日常の何気ない瞬間にふと昔を思い出すことがあります。年をとるにつれ、思い出した昔がより遠く離れた昔になっていきます。それに気付くたび少し愕然とした思いがします。

少し前に書いたスクワットと骨格のプロポーションの記事で、説明が足りない部分があったので下の図を付け足しました。元の図は大きいので今回の内容に関連するところだけ切り抜いて貼ります。

sq-guy-wide

Excel で挿入できる図では、顔はスマイルしか選択肢がないので、ふと思い出した昔のキャッチコピーを使ってモデルの心情を補ったのですが、30台半ばより若い方はこのセリフの意味が分からないのではないかと思います。というか言葉が被っていないので年齢に関係なく意味が分からないのではという気もします。

元のセリフは、30年くらい前のナショナル冷蔵庫の CM で使われたキャッチコピーです。


最初のシーンは海。菅原文太が「日本人は刺身!」と荒々しく言い放ちます。

シーンを移して獲った鯛を冷蔵庫から取り出します。
パーシャルしといたんです。
一転して穏やかな口調が心に響きます。そして最後のキャッチコピー。
時代はパーシャル!
トレーニングに使えそうで使えません。



● フル/フルレンジ、ついでにアイソレーション

とりとめのない話を続けます。

トレーニングはフルレンジで行うのが基本だとよく言われます。「パーシャルレンジのトレーニングではパーシャルなゲインしか得られない。トレーニングはフルレンジで行ってこそ最大の効果を発揮する」というのがその主張です。興味を持って調べたことはありませんが、トレーニングの科学研究でも多分一貫してフルレンジの方がパーシャルレンジよりも優位な結果が出ているはずです。

しかしながら、私はフルレンジという言葉を聞くとどうにもモヤッとした気持ちになります。フルレンジという言葉の意味するところの曖昧さが気になってしまうのです。バーベルの動きや種目の拳上ルールを基準にするなら話は明確なのですが、筋肉にフォーカスしてトレーニングを行う場合、フルレンジとはどこからどこまでを指すのかがよく分からなくなってしまいます。実際のトレーニングに対してフルレンジという考え方を原則として当てはめようとすると例外が目立ってしまうのです。

例えば、トレーニング種目には本当にフルレンジで行うと危険な種目が多々あります。ボディビルフォームのベンチや一部の上腕二頭筋の種目など、筋肉がストレッチした状態で強いテンションが掛かる種目を高強度で行う場合、本当にフルレンジにすると筋断裂など深刻な怪我に繋がる可能性があります。

また、フルとは何をもってフルなのかというのも気になります。例えば、ボディビルダーが行うような、バーベルよりも大腿四頭筋にフォーカスして行うスクワットがフルスクワットと呼ばれることがあります。確かにそのフォームにおいてはフルにしゃがむことになり「非常に深い」スクワットなのですが、実際の深さはパラレルかそれ未満です。

そこで「パーシャルしといたんです」とサラリと言えたらいいなあと思ったんですけど、これはこれで何か違う気がします。やっぱりトレーニングではこのフレーズは使えません。

余談になりますが、さらについでに言うと、アイソレーションという言葉も私は好んでは使いません。どうやら私のトレーニングは傍から見るとものすごく「アイソレーション」なトレーニングに見えるらしいのですが、実際には私はトレーニングをするときに筋肉をアイソレートするという意識は持っていません。Isolation (分離、隔離)して他の筋肉を排除して・・・というのは私には違うという感覚があります。私はトレーニングにおいて、わざわざ対象を分離して他の部位を排除することに意識を払っているわけではありません。

ということで感覚的な話なのですが、フル/フルレンジ、アイソレート/アイソレーションという言葉は私にとってはトレーニングの意識を的確に表現する言葉ではなく、好んで使うことはありません。私が筋肉を鍛えるときの意識を言葉に当てはめるとしたら、対象の筋肉に対しては Focus (集中する)や Emphasize (強調する)という言葉の方がしっくりくるように思います。