デッドリフトはやり方についての情報を得るのが難しい種目です。デッドリフトをどのように行ったらよいか分からず悩んでいる人は多いと思います。私もデッドリフトは調べているとモヤッとした気分になることが多いです。

私のトレーニングはボディビル中心なのですが、最近はデッドリフトも少しばかり行っています。ここでは私がデッドリフトを覚えるにあたって「なんで誰もこれを最初に教えてくれなかったの?」と思ったことについて書こうと思います。具体的にはフォームの分類とフォームの基本についてです。ついでに自分の覚書きとしてキューについてもいくつか書きます。

● 前書き

私はデッドリフトのやり方を長い間知りませんでした。

トレーニングを始めた大学生の頃に時々デッドリフトはしていたのですが、私はパワー種目は人並みを遥かに下回る重量しか扱えなかったので、きちんとパワー種目を覚えようとしたことはありませんでした。また、当時はデッドリフトといえばスモウの一択で、ナロウスタンスは腰が強い外国人がやるものという認識だったので、腰が悪い私はナロウを試そうとは思いもしませんでした。ちなみに、一昔前はナロウスタンスで行うデッドリフトはヨーロピアンスタイルと呼ばれることもありました。「日本人は手を出してはいけない」というニュアンスが含まれた呼び方です。

30歳近くなってから現在のように継続してトレーニングをするようになりましたが、もともとパワー種目というのは自分がやるものではないと思っていたのと、そもそもスモウができる環境でトレーニングすることがあまりなくなってしまったので、デッドリフトはルーティンに入る種目ではありませんでした。

何度かナロウスタンスを試してみたりはしたのですが、60kgくらいの重量でもはっきりとやりづらいと感じる有様で、腰の悪い私にはナロウスタンスのデッドリフトは不可能なんだと思っていました。

そんなある日、見つけたのがこの記事です。
Dave Tate - The Dead Zone - The Top 10 Deadlifting Mistakes and How to Fix Them

この記事を読んで改めてナロウスタンスのデッドリフトを試してみたら、それまでやりづらいと思っていたのがスッと挙がるようになりました。デッドリフトが上手くできなかったのは、実は腰が悪いからではなくフォームを知らなかったせいだったのです。具体的に最も効いたのは、Dave 曰く「間違いの王様 (the king of all mistakes)」である「#10: Starting with the hips too low」です。

それまでの私は、腰を落として適切なレバレッジがかけられない姿勢を作ってそこから無理矢理レバレッジをかけようとして苦しい思いをしていました。それが腰をちょっと上げたらレバレッジが働いてすんなりできるようになりました。

一般的にいって、ナロウスタンスで腰を上げるのは好ましくないこと、もっと強く言えば禁忌されていることと見なされているように思います。実際、知り合いがある有名リフターのパーソナルを受けているのを横で見させてもらったことがあるのですが、その方はナロウでは腰を落としたフォームを習得させようとしていましたし、人からパワーリフティングのデッドリフトの DVD を借りたことがあるのですが、それもナロウスタンスでは腰を落としたフォームが基本という雰囲気の内容でした。

それはそれで一つの挙げ方なのかもしれませんが、それは通常腰を上げることに対して否定的なアドバイスとセットになってしまっています。
  • 腰を上げるのはルーマニアンデッドリフトになって良くないよ
  • 腰を上げるのはぶっこ抜きで万人に勧められる挙げ方ではないよ(個人的には「ぶっこ抜き」という言葉は嫌いです)
  • 海外には腰を上げているリフターもいるけど、あれは例外だからマネしちゃだめだよ
これらは理由になっているようで理由になっていないと私は感じます。

どうも世の中デッドリフトの話になるとお茶を濁されてしいまがちな風潮があります。そこで、私がデッドリフトで「何でこれを一番最初にはっきり言わないの?」と思うこととして、フォームの分類とフォームの基本について私が考えていることを書きます。

● デッドリフトのフォームの分類

デッドリフトのフォームは、大きく分けて以下の3種類があります。
パワーリフティングのコンベンショナルデッドリフト:単に「デッドリフト」といったら私にとってはこれのことです。個人的には最もテクニック的にシンプルなスタイルだと思います。

パワーリフティングのスモウデッドリフト:パワーの競技を行っている人は普通はこのフォームがメインになると思います。しかし、一般のジムではワイドスタンスでデッドができるようなプラットフォームがなく、このフォームではできない場合が多いと思います。私もその一人です。テクニック的にコンベンショナルデッドリフトと共通する部分も多いと思うのですが、私は基本的にこのフォームで行うことがないのでここでは話題にしません。

クリーンスタイルデッドリフト:一般に良いとされるフォームはこれに近いです。一般に良いとされるフォームが唯一の正しいフォームとして広まってしまっているため、拳上の仕方がかなり異なるパワーリフティングのデッドリフトは危険で一般人には勧められないフォームと誤解されてしまいがちです。実際は正しく行えばどちらも安全で良いフォームです。
デッドリフトはデッドリフト。正しいフォームのインストラクションに従えばそれでOKでしょう?何でわざわざフォームを分類する必要があるの?と思う人もいるかもしれません。

それが大ありです。

クリーンスタイルでは正しいことがコンベンショナルでは間違いだったりします。自分がどのフォームでデッドリフトをしているのか理解できていないと、フォームで誤った試行錯誤をしてしまったり、過去の私のようにやりづらいと感じながらデッドリフトをしたりすることになってしまいます。

● 個人差を語る前に、フォームの基本

デッドリフトの初心者向けの説明では、私にとって最も重要だと思うポイントがはっきり説明されておらず、モヤッとした気持ちになることが多いです。
人はそれぞれ身体的特徴が異なり、ある人にとって適切なフォームが必ずしも他の人にとっても適切なフォームになるとは限りません。万人に共通する正しいフォームなどなく、人によって最適なフォームは異なります。
それでいてこんな付け足しがあると、デッドリフトのことなんてもう関係なくなって何だかスマップの歌を聞いているような気分になってきます。確かにデッドリフトは身体的特徴が大きく影響する種目ですしスマップも全然悪くないのですが、今重要なのはそこではないのにと思います。

パワーリフティングのコンベンショナルとクリーンスタイルのデッドリフトにおいて、デッドリフトを習得する初心者がまず知っておくべき、個人的に最も重要だと思うポイントをまとめるとこうです。
コンベンショナル:適切なレバレッジがかかり、かつモーメントを適切に低減させた姿勢をとってバーを引き上げる

クリーンスタイル:レバレッジは特に意識せずにバーを握った状態で全身で立ち上がる
実のところ、これは重要なポイントというよりも私がデッドリフトをするときに意識することのほぼ全てといってもいいです。これ以外となると「今日の晩御飯は何にしようかしら」といったようにデッドリフトとは関係ないことになってしまうので、デッドリフトに関する限りこれが全てといっていいです。これをベースにセットアップ~プル~フィニッシュの動作で具体的にどうすれば良いかを考えます。

感覚的なニュアンスを上手く説明できているか分かりませんが、コンベンショナルとクリーンスタイルでは拳上の意識が大幅に変わります。レバレッジをかけてバーを「引き上げる」のと、レバレッジは特に意識せずに全身で「立ち上がる」という違いがあります。これによりパワーリフターのデッドリフトが一般には正しいとされるデッドリフトとはかけ離れたフォームに見える現象が引き起こされます。両者はそもそもやっていることが違うのです。
なるほど。でも私の身体的特徴は・・・
いいえ、それを踏まえて適切なレバレッジやモーメントがかかる姿勢をとってください。というかそもそもレバレッジとかモーメントって意識してからそう言っていますか?身体的特徴の個人差というのはフォームの基本をひっくり返すような話ではありません。まずは基本を押さえてください。身体的特徴の個人差というのは基本を押さえた後のフォームの調整で出てくる話です。

ちなみに、たいそうなことを言っていますが、私はクリーンスタイルのデッドリフトは興味本位で人生で1回か2回くらいしか行ったことがありません。私のトレーニング歴ではデッドリフト自体殆ど行ってこなかった種目だったのに加え、ウエイトリフティング系の種目は普通の環境では試せないものが多いし私のトレーニングルーティンにも合わないので基本行わないのです。良く考えたらフロントスクワットやハイバースクワットは割とよくやりますが。クリーンスタイルのデッドリフトはバーを落とさなければいい話なのでまあやろうと思えばできるのですが、試したときは「デッドリフトとはこういう挙げ方でもできるのか」と結構びっくりしました。

● デッドリフトのキュー

自分の覚書きです。私のデッドリフトはまだフォームが固まってるとは言い難いレベルなのですが、デッドリフトのキューや動作上守るべきポイントとして挙げられるものうち、実際の拳上時に私の頭をよぎるもののいくつかについて、自分の感触・意見として今現在どう思うかについてまとました。

<セットアップ
  • Keep your shoulders behind the bar / 肩をバーより後ろに保つ (リンクした Dave Tate の記事の #8 から)
    • 特に意識しません。物理的に無理だと思います。

  • Flex your triceps / 三頭筋を収縮させる
    • 二頭筋を使う癖は持っていないので強く意識はしませんが頭の片隅でちょっと意識します。

  • Keep your chest up / 胸を張る
    • 全く意識しません。自分のフォームでは胸は張ったらダメだと思います。

  • Keep your lower back arched / 下背部のアーチを保つ
    • 全く意識しません。下背部はニュートラルな状態で既に強い状態になっています。適切なレバレッジを働かせれば下背部への負荷は筋肉が受け止めるので腰は安全です。
<プル>
  • Pull the bar back / 後ろに倒れこむようにバーを引く (リンクした Dave Tate の記事の #5 から)
    • 昔はこの意識を持っていましたがやめました。コンベンショナルではこのキューは私にはしっくりきません。スモウならありだと思います。

  • Push the floor away from you / 床を押し出して突き放す
    • 上手くできているかは微妙ですが、これは割と強く意識します。

  • Lift your toes up / 足指を浮かす
    • もともとつま先に体重をかける癖はないのであえて意識することはありません。

ということで、私にとっては動作で意識するようなキューは殆どありません。基本的に、姿勢とバーの位置を決めてバーを引く、これだけです。