12月10日にプリンスが TV 出演したラリー・キング・ライブのインタビューも取り上げたいと思います。プリンスが読み方を持たないシンボルマーク「O(+>」に改名していたのは1993〜2000年なので、このインタビューは、プリンスがまだ改名中の時期に当たります。

このインタビューにはちょっと面白い場面があります。ラリーがプリンスに有名になった経緯について質問をした後、プリンスが名前のことで話を逸らしたために、生放送中、ラリーは尋ねたばかりの質問を一瞬忘れしてまいます。質問を思い出そうとするラリーに対して、プリンスは機転を効かせてこう言ってあげます。

The Artist: You were saying how much you love live television.
あなたは、あなたがどれだけ生放送のテレビが好きでらっしゃるかについて喋っていましたよ。

歌詞がストーリーになっている「Illusion, Coma, Pimp & Circumstance」には、コーラスを終えた後に "Where was I? Oh Yeah... (どこまで話したんだっけ? ああそうだった…)" と、話を思い出す部分があります。何となく、私の中では上のプリンスとラリーのやり取りと重なります。


インタビューの内容を少し引用したいと思います。

プリンスは、自身の改名について、精神的な面から次のように語っています (4:00〜)。

King: About the highest risk one would think someone who gets famous would take is to drop the name that got them famous.
有名人にとって自分を有名にした名前を捨てるというのは、犯しうる最大のリスクと言ってもよさそうなものですが。

The Artist: Well, that was one of the things that I dealt with, is that I really searched deep within to find out the answer to whether fame was most important to me or my spiritual well being, and I chose the latter.
それは私が向き合ったことのひとつで、自分にとって最も大切なのは名声なのか、それとも精神の健康や幸福なのか、答えを見つけるために深く熟慮しました。そして、私が選んだのは後者でした。

ラリーが質問を一瞬忘れてしまう場面です (11:05〜)。

King: And how -- what burst you on the scene? How did the world get to know Prince, the then Prince?
あなたが有名になったきっかけは何でしたか? 世間はどうやってプリンスを知ることになったのでしょうか? その、あなたは当時はプリンスでしたが。

The Artist: Well -- by the way, I'm still Prince. I just use a different sound for my name, which is none.
そうですね、ところで、私は今もプリンスなんです。ただ名前として違う読み方にしただけで。それは読み方は存在しない、というものですけれども。

King: But it's hard not to refer to you. It's hard to call you uh.
そのせいで我々はあなたへの言及や呼び掛けをするのが大変なんです。

The Artist: It's cool. It's cool.
それで構いませんよ。

King: You're understanding of this plight we're faced with.
あなたは我々が面している困難に理解を持ってらっしゃる。

The Artist: Oh, yes, no problem.
ええ、問題ありません。

King: Thank you.
ありがとう。

The Artist: What was the question?
それで質問は何でしたっけ?

King: The question was -- good, you threw me. I forgot the question. The question -- what was the question? I just asked a question. I forgot the question.
私がした質問は…あれ、今ので混乱しました。質問を忘れました。質問は…質問は何でしたっけ?私はたった今質問をしたばかりです。質問を忘れました。

The Artist: You were saying how much you love live television.
あなたは、あなたがどれだけ生放送のテレビが好きでらっしゃるかについて喋っていましたよ。

King: Yes. That wasn't the question, though. No, the question was, how did you get famous? How did you -- how did the world get to know you? What happened? Was it a record, an appearance, something?
その通り。それは私がした質問ではありませんけど。質問はこれです。あなたはどうやって有名になったのですか?世間はどうやってあなたを知ることになったのですか?レコード、何かの出演、何だったのでしょう?

続いてデビューした頃の話から、音楽のインスピレーション、さらにはアーティストの権利などに話が移っていきます (12:34〜)。

King: immediately became a hit, and you were known?
(デビューして) すぐにヒットして、有名になったのですか?

The Artist: Quietly, but a lot of people knew about me because I was -- I used Stevie Wonder as an inspiration, whom I look up to a great deal just for the way that he crafted music and his connection to the spirit. And, boy, back then I used him as a role model in trying to play all the instruments and be very self-contained and keep my vision clear. So word spread very quickly about what I could do.
静かに、ですね。でも多くの人が私のことを知っていました。私はスティービー・ワンダーをインスピレーションにしたんです。私は彼の音楽を制作の仕方や精神とのコネクションを尊敬しています。彼を手本にして、全ての楽器を演奏し、自己完結させ、自分のビジョンを明確に持つよう心掛けたんです。なので私が何を出来るかということはすぐに広まりました。

King: How would you describe your music? What idiom would you put it in?
ご自身の音楽を言葉で表現するとしたらどう呼びますか?どんなイディオムで表現しますか?

The Artist: The only thing I could think of, because I really don't like categories, but the only thing I could think of is inspirational. And I think music that is from the heart falls right into that category, people who really feel what it is that they're doing. And ultimately all music is or can be inspirational. And it's -- that's why it's so important to let your gift be guided by something more clear, you know?
私はカテゴリーというのは好きではないんです。でも唯一考えつくとしたら、インスピレーショナル、でしょうか。自分が行っていることをきちんと感じている人々によって心が注がれた音楽は、このカテゴリに当てはまるものだと私は考えます。突き詰めると、全ての音楽はインスピレーショナルであるか、あるいはそうなり得るものです。なので、明確な導きの元に自分の資質・才能を置くことが大切なんです。

King: The thing is, we don't know -- you think you know where that gift comes from?
つまりそれは…あなたは自分の資質・才能がどこから来たものか知っているということですか?

The Artist: Oh, yes, absolutely.
ええ、もちろんです。

...

King: Where does your inspiration come from?
あなたのインスピレーションはどこからやって来るものですか?

The Artist: I like to believe that my inspiration comes from God and that...
私は自分のインスピレーションは神から来るものだと思っています。

King: Did you always believe that?
常にそう思っていたのですか?

The Artist: No. As you grow older, you learn and you start to -- you get smarter, yes.
いえ、年を重ねるに従い、学び、気付き始め…人はより賢明になっていくものですから。

...

The Artist: I have always known that God was my creator and that without him, boy, nothing works. It works to a point, and then it just kind of deteriorates. Entropy takes place.
私は常に神が自分の創造主であると考えてきました。神なしでは何も上手くいきません。ある所までは上手くいきますが、やがて堕落します。エントロピーの増大です。

King: When bad things have happened to you, do you blame him?
悪いことがあなたの身に降りかかったときは、神を責めますか?

The Artist: Absolutely not, no.
いいえ、決してそのようなことはしないですね。

King: How do you explain -- how do you resolve it in yourself?
ならばそういったことを自分の中でどのように解決するのですか?

The Artist: I learn from it. And I don't wallow in it. I don't spend time in a place. I let myself move on, you know? Right today, I could sit and say, I have animosity towards...
そこから学びます。その中でもがいたりしませんし、一つの場所に留まることはしません。次へ進むんです。今日のこの場でだって、私は敵意を持っていると言うこともできたでしょうが…

King: ... a record company.
それは、レコード会社への。

The Artist: Yes, a company that owns the rights to my work, you know. They're businessmen. They're doing what it is that makes their business successful, and I also am allowed to do things that make my business successful. And for me, that would be to own my work. So I just chose to step away from that. And knowing that, I sent a nice letter to the president -- then-president because they changed a lot weekly during that time, and I told him that I loved him, and that, you know, I was glad that I had this experience, you know.
はい。私の作品の所有権を持っている会社に対してです。彼らはビジネスマンです。彼らはビジネスを成功させるために行動しています。そして私もまた自分のビジネスを成功させるために行動することができます。私にとって、それは自分の作品の所有権を持つことです。だから彼らから離れることにしたんです。その上で、私はワーナーの社長、当時は毎週のように社長が替わっていましたけれども、当時の社長に感謝の手紙を送りました。私は彼を敬愛し、この経験をしたことを嬉しく思っていることを伝えました。

King: So you would say, even though we don't like to look back, that dispute turns out now to be an experience that worked for you?
ということは、過去を振り返ることになりますが、あの不和はあなたにとって実りのある経験になったということでしょうか?

The Artist: Well, I think my understanding of it is what worked for me. I don't consider it proper that my creations belong to someone else. I can go up to a little kid on the street and say, do you know that I don't own "Purple Rain," and they're appalled by that.
その、私の認識で何が上手くいったかということなんですが、私は自分の制作したものが他者に所有されるのが妥当だとは考えないんです。もし私が街で小さな子供に会い、その子に「知ってる? "パープルレイン" は僕のものではないんだ」と言ったら、その子は驚くでしょう。

King: Do you still not own "Purple Rain?"
今もパープルレインはあなたのものではないのですか?

The Artist: No, I'll have to rerecord it to own a new master copy of the... we've done that with the song "1999." There is a new master recording of it.
はい。マスターコピーを所有するためには私はそれを再録音しなければなりません。"1999" という曲にについてはそれを行い、新しくマスターを録音しました。

本来、プリンスの改名は、「アーティストとして生きる者は、ビジネスの喰い物にされないためにどうあるべきか」というテーマにおける重要な問題提起でもありました。しかしながら、当時のメディアや批評家達は、概ねプリンスの決断を嘲笑するような論調だったように思います。1億ドルという業界に前例のない高額な契約を結びワーナーの副社長にまで就任したのに、突然その座を捨てて発音できない奇妙なシンボルに名前を変えるなんて、プリンスは何て無責任で身勝手な奴なんだ、という批判的な空気があったように思います。

その中で、プリンスはアーティストのあるべき姿を求め続け、改名から20年近くの年月を経て、2014年にワーナーにカムバックし、遂にマスターを所有する権利を得るに至りました。きっとプリンスには、その先の考えもあったのだろうと思います。

最後にもう1つ、個人的に興味深く感じたやり取りです (29:14〜)。

King: A lot of people were telling me today -- I was just telling the artist -- that, boy, you're going to have the artist on for an hour? It's going to be very hard because he's very hard to talk to. Now you're not hard to talk to. Where did this reputation begin that you are difficult, do you think? I imagine you're not hearing it here for the first time.
今コマーシャルの間に話をしていたところなんですが、今日は私は沢山の人達から言われたんです。ジ・アーティストを迎えて1時間もインタビューをするなんて大変なことだと。なぜならあなたはとても話しづらい人だから。ところがいざ話してみると、あなたは話しづらい人ではありません。これを耳にするのは初めてではないと思いますが、あなたが気難しい人間だという世評はどこから生まれたと思いますか?

The Artist: Probably where all reputations begin. I think the media plays a big part in one's perception of me. Until one actually sits down and talks to me they can't really know me.
おそらく世評というものが作られる所からでしょう。メディアは私に対するイメージに大きな影響を与えていると思います。しかし、実際に直接向かい合って話をしない限り、私を知ることはできません。

King: Well, should you have been more public? Should you have done more of things like this?
ならばもっと前から公の場に出てくれば良かったとは思いませんか? 今やっているようなことを前からもっとやっておくべきだったとは思いませんか?

The Artist: No, I kind of did what I wanted to do. I wanted my music, as even now, to speak loudest for me.
いえ、私は自分がやりたいことをやってきましたから。私は、今もそうですけど、自分の音楽に最も強く語らせることを望んできました。

King: But you -- you're not uncomfortable here, are you?
しかし、それで居心地は悪くならないのですか?

The Artist: No, not at all.
いいえ。全くなりませんよ。

King: But the reputation is that you would be. How do you fight that other than by counteracting it?
しかしあなたのイメージは世評から作り上げられます。それに対抗せずにどうやって戦うのですか?

The Artist: Well, I don't think in terms of fighting. I don't think that you win anything by fighting. I'm the type of person that likes to look at things for exactly the way they are. And...
その、私は戦うという考え方をしないんです。私は戦って何かを勝ち取れるとは思っていません。私は物事をあるがままに見るので…

King: Do you get angry? You're a perfectionist musically, right?
怒りを感じたりはしませんか? あなたは音楽では完璧主義者でらっしゃる、そうでしょう?

The Artist: Yes.
ええ。

King: You must get angry then?
ならば怒りを覚えるでしょう?

The Artist: I use my anger with humor. I have a way of being very stern, but I always find the irony in it, and I always make it funny. I make it funny for myself and the person that I'm...
私は怒りはユーモアにします。私には厳しく振る舞う側面もありますが、怒りの中に皮肉を見つけ、いつも面白可笑しくします。それは私のためでもありますし、その人の…

King: So the person you're directing it at is not humbled or made to feel less than a human.
それが向けられている人物が、恥じ入ったり人間以下に小さく感じられたりすることがないように。

The Artist: Well, no one can make you feel anything. You pretty much are going to fall in there if you, you know, aren't spiritually based.
いえ、人の感情を左右することなど誰にもできません。といっても、精神的な基盤がなければそのような状況に陥ってしまいますけれども。

私がこの発言で思うことは2つあります。1つは憤りや不満の感情と精神的な基盤についてです。そして、もう1つは完璧主義者 (Perfectionist) という言葉についてです。このインタビューのように、プリンスは、完璧主義者というイメージで語られることがあります。しかし、私はプリンスをそのように評することには非常に強い違和感を覚えます。わざわざ強調するようなことでもないかもしれませんが、私には、プリンスは完璧主義者とは遠く離れた人物、という印象があります。

これらの点についてもっと掘り下げて書こうかと思ったのですが、脱線が止まらなくなるのでどうしようか考えています。とりあえず、このブログ記事はこれで終わりにします。