●女性とタンパク質

まとめに行く前に、最後に男女差の影響について考えてみます。

持久アスリートに関しては、女性は男性よりもタンパク質の必要量が少なくなることを示唆する研究があります。これは、女性では男性と比較して運動中のタンパク質の利用が少ないという事実によるもので、そうなる理由としては、男女のホルモンレベルの違い、特にエストロゲンの効果が影響していると考えられています。興味深いことに、実際、エストロゲンを投与した男性では持久運動中の脂質の利用が増加し、炭水化物とタンパク質の利用が低下することが分かっています。また、性ホルモンがエネルギー利用に及ぼす効果に合致する形で、月経周期によって持久運動中のタンパク質利用が変化することを示す研究データもあります。

一方、筋力・パワートレーニングではどうかというと、エストロゲンには筋肉のダメージを抑制する効果があることから、女性では男性よりも筋肉痛の程度が弱くなる可能性があります。また、テストステロンレベルが男性よりも著しく低く (男性の10分の1程度)、女性は男性のように筋肉を増やすことができません。

また、レジスタンス運動中のエネルギー利用については、最近、女性は男性と比較して、グリコーゲンの利用が少なくより多くの脂質を利用することから、タンパク質については男性と同じ量を提案しつつ、エネルギー摂取の必要性は、男性と比較してやや脂質が増え炭水化物を減るであろうと提言する論文が発表されています。また関連して別の最近の研究では、月経周期は筋タンパク質合成やコラーゲン合成には影響を与えないという結果から、持久運動で見られる性ホルモンによるタンパク質利用の変化は、筋力系アスリートには当てはまらないことを示唆する論文があります。

具体的なタンパク質の必要量としては、女性の持久系アスリートでは、上述の運動中のタンパク質利用の違いから、男性の 80%、1.3-1.6g/kg 程度でよいのではないかと考えられます。

筋力・パワー系アスリートでは、男女で同じと提案する研究もありますが、テストステロンレベルの著しい違い、現実に女性は男性ほど筋肉を増やせないこと、さらに一般的に女性は男性よりも体脂肪率が高いことを考慮すると、男性の推奨量の下端の値、2.4-2.5g/kg 程度で十二分に必要量を満たすと考えられます。