こんな格言があります。

「カミールの歌声はあなたをガッカリさせない」

格言としては少々重みに欠けると感じられるかもしれません。それは私が今考えたためです。

カミール (Camille) とは、プリンスの別名・別人格、あるいはプリンスが創作したキャラクターの名前です。カミール (カミーユ) は本来はフランス人の女性の名前ですが、このキャラクターは少年/男性です。大雑把に言うと、このキャラクターは基本的に高くて中性的な声をしているのが特徴です。この独特な声は、プリンス自身の声を速めて高くしたものです。

1986年、プリンスはカミール名義でアルバム「Camille」をリリースすることを計画するも、結局これをボツにします。未発表となってしまったアルバム「Camille」は素晴らしくファンキーな曲を中心に構成されており、流出を含め全曲何らかの形で世に出回っています。

  1. アルバムオープナーとして最高すぎる「Rebirth Of The Flesh」
  2. 曲というよりも、最早 Housequake というジャンルと呼ぶ方が相応しい「Housequake」
  3. 複雑な感情を美しいメロディに乗せた「Strange Relationship」
  4. 単純なリフのループが耳に残る「Feel U Up」
  5. 「Housequake」のリズムにエフェクトに加わり、ボーカルも手が付けられない突っ走り具合の「Shockadelica」
  6. 凄くポップで凄くキュートな「Good Love」
  7. 今回取り上げる、一言でどんな曲かを表現するのは難しい「If I Was Your Girlfriend」
  8. 盛り上がると思わせてその寸前のところで止まってユーモラスに漂い続ける「Rockhard In A Funky Place」

ということで、一般的なお勧め記事ではあまり紹介されないけれど、ファンにはよく選ばれるような気がするプリンスの曲で、かつスタジオバージョンを聴く必要がある曲、第1位にはカミールボーカルの「If I Was Your Girlfriend」を挙げたいと思います。この曲は「Camille」がボツになった後、アルバム「Sign O' The Times」(1987年) に収録されています。


「If I Was Your Girlfriend」は、疑いようもなく名曲です。個人的には、プリンスの書いた曲の中というだけでなく、この世の全ての音楽をひっくるめても際立って独特な曲だと思います。そして、ある意味で、他の有名なヒット曲よりもずっとプリンスらしい曲でもあります。極めて内向的な歌詞でありながら、多くの人がこの曲に共感を覚え、この曲をお気に入りとして挙げます。また、90年代に人気があった女性 R&B グループの TLC は、オリジナルへのリスペクトから、基本的な部分は殆ど同じようなアレンジのカバーを歌っています。この曲は女性が歌うと意味が失われてしまうのですが、それでもカバーしたくなるほど心に響く曲なのだと思います。

ただ、この曲は私にとっては少々感想が書きづらいです。とりあえず、私の個人的意見としては、「If I Was Your Girlfriend」はプリンスのあらゆる曲の中で、最も一線を越えている曲だと感じます。

そういえば、80年代のプリンスをリアルタイムでは知っている人はよく、プリンスは最初は気持ち悪かったとか苦手だった、と言います。実は、私にはこの感覚がありません。私がプリンスのファンになった1991年頃は、80年代のプリンスの衝撃は、既に過ぎ去り消化された後でした。そのため、私は拒否反応を覚えることなく、純粋に音楽や表現を楽しみながら80年代のプリンスを遡って聴くことができました。

しかし、しかし、そんな私なのですが、唯一、「If I Was Your Girlfriend」だけはダメです。ダメというか、生理的な拒否反応を覚えます。

例えば、あなたがノーマルな男性だとして、男性から恋心を持たれたとしましょう。その目からは明らかに欲望が透けて見えます。その一方で、心の中には相手を慕う純粋な心が存在することもそれ以上に分かります。しかし、どれほど真摯な想いであっても、それを受け入れるというのはできない相談です。私は、「If I Was Your Girlfriend」に対してもこれと似たような拒否反応を覚えます。「If I Was Your Girlfriend」は、自分の欲望と相手を想う純粋な心が同時に存在して全く不整合を起こすことがない、人間というものをよく表していると思います。


この曲に関して何か明るいことは書けないかなと思ったのですが、ちょっと無理っぽいです。この曲はのっけから狂っています。女性が仲の良い友達同士ですることといったらショッピング? ということで、次のアナウンスにウェディングマーチを被せるという始まり方をします。

"Look at the bargains over here, ladies"
"ご婦人方、こちらのバーゲン品をご覧ください"

そして、複雑な技巧が凝らされているわけでもないのに異常性を感じるマシンのドラムと、切なく美しいメロディーのイントロに乗せて、生々しいファルセットのカミール声が響きます。歌が始まると、「Pleeeease」と叫ぶところなどを始めとして、ボーカルの端々から懇願するような感情が洩れます。歌詞は途中までは美しく心を打ちますが、段々狂ってきて付いて行けなくなります。ライブや他人のカバーでは、たいてい狂った部分はカットされます。

この曲の聴きどころは、曲が始まる0秒から唐突に終わる5分頃までの、全ての楽器、全てのメロディ、全てのボーカルです。


"Look at the bargains over here, ladies"
"ご婦人方、こちらのバーゲン品をご覧ください"

If I was your girlfriend / Would U remember
もし僕が君の女友達だったら - 全部僕に話してくれる?
2 tell me all the things U forgot / When I was your man?
僕が君の恋人だった頃は - 僕には忘れて話してくれなかったことも
Hey hey, when I was your man
僕が君の恋人だった頃は

If I was your best friend / Would U let me
もし僕が君の親友だったら - 君のお世話をさせてくれる?
Take care of U and do all the things / That only a best friend can
親友だけにしかさせてあげないことを- 全部させてくれる?
Oh, only best friends can
親友だけにしかさせてあげないことを

If I was your girlfriend
もし僕が君の女友達だったら
If I was your girlfriend
もし僕が君の女友達だったら

If I was your girlfriend / Would U let me dress U?
もし僕が君の女友達だったら - 君に服を着せてあげてもいい?
I mean, help U pick out your clothes / Before we go out
つまり、出掛ける前に何を着るか一緒に選んだり
Not that U're helpless
それは君が一人じゃ何もできないって意味じゃなくて
But sometimes, sometimes / Those are the things that being in love's about
でも時には、時には、それが恋をするということだから

If I was your one and only friend / Would U run 2 me
もし僕が君のたったひとりの友達だったら - 僕の元に駆けてきてくれる?
if somebody hurt U / Even if that somebody was me?
もし誰かが君を傷付けたときに - たとえその誰かが僕だったとしても
Sometimes I trip on how happy we could be
ときどき興奮してトんでしまうんだ - 僕らは一緒ならどこまで幸せになれるんだろうって
Please
どうかお願い

If I was your girlfriend
もし僕が君の女友達だったら
If I was your girlfriend
もし僕が君の女友達だったら

Would U let me wash your hair? / Could I make U breakfast sometime?
君の髪の毛を洗わせてくれる? - ときどき君のために朝食を作らせてくれる?
Or then, could we just hang out / I mean, could we go 2 a movie and cry together
それともただ一緒にお出かけしようか? - 例えば、映画を観に行って一緒に泣いたりとか
Cuz 2 me baby that would be so fine
だって僕には、それってとても素敵なことに思えるんだ

Baby can I dress U?
ねえ君に洋服を着せてあげてもいい?
I mean, help U pick out your clothes / Before we go out
つまり、出掛ける前に何を着るか一緒に選んだりとか
Listen girl, I ain't saying U're helpless
分かってくれる?それは君が一人じゃ何もできないって意味じゃなくて
But sometimes, sometimes / Those are the things that bein in love's about
だけど時には、時には、それが恋をするということだから

Sugar, do U know what I'm saying 2 U this evening?
ねえ、今晩僕が君に言っていることが分かる?
Maybe U think I'm being a little self-centered
君は僕がちょっと自己中心的になっていると誤解しているかもしれないけど
But I, I said I want 2 be / All of the things U are 2 me
でも僕が言っているのは、僕にとっての君 - その全てに僕もなりたいということなんだ
Surely, surely U can see
もちろん君は分かってくれるよね

Is it really necessary 4 me 2 go out of the room / Just because U wanna undress?
君が服を脱ぐというだけで僕が部屋を出なきゃいけない必然性って本当にあるの?
We don't have 2 make children 2 make love
行為をしたからといって子供を作らなければならいわけではないよね
And then, we don't have 2 make love 2 have an orgasm
絶頂を得るのに行為をしなければならないこともないし

Your body's what I'm all about
君の体が僕の全てなんだ
Can I see U? / I'll show U / Why not?
見てもいい? - 僕は見せるよ - なぜだめなの?
U can do it because I'm your friend I'd do it 4 U
僕は君の友達なんだからできるよね - 僕だったらできるよ
Of course I'd undress in front of U
もちろん僕は君の前で服を脱げるよ
And when I'm naked, what shall I do?
僕が服を脱いだら、どうしたらいい?
How can I make U see that it's cool?
どうしたらそれが素敵なことだって分かってくれる?
Can't U just trust me?
いいから僕を信じてくれる?
If I was your girlfriend U could
もし僕が君の女友達だったら信じてくるよね
Oh, yeah, I think so
そう思うよ
Listen, 4 U naked I would dance a ballet
ねえ、君のためなら裸で僕はバレエを踊るよ
Would that get U off?
そしたら喜んでくれる?
Tell me what will
どうしたら喜ぶか教えてよ
If I was your girlfriend, would U tell me?
もし僕が君の女友達だったら - 教えてくれる?
Would U let me see U naked then?
君が服を脱いだ姿を見せてくれる?
Would U let me give U a bath?
君をおフロに入れさせてくれる?
Would U let me tickle U so hard U'd laugh and laugh
君を思いっきりくすぐっていっぱい笑わせたり
And would U, would U let me kiss U there
君にキスをさせてくれる?
You know down there where it counts
ほら、あの大切な場所に
I'll do it so good, I swear I'll drink every ounce
上手にするよ - 一滴残さず飲むよ
And then I'll hold U tight and hold U long
そして君をきつく抱きしめてずっと抱きしめる
And 2gether we'll stare into silence
そして一緒に静寂を見つめよう

And we'll try 2 imagine what it looks like
そしてそれがどんなものに見えるか想像しよう
Yeah, we'll try 2 imagine what, what silence looks like
静寂がどんなものに見えるか想像しよう
Yeah, we'll try 2 imagine what silence looks like
静寂がどんなものに見えるか想像しよう
Yeah, we'll try...
どんなものに…