初心者向け記事その3です。ここではトレーニングメニューの組み立て方や各種目のやり方について書きます。

トレーニングメニューの組み立て方や各種目のやり方には、「これはこうするものですよ」的な、いわば定石のような作法が色々あって、初心者の段階では多かれ少なかれそういったものを正しいものだと受け入れつつトレーニングを覚えていくものだと思います。雑誌・インターネットからでも人からでも、あるトレーニングメニューや種目のやり方が紹介されるとき、大抵それは、効率的で優れている「One Of The Best」な方法だとして語られるので、雑誌に正しいと書いてあったから、誰それさんが正しいと言っていたからと無条件に受け入れてしまいやすいものです。本当の初心者で何をやったらいいのか取っ掛かりすらない状況では、こういったアドバイスを素直に取り入れていかないと何も始まりませんから、最初のうちはそれも仕方がありません。

しかし、トレーニングメニューの組み立て方や各種目のやり方については、私はそれよりも優先して取り入れるべき原則があると思っています。それが、記事タイトルの「Do what works for you」です。日本語にすると、「あなたにとって効果があることをやれ」みたいな意味です。

この「Do what works for you」というのは色んな文脈で使われるアドバイスなのですが、海外のフィットネス掲示板で見たとき私は最初戸惑いました。質問者は何が効果的なのか具体的なアドバイスが欲しくて質問しているのに、回答が「自分の好きなようにしろ」じゃ何も答えていないじゃないかと。

Q) マシンよりもフリーウェイトをやった方が良いですか?
Q) 種目の順番はコンパウンド→アイソレーションにした方が良いですか?
Q) コンパウンドとアイソレーションはどちらがより効果的ですか?
Q) レッグプレスよりもスクワットをやった方が良いですか?
Q) ラットプルダウンのグリップはナロウとワイドどちらがより効果的ですか?
Q) ダンベルベンチプレスやダンベルロウでフィニッシュ時にグリップを「クイッ」と回旋させた方が良いですか?

A) Do what works for you.
「あなたにとって効果がある方をやりなさい」

こういう「どちらがいいですか?」的な質問をする人は、心の奥で何か普遍的な正しい方法が存在していて他の方法は劣っているものだと信じていたりするので、そういう人にとっては曖昧とも受け取れるこのアドバイスは理解することができません。また、このアドバイスは、この人には説明しても話が通じないな、と思われるときに婉曲的に使うこともできるフレーズなので、場合によっては「そんなの好きにすれば」みたいな少し失礼なニュアンスになって、ますます無視されたりもします。

初心者のときに身に付けてしまった、雑誌やネットで正しいと書いてあることや筋トレの経験を積んだ人が正しいと言っていることを無条件に正しいものなんだと受け入れてしまう癖は、この「Do what works for you」のアドバイスを理解するための障壁になってしまいます。そして、いったん「正しい」と受け入れてしまったものを「いや実はそうでもない」と認識を引っくり返すことは結構難しいものです。

例を一つ挙げると、雑誌やネットなどでは、どのエクササイズが最も効果的にターゲットの筋肉を刺激するのか、筋電図 (EMG) を使って比較する実験が紹介されることがあります。実験では、ある種目をグリップやスタンス等をいろいろを変えて比較して、このバリエーションで行うのが最も刺激が強くなりベストだ、というように結論づけられます。科学的なアプローチなこともあって、「正しい」と広められがちなタイプの情報です。

しかし、私は、意外にもこのタイプの記事を読んでも釈然としないことが多いです。納得するよりも、むしろ「それはおかしい」と感じることの方が多いように思います。考えてみると、シンプルなトレーニング種目でも人によってやり方が違ったりしますし、そもそも世の中殆どの人が酷いフォームでトレーニングをしている中で、被験者がエクササイズをしているところを実際に見たわけでもないですし、実験結果を知って「それはおかしい」と感じても不自然なことではないように思います。

ともかく、私にも雑誌等に書いてあることを正しいと受け入れながらトレーニングをしてきた時代があったので、一見具体的に何をすれば良いのか分からない「Do what works for you」的なアドバイスは最初理解できませんでした。雑誌に書かれているような「これには何々するのがベストな方法だ」みたいなアドバイスと比べると無価値なものに感じられました。

それが、考えを転換して、自分の感覚でトレーニングを判断できるようになったのは、前の記事で書いたポイントを意識してトレーニングするようになってからです。記事その1記事その2では、トレーニングを行うときに気を付けるべきポイントとして、筋トレの種目は殆どが筋肉中心の種目であって、このタイプの種目では自分の感覚に従って筋肉を動かせばそれが一つの正しいフォームであることを書きました。正しいフォームに矯正するための一つのコツはネガティブを丁寧に行うことです。

最も信頼すべきは自分の感覚だということに気付いてからは、雑誌などから仕入れた「正しい」と受け入れてしまった情報は「いや実はそうでもない」と自然に認識が引っくり返りました。

初心者向けのトレーニングメニューの組み立て方や各種目のやり方、ということでしたが、具体的なサンプルメニューや種目のやり方については一切触れませんでした。そこは「Do what works for you (あなたにとって効果があることをやれ)」というのが私の個人的なアドバイスです。