「4 The Tears In Your Eyes」は、イエス・キリストとその死について真摯に歌われた曲です。1985年のアフリカ飢餓救済プロジェクト USA for Africa のために書かれました。

ところで、このブログでこのような宗教色の強い曲を正面から取り上げるのはこれが初めてです。この点に何も触れずに話を進めるのも据わりが悪いので一言書いておきます。正直に言うと、私は全く信心深い人間ではありません。そして、信心深い人間になる予定もありません。

しかし、もしプリンスが無神論者だったとしたら、私はこのように熱心にプリンスを聴いてはいなかったと思います。別にこれは自分の中では矛盾でも不思議なことでもないのですが、言葉で理由を説明するのはちょっと難しいです。

それはそうとして、この曲には大きく異なる2つのバージョンがあります (片方のバージョンしか知らないと良さを理解できない可能性がある曲なので、両者が大きく異なることを強調しておきます)。 ひとつは USA For Africa のコンピレーションアルバム「We Are The World」に収録されたポップなバージョンで、もうひとつはアコースティックなビデオバージョンです。後者は、ビデオはなく音のみですが、1993年のベストアルバム「The Hits」のメインコンテンツと言っても過言ではない「The B-Sides」に収録されています。両者はそれぞれに特徴がありますが、曲の良さを知るために必聴なのはアコースティックバージョンの方です。さらに、アコースティックバージョンもビデオを見たことがあるかどうかで大きく印象が変わります。

そういえば、「プリンスの言葉」の制作に関わった方のひとりが、好きな曲としてこの「4 The Tears In Your Eyes」のアコースティックバージョンを挙げられていました (リンク)。プリンスの1曲を選ぶ場面でこれを挙げる方はかなり珍しいので「へぇ〜」と思ったのですが、確かにその気持ちも分かるような、様々な意味で特別な曲です。

アルバム「We Are The World」バージョン

こちらは少々奇妙に聴こえるバージョンです。「We Are The World」レコーディング不参加の後、殆ど日を置かずに、Purple Rain ツアーの合間を縫って1985年2月2日に録音されたものです。どう表現したものかちょっと悩むのですが、このバージョンはポップでない曲を無理やりポップにしたような感じで、妙に演奏を急いでおり、それぞれのパートで協調がとれないまま曲が終わってしまう感じがします。

これでは何だか褒めているようには読めないもしれません。ただ、再生機器にもよると思いますが、音量を上げてヘッドホンやイヤホンで聴くと「なんでこうしたの?」という疑問にも似た感情がグルグルします。

これでもまだ褒めているようには読めないので、別な言い方をします。私にとって、このバージョンはある意味「When Doves Cry」に似ています。「When Doves Cry」がベースラインを取り去り心地良く聴けないアレンジにしたことで逆に意味を増したように、この曲は本来ポップではないのに不自然にポップなアレンジにしたことで逆に重みが増していると私は感じます。

ただし、私がこのような感想を抱くのは、アコースティックバージョンを知った上でこのバージョンを聴いているからです。どちらか一方を選べと言われたら、やっぱり私も断然アコースティックバージョンの方を選びます。

アコースティック/ビデオバージョン

こちらがこの曲の本来あるべき姿です。平凡な言葉でしか形容できないのですが、「美しい」バージョンです。また、こちらのバージョンには強いインパクトのあるモノクロ映像のビデオがあり、これを見たことがあるかどうかでもおそらく印象はガラリと変わると思います。このビデオは1985年4月に録音され、同年7月に催された LIVE AID チャリティーイベントに送られました。プリンスは翌年の Parade でこれに似たスタイルを見せることになりますが、髪を切って後ろに整え、別人のような姿になったプリンスは、当時見た人にはかなりの驚きだったのではないかと思います。というか、今見ても私は驚きます。

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演奏が終わった後、プリンスは少し抑えた声で「Thank you」と言ってカメラをじっと真っ直ぐ見続けます。キャプチャだと伝わりづらいのですが、カメラを凝視して静止する所作にドキッとします。映像を知らずに音のみで聴くと別段どうということはないエンディングなのですが、初めて映像を見たときは、こんな表情で言っていたとは考えもしなかったので驚きました。

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事件のこともあり、半ば存在が無視され世間的には殆ど知られていない曲ですが、私は、このビデオはプリンスが残した最も美しい作品のひとつだと思います。


残念ながら YouTube で見つかるのは「We Are The World」バージョンのみです。こちらは少し奇妙に聴こえるのが特徴なので、それを前提に聴いてみてほしいです。

Long ago there was a man
遠い昔、ある男がいた
Changed stone 2 bread with one touch of his hand
その手で触れると石はパンに変わり
He made the blind see and the dumb understand
盲目に光を、唖者に理解を与えた
He died 4 the tears in your eyes, your eyes
彼は君の目に流れる涙のために死んだ

Many people came from all around
男の元には多くの人々が訪れた
2 hear this man preach with glorious sound
栄えある響きを持つ教えを聞くために
He spoke of man in harmony and love abound
彼は人類の調和と愛を説いた
He died 4 the tears in your eyes, your eyes
彼は君の目に流れる涙のために死んだ

He died 4 the tears in your eyes
彼は君の目に流れる涙のために死んだ

CHORUS:
4 the tears in your eyes if they're tears of sorrow
君の目に流れる涙が悲しみの涙ならば
4 cents may be all that they're worth
4セントほどの価値しかないかもしれない
4 the rising sun each day assures us
毎日昇る太陽が確信させてくれる
The meek shall inherit the earth, the earth
柔和な者が地球を継ぐのだと

Faith is a word we all should try
信念は我々皆が試すべき言葉
Describing the man who willingly died
自ら望んで死んだあの男を表す言葉
Believe that your hunger, sorrow, and fears
空腹も悲しみも恐れも
Is less than the tears in your eyes, your eyes
君の目を流れる涙よりも小さいのだと信じよう

Less than the tears in your eyes
君の目を流れる涙よりも小さいのだと

4 the tears in your eyes if they're tears of sorrow
君の目に流れる涙が悲しみの涙ならば
4 cents may be all that they're worth
4セントほどの価値しかないかもしれない
4 the rising sun each day assures us
毎日昇る太陽が確信させてくれる
The meek shall inherit the earth, the earth
柔和な者が地球を継ぐのだと