「The B-Sides」からもう1曲取り上げます。シングル「1999」の B 面、「How Come U Don't Call Me Anymore」(1982年) です。この曲はアリシア・キーズ (Alicia Keys) の2001年のカバーが有名です。ただ、世の中的にはアリシアのバージョンがカバーだとはあまり認識されておらず、今でもこれが元々プリンスの曲だということを知らない人の方が多いかもしれません。

この曲については Peach & Black ポッドキャストが面白いレビューをしており、それを紹介したいと思って取り上げることにしました。「How Come U Don't Call Me Anymore」を作曲面から分析・解剖し、作曲家としてのプリンスに焦点を当てた興味深いレビューです。

上のリンクがそのポッドキャストで、「How Come U Don't Call Me Anymore」のレビューは45分50秒頃からです。この曲を3つの異なるパターンで演奏し、この曲に如何に優れた趣向が施されているかを説明してくれます。

1) Heart And Soul 風の How Come U Don't Call Me Anymore (47分20秒〜)

まず、シンプルに「Heart And Soul」のリズムとコード進行に乗せて「How Come U Don't Call Me Anymore」を演奏します。「Heart And Soul」は、その名前は知らなくても聴けば誰もが「ああ」となる馴染み深い 1-6-4-5 のコード進行で、私は楽器は弾けないのですがピアノ初級者の練習にもよく使われる曲です。ごく自然な聴き心地で、いきなり演奏されてもウンウンと頷きながら聴くことができます。

2) (1) からリズムは変更せず、コード進行のみプリンス風に変更 (48分39秒〜)

次に、リズムはそのままに、コード進行を少し変えてプリンス版に近付けて演奏します。今度は音を外していて調和が取れておらず、間違った伴奏で演奏しているように聴こえます。斬新なことをしているとも取れますが、せいぜい奇をてらったという所が関の山だと感じます。

3) (2) からさらにリズムも崩し、全てをプリンス風にした最終版 (50分12秒〜)

最後に、(2) のコード進行に加えてリズムも崩し、全体をできるだけプリンス版に近付けた形で演奏します。すると驚いたことに、何と見事に聴き慣れた「How Come U Don't Call Me Anymore」になります。先の2つのバージョンの後にこれを聴くと、これは見事というほかありません。この曲が如何にユニークで優れたバランス感覚の元に出来上がっているかに感嘆させられます。

プリンスの作曲家としての側面が、このように具体的に分析・解剖されて説明されることは滅多にないので、とても面白いレビューだと思います。

そして、本物のプリンス版では、これに加えてさらにプリンスのボーカルパフォーマンスが乗ってきます。そしてライブでは、プリンスはさらにもう一段発展させたショウで魅せてくれます。プリンスがやることは、時に「プリンスだから」ということで当然のものとして受け取ってしまうのですが、よくよく考えると、何というか、何てことをしてるんだろうと、その存在を感慨深く思います。

prince-how-come-u-dont-call-me-anymore

上の GIF は、1983年のコンサートでの「How Come U Don't Call Me Anymore」からのひとコマです。プリンスは最初はピアノを弾きながら普通に歌いますが、途中で椅子を払い飛ばして立ち上がり、何度か叫んでいるうちに倒れて床をのたうち回ります。心配したボディガードがやってきてプリンスを抱えてあげると、プリンスは突然それを振り切って走り出し、ピアノの上に飛び乗って、聴衆を誘惑するような仕草をします。

その後ピアノから降りるとちょっとムーディーな雰囲気になり、プリンスは聴衆に向かって問いかけます。

You got another man, baby? Is he fine? Does he have an ass like mine?
別な男ができたのかい?そいつはイイ男かい?そいつは僕みたいなヒップをしてのるかい?

prince.org を検索してみたら "The 'Does your man have an ass like mine?' performance" というスレッドが見つかりました。プリンスは少なくとも2001年頃になってもコンサートでこれに似た発言をすることがあったたらしいです (笑)


例によってプリンスのオリジナルバージョンは YouTube に見つからないのですが、2011年4月22日の L.A. でのコンサートで、アリシアがゲスト出演したパフォーマンスがアップロードされていました。

"どうしてもう電話をしてくれないの?" と歌うアリシアに対して、プリンスは1分44秒頃に "I think it's got something to do with Swizz Beatz (それってスウィズ・ビーツと関係あると思うよ)" と呟きます (笑) スウィズ・ビーツはアリシアの夫で、二人は2010年に結婚し、この時既に最初の子供もできています。


I keep your picture beside my bed
僕はまだ君の写真をベッドの脇に置いている
And I still remember everything U said
僕はまだ君が言ったことを全て覚えている
I always thought our love was so right, I guess I was wrong
僕らの恋愛は上手くいってるといつも思っていたけど、間違っていたみたい
I always thought U'd be by my side mama, now U're gone
君は傍にいてくれるといつも思っていたけど、君は去ってしまった

What I wanna know, baby
僕は知りたいんだ
If what we had was good
僕らは一緒にいてあんなに良かったのに
How come U don't call me anymore, yeah?
どうしてもう電話もしてくれないの?
Oh anymore

I still light the fire on a rainy night
僕は今でも雨が降る夜は火を灯す
I still like it better when U're holding me tight
今でも君がきつく抱いてくれるのが恋しい
Everybody said, everybody said that we should never part, ooh yeah
皆が言っていたよ - 僕らが別れるなんて絶対にダメだって
(I always said that we were kinda cute 2gether myself)
(僕だっていつも呟いていたんだ - 僕らはお似合いだよねって)
Tell me baby, baby, baby, why, why'd U wanna go and break my heart?
教えてよ、どうして僕の心を引き裂いてしまったの?
(Why'd U wanna do it, baby?)
(どうしてなのさ?)

All I wanna know, baby
僕は知りたいんだ
If what we had was good
僕らは一緒にいてあんなに良かったのに
How come U don't call me anymore, yeah?
どうしてもう電話もしてくれないの?

Why don't U call me girl?
なんで電話をくれないの?
Oh yeah, oh yeah

Sometimes it feels like I'm gonna die
時々死んでしまいたくなってしまうよ
If U don't call me mama, girl U gotta try
君が電話をくれないと - くれないとダメだよ
Down on my knees, beggin' U please, please! ... oh yeah
ひざまずいてお願いをするから…!
Why can't U call me sometime, baby?
ちょっとくらい電話してくれてもいいんじゃない?

It's just one lousy dime, baby
たったの10セントぽっちだよ?
Why can't U call me sometime?
ちょっとくらい電話してよ
Oh, no no
Why on earth can't U just pick up the phone, yeah?
どうして電話もとってくれないのさ?
U know I don't like 2 be alone
僕が独りぼっちが嫌いなのは知ってるでしょ
Why, why must U torture me baby?
どうして僕を苦しめるの?
Why U gotta treat me so bad?
どうしてこんなにつれない仕打ちをするの?