ウエイトトレーニングは「おもり(ウエイト)を動かす」ことから始まります。これはバーベルでもダンベルでもマシンでも自重でも変わりません。筋肉は漸進的過負荷に適応して発達します。筋肉を発達させるための重要なキーは、負荷となるおもりの重量を増やすことです。トレーニングでより重いおもりを動かせばその分強い刺激を得やすくなります。下手に重量を落としてしまうとトレーニングの強度が落ちてしまいます。

しかし、何をするにも重量ばかりを追求してトレーニングしていると、いつのまにかフォームを崩してしまうことがあります。動作範囲を狭くしたり動作角度を変えたり過度に反動を使ったりすることで、まやかしの高重量に溺れ、自己満足のためのトレーニングとなってしまうのです。

そのことに自分で気付き反省することもあるでしょうし、ジムのトレーナーから指摘されて渋々ということもあるでしょう。いずれにせよ矯正のために重量を落とすことになります。しかし、重量を落としたトレーニングは面白くありません。トレーナーがこれで良いといった重量は軽すぎて物足りないのです。

・・・ここまで読んで「あるある」となりましたでしょうか?おそらく多くの人は似たような経験があるのではないかと思います。こんなケースで、正しいのはあなたとトレーナーのどちらでしょうか?正しいのは物足りなくてつまらないというあなたの感覚でしょうか?それとも物足りない重量でもトレーナーに従ってトレーニングした方が効果的なのでしょうか?

まず最初に言っておきます。あなたの感覚は正しいです。負荷となるおもりを軽くしすぎたらトレーニング効果は落ちるに決まっています。少なくとも自分が丁度良いと思える重さまでおもりを増やさないと筋肉を発達させるのに効果的なトレーニングにはなりません。

しかし、あなたの物足りないという感覚が正しいとすると、それではトレーナーは間違っているということになるのでしょうか?



● トレーニングの2つの思考モード

で、ここからが重要なポイントです。もし上の説明に一片の曇りなく共感したら、あなたの思考モードのスイッチは「おもりを動かすモード」に入っている状態です。このモードでトレーニングをする人は、重量を落としてトレーニングすることを好みません。ビッグ3の技術練習のような目的ならともかく、筋肉を鍛える目的であえて物足りないと感じる重量でトレーニングするなど愚の骨頂ですから、そのような嗜好になるのは当然です。

また、このタイプのトレーニーは、アイソレートするトレーニングもあまり好まない傾向があります。アイソレーション種目は軽いおもりをチマチマ操作するつまらない種目と見なしがちです。

しかし、トレーニングにはもうひとつ別な思考モードがあります。それは「筋肉を動かすモード」です。これは「おもりを動かすモード」とは異なるモードであり、スイッチを切り替えないとしっかり働かせることはできません。想像はつくと思いますが、フォーカスする筋肉が限定されるため、扱うおもりの適切な重量はこちらモードの方が軽くなります。

モードのスイッチ切り替えをすることで、例えばアイソレーション種目は全く別な意識で行うことになります。「おもりを動かすモード」では、アイソレーション種目はおもりを動かすことで筋肉に刺激を与える種目となります。一方、「筋肉を動かすモード」ではこれが逆になり、アイソレーション種目は筋肉を動かしておもりを操作する種目となります。アイソレーション種目はつまらないと思いますか?確かに「おもりを動かすモード」で軽いおもりをチマチマ動かすのはつまらないかもしれません。しかし、「筋肉を動かすモード」に切り替えてもまだつまらないですか?筋肉を動かすのは本当につまらないですか?

また、コンパウンド種目でも「筋肉を動かすモード」への切り替えは可能です。というか説明の都合でアイソレーション種目の例を先に出しましたが、そもそも私自身はトレーニング種目をコンパウンドかアイソレーションかで区別して考えたりはしません。私にとってはここで挙げた2のモードがトレーニング種目を区別する基準になるので、コンパウンドかアイソレーションかというのは邪魔な区分方法でしかありません。



● 終わりに

冒頭で述べたように、ウエイトトレーニングは「おもりを動かす」ことから始まります。このため、トレーニングを始めた時点では「おもりを動かすモード」にスイッチが入った状態がデフォルトになっています。ターゲットの筋肉を意識してトレーニングを行うにしても、結局は「おもりを動かすモード」の中でエクササイズを行うことになります。

もうひとつのモードである「筋肉を動かすモード」は後から覚えなければいけないのですが、このモードの存在を教えてくれる人はあまり多くはいないように思います。「筋肉を動かすモード」の存在も切り替えスイッチも気付かないまま「おもりを動かすモード」のトレーニングしか知らないというのは、個人的にはトレーニングの一つの側面しか知らないといって言っていい程に勿体ないことだと思います。

筋肉を鍛えることを面白いと思うのであれば、きっと「筋肉を動かすモード」に切り替えてもトレーニングは面白いと感じるはずです。また、こちらのモードで行った方が効果的な種目がたくさんあることにも気付くと思います。今まではっきり意識したことがなかった人には、必要に応じてモードを切り替えることを是非意識してみてほしいです。