BCAA には様々な役割がありますが、BCAA をサプリメントとして摂取する目的には次のようなものがあると思います。

- タンパク質合成の促進
- ダイエット中の筋肉損失の防止
- 免疫システム機能の向上
- 疲労軽減

筋肥大や筋肉維持については次のエントリに取って置くとして、今回は疲労軽減について考えてみます。

BCAA サプリメンテーションに期待される効果の一つに、持久スポーツなどでの中枢疲労 (Central Fatigue) の軽減があります。

これは、簡単に説明すると、中枢疲労発生のメカニズムとして、運動時に BCAA の血中濃度が低下することでトリプトファンの脳への供給が増大し、それがセロトニン濃度の上昇をもたらし、だるさややる気の低下につながる、という理論に基づいたものです。しかしながら、BCAA などサプリメンテーションによる中枢疲労の軽減効果は、研究では一貫した効果が示されていません (1)。

最近の研究で、中枢疲労は、様々な異なる物質が絡んだ複雑なものであることが分かってきています (2)。中枢疲労に寄与すると考えられている物質の一つにアンモニアがあります。

これが今回のトピックのポイントです。BCAA サプリメンテーションは、運動中のアンモニア濃度を上昇させます (3)。一方、面白いことに、タンパク質そのままのサプリメンテーションでは、アンモニアと結合するアミノ酸の働きにより、アンモニア濃度の上昇は起こりません (4)。

つまり、この点において、中枢疲労の軽減効果は BCAA よりもホエイの方が優れています。運動中のホエイのサプリメンテーションでは、BCAA を供給するとともに、疲労に寄与するアンモニア濃度の上昇を抑えられるので、メカニズムとしては BCAA よりもホエイの方が優れていると言えるわけです。

●参考

・Lyle McDonald, The Protein Book, p.145-146
http://bodyrecomposition.com
1. Meeusen R et al. Amino acids and the brain: do they play a role in "central fatigue"? Int J Sports Nutrition Exerc Metab (2007) 17:S37-S46
http://www.cababstractsplus.org/abstracts/Abstract.aspx?AcNo=20073196944
2. Meeusen R et al. Central fatigue: the serotonin hypothesis and beyond. Sports Med. (2006) 36(10):881-909
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17004850
3. MacLean DA et al. Stimulation of muscle ammonia production during exercise following branched-chain amino acid supplementation in humans J Physiol. (1996) 493(Pt 3):909-922
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/8799910
4. Colombani PC et al. Metabolic effects of a protein-supplemented carbohydrate drink in marathon runners. Int J Sport Nutr. 1999 Jun;9(2):181-201.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10362454