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主にトレーニングとダイエットのブログ。それとプリンス。

私の選ぶ曲の番外、もう1曲はジョニ・ミッチェルの「Both Sides, Now」です。この曲は、最初1967年に Judy Collins の歌う快活なバージョンがヒットし、後の1969年にジョニ自身も、よりしっとりしたアレンジにしてアルバム「Clouds」にて発表しました。Wikipedia を見ると膨大な数のカバーバージョンがリストされていますが、私が選ぶのはジョニ・ミッチェル本人のバージョンです。


私はジョニ・ミッチェルというアーティストの存在を、プリンスの「The Ballad Of Dorothy Parker」(1987年、Sign O' The Times 収録) から知りました。この曲にはジョニ・ミッチェルの「Help Me」という曲が登場します。

"Oh, my favorite song," she said
And it was Joni singing, "Help me, I think I'm falling (in love again)"
(Drring) The phone rang and she said
"Whoever's calling can't be as cute as U"
「あら、私の好きな歌だわ」 - 彼女は言った
ジョニ・ミッチェルが歌っていた - 「どうしよう、(また恋に) 落ちてしまう」
(リンリン) 電話が鳴ったけれども彼女は言った
「誰の電話だろうが、あなたほど素敵な人ということはありえないわ」

それで興味を持った私は、ジョニ・ミッチェルのベスト盤「Hits」と「Misses」を買って聴いてみました。ちなみに「Help Me」とは下にリンクした曲です。「The Ballad Of Dorothy Parker」はとても変わった曲なのに、この曲が違和感なくそのまんま歌われていて面白いです。

とにかく、このベスト盤を通して聴き、最も印象深く感じた曲は、私にとっては「Both Sides, Now」でした。その印象は今でも古びることがありません。個人的には、これがジョニ・ミッチェルが若い頃に書いた曲だというのが、また素敵なことだと思います。

また、非常に個人的な意見なのですが、この曲は「Purple Rain」みたいだな、とも思います。歌の内容も曲調も全然違いますが、どちらもヴァース毎に対象が移り変わっていきます。「Both Sides, Now」の第1ヴァースは雲のこと、第2ヴァースは恋のこと、そして第3ヴァースは人間関係や人生のことが歌われます。他方、「Purple Rain」の第1ヴァースは父のこと、第2ヴァースは恋人 (アポロニア) のこと、そして第3ヴァースはバンドメンバーのことが歌われます。

そんなことを思うにつけ、「Purple Rain」はつくづく凄まじくスケールの大きな曲だなと思います。歌の部分で既に高い熱量を持っているうえに、そも歌も構成の一部分でしかなく、むしろ歌が終わってからのギターソロや "Wooo-hoo-hoo-hoo" の方がメインみたいなところがあり、展開に懐の深さを感じます。

話が脱線しました。「Both Sides, Now」は、聴いて刺激を受けたり興奮したりする曲ではないかもしれませんが、そのぶんカゼインプロテインのようにじんわりゆっくり体に取り入れられる曲だと思います。(ウエイトトレーニングに興味がない人にはピンとこない喩えでアレですが、カゼインとは牛乳に含まれ、ゆっくり時間をかけて消化・吸収される特徴を持つタンパク質です。最近「A Case Of You/U」をよく聴いていて、「Both Sides, Now」はワインではないな・・・と思っているうちに、じゃあカゼインかな・・・となりました。)

参考リンク

  • Both Sides, Now (Wikipedia) - この曲ができた背景の説明があります。ジョニが飛行機の中で Saul Bellow の "Henderson the Rain King" を読んでいて、本の中に飛行機から雲を見下ろす描写があり、ジョニもまた同じく飛行機の窓から外を見ると、眼下には雲があった、というところからこの曲ができたのだそうです。

Rows and flows of angel hair
And ice cream castles in the air
And feather canyons everywhere
I've looked at clouds that way
幾筋にも流れる天使の髮の毛
空に浮かぶアイスクリームの城
至るところに佇む羽根の峡谷
私はそんなふうに雲をみてきた

But now they only block the sun
They rain and they snow on everyone
So many things I would have done
But clouds got in my way
だけど今、雲は太陽を遮るだけ
雨や雪を人々に降らせる
もっと沢山のことができたはずなのに
雲が私の邪魔をした

I've looked at clouds from both sides now
From up and down, and still somehow
It's cloud illusions I recall
I really don't know clouds at all
私は両方の側から雲を見てきた
上からも下からも、だけどそれでもなぜか
私に思い起こせるのは雲の幻想だけ
私は雲のことは本当に何も分からない

Moons and Junes and Ferris wheels
The dizzy dancing way you feel
As every fairy tale comes real
I've looked at love that way
お月さまに六月、それに観覧車
踊りをして目がくらむような気分
おとぎ話が現実になるかのよう
私はそんなふうに恋をみてきた

But now it's just another show
And you leave 'em laughing when you go
And if you care, don't let them know
Don't give yourself away
だけど今は、同じショウの繰り返し
人に笑われるままに舞台を移る
それを気にするなら、自分を晒さないで
自分を見せないこと

I've looked at love from both sides now
From give and take, and still somehow
It's love's illusions I recall
I really don't know love at all
私は両方の側から恋をみてきた
与える方も貰う方も、だけどそれでもなぜか
私に思い起こせるのは恋の幻想だけ
私は恋のことは本当に何も分からない

Tears and fears and feeling proud
To say "I love you" right out loud
Dreams and schemes and circus crowds
I've looked at life that way
涙と不安、そして誇りを持ち
愛してるとはっきり声にして言う
夢と計画、そしてサーカスの観衆
私はそんなふうに人生をみてきた

But now old friends they're acting strange
And they shake their heads
And they say that I've changed
Well something's lost but something's gained
In living every day
だけど今では古い友人は変に振る舞う
頭を振って私は変わったと言う
失うものもあれば得るものもある
日々生きていく中で

I've looked at life from both sides now
From win and lose and still somehow
It's life's illusions I recall
I really don't know life at all
私は両方の側から人生をみてきた
勝つ方も負ける方も、だけどそれでもなぜか
私に思い起こせるのは人生の幻想だけ
私は人生のことは本当に何も分からない

I've looked at life from both sides now
From up and down, and still somehow
It's life's illusions I recall
I really don't know life at all
私は両方の側から人生をみてきた
上からも下からも、だけどそれでもなぜか
私に思い起こせるのは人生の幻想だけ
私は人生のことは本当に何も分からない

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プリンスの記事を小休止して、久しぶりにトレーニングのことでも書こうかと思ったのですが、上手く文章がまとまらなかったので、私の選ぶ曲の番外として、Steely Dan の「Deacon Blues」について書くことにします。この曲は、名盤として知られる Steely Dan のアルバム「Aja」(1977年) に収録されています。プリンス以外のアーティストまで取り上げて、一体このブログはどうなるんだと思うかもしれませんが、この曲とあともう1曲だけ、特別に番外として取り上げます。

私はこの曲の良さを人に上手く説明できたことがないのですが、まずこれだけは最初に言っておきます。
Steely Dan の「Deacon Blues」は、とても素晴らしい曲です。

この曲は歌詞ありきで成り立っているのですが、その良さを説明するのはちょっと難しいです。コーラスの前半は「サックスを吹き、一晩中酒を飲んで、ハンドルを握って自らの命を断つ」なので、そこから話を始めてしまうと、「なんでそんなバカなことをしてるの?」とか「飲酒運転なんてダメだよ!」という印象が先に立ってしまい、バツが悪いです。コーラスの後半は後半で、日本には馴染みのないアメリカのカレッジフットボールの比喩が使われています。そもそも、どんな説明をしようとも、これは響く人にしか響かないタイプの曲だという気もするのですが、とりあえずもう一回言っておきます。これは本当に素晴らしい曲です。

また、この曲は、一言では「敗者の美学」のようなイメージで語られることが多いです。確かにそれはその通りなのですが、個人的にはそれだけでは言葉足らずのように感じます。


Steely Dan のドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーは、2015年の The Wall Street Journal のインタビューにて、この曲がどのようにして出来上がったかについて答えています。ドナルド・フェイゲンは、この曲のストーリーは次のアイデアから始まったと言います。

Donald Fagen: If a college football team like the University of Alabama could have a grandiose name like the “Crimson Tide,” the nerds and losers should be entitled to a grandiose name as well.
アラバマ大学のような強豪カレッジフットボールチームが "クリムゾン・タイド" なんて大仰な名前で呼ばれるのならば、ナードやルーザー達にだって大仰な名前をもらう資格があってもいいだろう。

従来、タイトルの "Deacon Blues" の由来には諸説ありました。例えば "Deacon" という言葉は当時記録的な連敗を喫していたウェイク・フォレスト大学 (通称 "Demon Deacons") から取られた、といった説がありましたが、このインタビューでは本当の由来が明かされています。実際には、"Deacon" とは1960年代から70年代初期にかけて NFL ラインマンとして活躍した、Deacon Jones という人物から取ったのだそうです。それも、二人は熱心なフットボールファンというわけではなく、単に "Crimson" との対比で語感が良かったから "Deacon" になったのだそうです。

個人的に、これはとても興味深い情報だと思いました。"Deacon" とは、元々は敗者から取られた言葉ではなかったのです。ウォルター・ベッカーは、この曲の主人公は "triple-L loser" だ、とも言っていますが、この曲の完成度を前にすると、その発言を素直に受け取るのは何となく拒否したい気持ちになります。

この曲のストーリーは、曲の進行と共に展開していきます。第1ヴァースでは、サックス奏者として生きていこうとする男の、過去の回想と夢へと踏み出す決意が歌われます。第2ヴァースでは、この男の選択に後戻りの道はないことが示唆されます。そしてサックスソロを挟み、第3ヴァースで、男は遂にステージへと向かいます。最後のコーラスの後は、曲はフェイドアウトして終わります。

最終的にこの男が成功を成し遂げたかどうかは、曲の中では明らかにされません。コーラスでは破滅と敗北のイメージが描写されるのみです。また、最後のフェイドアウトは意図的なものなのだそうです。夜の中に夢が消えていくようなイメージを作り出すためにそうしたのだとドナルド・フェイゲンは語っています。

参考リンク


この曲の美しさを高めている要素として、破滅的な描写が挙げられることは間違いありません。この曲を考えるとき、私は隆慶一郎の小説「一夢庵風流記」にある、次のやり取りを思い出します。これは秀吉の朝鮮出兵の下準備として、主人公の前田慶次郎が朝鮮を訪れ、外交僧として現地に滞在する元蘇という僧侶と会う場面です。ちなみにこの小説は、私ぐらいの世代では有名な漫画「花の慶次」の原作となった小説です。少年漫画で朝鮮出兵の話はマズいということで、漫画では舞台が琉球に変更されており、このやり取りがあるのは小説のみです。

「この国にはいつお越しかな」
当りさわりのない問いから元蘇は始めた。
「まだ半月にもなりません」
慶次郎の返答はのんびりしたものだった
「何しに、この時に……?」
「観るためです、この国を」
「で、どう見られた」
禅僧らしい鋭い切返しである。
「滅びの美しさに酔っている国と観ました」
元蘇はまばたきもせず慶次郎を見つめた。何故とは訊かない。
「滅びることは美しいかな」
「滅びたものは美しいが、滅びるものは無残でしょう」

また、アメリカの有名 TV ドラマ「Breaking Bad」には、主人公のウォルター・ホワイトが、息子に Steely Dan というバンドが如何に凄いかを説く場面があります。些細なきっかけから麻薬抗争の世界に足を踏み入れ、自ら破滅への道を突き進みながら、しかし同時に凄まじい能力を発揮し、自分の人生に満足して最期を迎えるキャラクターが言う台詞であるというのが、何とも象徴的だと思います。

ウォルター: Steely Dan. In terms of pure musicianship, I would put them up against any current band you can name.
純粋な音楽性でいえば、Steely Dan は今どきのどんなバンドにも負けないだろうね。

息子: You wouldn't know any current bands.
父さんは今どきのバンドなんて誰も知らないじゃないか。


この曲に関して最後にひとつ。この曲の第3ヴァースには、次の印象的な歌詞があります。

I cried when I wrote this song
Sue me if I play too long
この曲を書いた時、俺は泣いてしまったんだ
もし演奏が長すぎたら訴えてくれ

何となくプリンスの「1999」にある、次の歌詞を連想しないでしょうか。「1999」を書いたとき、プリンスの頭の片隅にはこの曲があったのかもしれない、と個人的には思ったりします。

I was dreaming when I wrote this
So sue me if I go 2 fast
この曲を書いた時、俺は夢を見ていたんだ
もし演奏が速すぎたら訴えてくれ


先日、ウォルター・ベッカーの訃報がありました。私は Steely Dan のコンサートには、2000年の国際フォーラム2日間と、記憶が朧げなのですが武道館でも観ているはずなので1996年の日本武道館にも1回行ったことがあります。当時はまだダフ屋というものが存在する時代で、国際フォーラムの2日目は、チケットを持たずに一人で会場に行きました。コンサートが始まって値が落ちたチケットを手に入れたのですが、運良くそれが前から3番目の席でした。間近で見るウォルター・ベッカーは、スーツに白いスニーカーの出で立ちだったように覚えています。そのちぐはぐな着こなしが、妙にサマになっていたという印象が残っています。


[Verse 1]
This is the day of the expanding man
That shape is my shade
There where I used to stand
今日は未来への希望に膨らむ男の日
あの影は過去に立っていた俺の姿

It seems like only yesterday
I gazed through the glass
At ramblers, wild gamblers
That's all in the past
まるでつい昨日のように感じる
グラス越しに見える喧騒やギャンブラー達
それも全ては過去のこと

You call me a fool
You say it's a crazy scheme
This one's for real
I already bought the dream
人は俺を愚か者だと言う
無謀な計画を立てたものだと
だがこれは本物だ
俺はもうこの夢に乗ったのさ

So useless to ask me why
Throw a kiss and say goodbye
I'll make it this time
I'm ready to cross that fine line
理由を聞くなんて愚かなことだね
投げキッスをしてさよならさ
俺は今度はやってみせる
俺は一線を越えると決めたのさ

[Chorus]
Learn to work the saxophone
I play just what I feel
Drink Scotch whiskey all night long
And die behind the wheel
サックスの演奏をモノにして
心のおもむくままに吹き操る
スコッチウイスキーを一晩中飲み
そしてハンドルを握って死ぬ

They got a name for the winners in the world
I want a name when I lose
They call Alabama the Crimson Tide
Call me Deacon Blues
世の中では勝者に称号が与えられる
だが俺は敗北した時に名前が欲しい
アラバマ大を「クリムゾン・タイド」と呼ぶならば
俺のことは「ディーコン・ブルース」と呼んでくれ

[Verse 2]
My back to the wall, a victim of laughing chance
This is for me, the essence of true romance
Sharing the things we know and love
With those of my kind
Libations, sensations, that stagger the mind
壁を背にした、あざ笑う運命の生け贄
だがこれは俺にとって真のロマンスのエッセンスさ
同類の奴等と知識や嗜好を分かち合う
献杯、高ぶる感情、そして心のよろめき

I crawl like a viper
Through these suburban streets
Make love to these women
Languid and bittersweet
街の通りをヘビのように這い
女たちと愛を交わす
物憂くほろ苦い思い

I rise when the sun goes down
Cover every game in town
A world of my own
I'll make it my home sweet home
陽が落ちては動き出し
街のあらゆる機会を探る
これが俺の世界
俺はここをスイートホームにするのさ

[Chorus]
Learn to work the saxophone
I play just what I feel
Drink Scotch whiskey all night long
And die behind the wheel
サックスの演奏をモノにして
心のおもむくままに吹き操る
スコッチウイスキーを一晩中飲み
そしてハンドルを握って死ぬ

They got a name for the winners in the world
I want a name when I lose
They call Alabama the Crimson Tide
Call me Deacon Blues
世の中では勝者に称号が与えられる
だが俺は敗北した時に名前が欲しい
アラバマ大を「クリムゾン・タイド」と呼ぶならば
俺のことは「ディーコン・ブルース」と呼んでくれ

[Verse 3]
This is the night of the expanding man
I take one last drag
As I approach the stand
今夜は未来への希望に膨らむ男の夜
俺は最後の一服をくゆらせ
ステージへと向かう

I cried when I wrote this song
Sue me if I play too long
This brother is free
I'll be what I want to be
この曲を書いた時、俺は泣いてしまったんだ
もし演奏が長すぎたら訴えてくれ
この男は自由の身
俺はなりたい自分になってみせるさ

[Chorus]
Learn to work the saxophone
I play just what I feel
Drink Scotch whiskey all night long
And die behind the wheel
サックスの演奏をモノにして
心のおもむくままに吹き操る
スコッチウイスキーを一晩中飲み
そしてハンドルを握って死ぬ

They got a name for the winners in the world
I want a name when I lose
They call Alabama the Crimson Tide
Call me Deacon Blues
世の中では勝者に称号が与えられる
だが俺は敗北した時に名前が欲しい
アラバマ大を「クリムゾン・タイド」と呼ぶならば
俺のことは「ディーコン・ブルース」と呼んでくれ

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Bob George」を取り上げたらこの曲も取り上げます。「Sexy M.F.」は、1992年のアルバム「Love Symbol」に収録されている曲です。タイトルの "MF" とは、前回の「Bob George」で何度も発せられているあの言葉のことです。そのままではラジオプレイなどの検閲に引っ掛かるため、該当部分がプリンスのシャウトで置き換えられているクリーン・バージョンや、「Sexy Mutha」という寸止めバージョンもあったりします。

1992年当時、この曲は、その大胆なタイトルが話題になりました。雑誌では、"MF" とは最大の禁忌・侮蔑語であると紹介され、プリンスは非常にマズいタブーを破ったかのように騒がれた記憶があります。そういえば、昨年発売された現代思想の特集号でも、"MF" は単に「最大の忌避語」とだけ説明している記事があり、評論家とは未だにそんなことしか言えない人種なのか、と呆れました。とにかく、この曲がリリースされた当時の私は雑誌に書かれていることをそのまま鵜呑みにするしかありませんでしたが、曲を聴く限り、これが英語における最大の侮蔑表現だと言われても、どうにも腑に落ちない気持ちがありました。

今さら敢えて言うまでもないことですが、この曲での "MF" とは、素敵な女性に対する敬服や賛辞が込められた表現であり、侮蔑表現とは反対の意味合いを持って使われています。英語のスラングでは、"bad" が "very good" の意味になることがあるように、本来は悪い意味を持つ言葉が、逆にものすごく良い人・物を指して使われることがあります。この曲の "MF" も、それと同じように元の意味とは反対の意味で使われています。もちろんこれは非常によろしくない言葉であり、普通は使用を避けるべきですが、場合によっては思わず口元が緩んでしまうような面白い響きがあります。ちなみに、"Sexy M.F." は、NPG バンドメンバーでベースのリーヴァイ (Levi Seacer, Jr.) が面白がって言った言葉で、そこからこの曲が作られました。曲中のコーラスを歌っているのもリーヴァイらしいです。

また、"MF" という言葉は (それにしても前回の記事といい、何度この言葉が登場しているのでしょう…苦笑)、この曲でもそうであるように、基本的には文字通りの含みは持たない言葉です。ちなみに、コメディ映画の「Horrible Bosses / モンスター上司」では、それをネタに、この言葉がそのまま文字通りの意味で使われています。この映画では、それぞれが酷い上司に苦しめられている3人の人物が主人公として登場します。その3人が結束して、殺し屋コンサルタントに接触するシーンがあるのですが、こともあろうか、その殺し屋コンサルタントの名前が "MF ジョーンズ" なのです。

Nick: Are you a businessman?
あなたは "ビシネス" をやってるんだね?

'MF' Jones: Yeah. Motherfxxker Jones.
ああ。オレの名はMF・ジョーンズだ。

Dale: Your first name is "Motherfxxker"?
あなたのファーストネームは "MF"?

(略)

Dale: Cool name. Yeah. Is that, like, on your birth certificate, too?
イカした名前だね。それは、その、出生証明書にもそう記載されているのかな?

(略)

Nick: How'd you get the nickname Motherfxxker?
どうして "MF" なんて通り名で呼ばれるようになったんだい?

'MF' Jones: When I was a kid, I snuck into my mother's bedroom. She was sleeping on the bed. She had been drinking all night. Her skin was glistening. And then I snuck up behind her, and then I slipped my fingers... into her purse.
オレはガキの頃、母さんの寝室に忍び込んだんだ。母さんはベッドで眠っていた。母さんは一晩中酒を飲んでいたんだ。母さんの肌は艶めかしく光っていた。オレは母さんの背後に忍び寄った。そして、オレは指を滑り込ませたんだ・・・母さんの・・・財布に。

Kurt: Purse? He said "purse"
財布? 奴は "財布" って言ったよな。

'MF' Jones: I took her money, the whole week's pay. I really fucked her over. And that's how I got the name Motherfxxker Jones.
オレは母さんのカネを盗ったんだ。それは一週間分の給料だった。オレは母さんを本当に酷い目に合わせたんだ (fxxked over)。それからオレはMF・ジョーンズと呼ばれるようになったのさ。

Kurt: You know, they should call you Motherfxxker-Over Jones to avoid confusion, right?
それならば、誤解を避けるためにMF・オーバー・ジョーンズと呼ぶべきじゃないのかな?

'MF' Jones: What's the confusion?
(凄んで) それはどういう意味だ?


この曲の歌詞に目を向けると、タイトルから連想される内容とは裏腹に、プリンスは安直に女性に手を出すことはせず、肉体関係を持つ前に心で繋がることの大切さをとうとうと語ります。この曲を改めて聴きながら、マイテの本「The Most Beautiful」の Chapter 4 の最後の方に、素敵なエピソードがあったのを思い出しました。

それは1990年の12月、マイテが初めてミネアポリスに訪れたときのことです。マイテは衣装を着替え、初めてプリンスの目の前でダンスを踊ってみせます。それまでの人生で自分のみを意識して踊ってきたマイテは、このとき、初めて人のために踊るという気持ちになり、プリンスのために懸命に踊ります。踊りを終えたマイテは、プリンスの姿勢が微妙に変わったことに気付きます。ソファに座っていたプリンスは、いつのまにか、枕を膝の上に抱えていました。そしてマイテに "You should go change. / 着替えておいで" と言います。なぜプリンスは枕を抱えなければならなかったのか…、これ以上の説明はされませんが、マイテはちゃんと気付いていた、という心温まるエピソードです。


余談ですが、この曲は Diamonds And Pearls ツアーのセットリストにも入れられ、新曲として披露されます。また、コンサートではさらに「Thieves In The Temple」の途中にも「It」と共にこの曲の歌詞が一部挿入され、"U seem perplexed I haven't taken u yet..." から始まるヴァースが丸々歌われたりもします。例えば1992年6月24日のロンドンでのコンサートを聴くと、"I got wet dreams comin' out of my ears / I get hard if the wind blows your cologne near me / (but) Baby I can take it!" の歌い方が、「何でこの曲にこの歌詞を挿入するの?」というギャップと相まって馬鹿馬鹿しくて面白いです。この日のコンサートを収録したブートには、Moonraker #098-099: Thunder や、Sabotage #133-134: Theives In The Temple があります。


ミュージックビデオでは、プリンスが女性を別荘に連れ込むシーンがあります。最初、プリンスは女性の手をグイグイ引っ張って歩くのですが、途中で立場が逆になり、女性から壁ドンされてしまいます (笑)。曲は寸劇に挟まれて、1分40秒頃から始まります。


In a word or 2, it's U I wanna do
No, not cha body, your mind U fool
一言で言うならつまり - 僕がしたいのは君なんだ
バカだな肉体じゃなくて心のことさ

Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker

We're all alone in a villa on the Riviera
That's in France on the south side in case U cared
僕らはリヴィエラの別荘で二人きり
場所が気になるというのなら、それはフランスの南部さ

Out of all yo' friends I wanna be the closest
That's why I tell U things so U'll be the mostest
When it comes 2 life, 2 be this man's wife
君の友達全員の中で、僕はいちばん親密な関係になりたい
だから君に話をするんだ - 君が最高の存在になってくれるように
人生でいうならば、僕の妻になってくれるように

U got 2 be well educated on the subject of fights
I mean prevention of
In other words, its R.E.A.L meaning of this thing called love
Are U up on this?
If so, then U can get up off a hug and a kiss
そして争いの分野において深く学んでほしい
その、争いの阻止という分野においてね
言い換えるなら、それは愛と呼ばれるものの真実の意味さ
分かるかい?
ならばハグとキスをして起き上がろう

Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker
Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker

We need 2 talk about things, tell me what cha do
Tell me what cha eat, I might cook 4 u
僕らはもっと色んな話をしなくちゃ - 君の好きなことを教えてよ
君の好きな食べ物を教えてよ - 料理を作ってあげようか?

See it really don't matter cuz it's all about me and u
Ain't no one else around
I'm even with the blindfold, gagged and bound
I don't mind
僕と君の間なんだから構わないさ
他には誰もいないのだから
僕は目隠しや猿ぐつわをされたり縛られたって構わない

See, this ain't about sex
It's all about love being in charge of this life and the next
これはセックスの話じゃないんだ
つまりはこの人生の責任を愛に任せるということ - そして来世のもね

Why all the cosmic talk?
I just want U smarter than I'll ever be
When we take that walk
なぜこんな大袈裟な話をするのかって?
君に僕よりもずっと賢くなってほしいだけさ
僕らが式を挙げる時までにね

Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker
Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker

Horns stand please...
I like it, I like it

U seem perplexed I haven't taken U yet
Can't U see I'm harder than a man can get
I got wet dreams comin' out of my ears
I get hard if the wind blows your cologne near me
僕が抑えていることに戸惑っているみたいだね
だけど僕はどんな男よりも固くなることが出来るんだ
淫らな夢が耳から漏れ出してしまうよ
君のコロンが風で僕の元に運ばれてくるだけで固くなるのさ

But I can take it, cuz I want the whole 9
This ain't about the body, it's about the mind
だけど我慢するよ、僕は全てが欲しいから
肉体のことじゃなくて、心のことさ

Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker
Come here baby, yeah
U sexy motherfxxker

Tommy Barbarella in the house
Scrub the dishes

Come here Tommy, yeah
Sexy, sexy, sexy, sexy

Levi, Levi, fly
I like it, I like it

Sexy motherfxxker shakin' that ass, shakin' that ass, shakin' that ass
Sexy motherfxxker shakin' that ass, shakin' that ass, shakin' that ass

{Tony M のラップ}
Guard your folks who date your daughter
The sexy motherfxxker's so fine I could drink her bathwater
A long-legged 5-foot-8 packing an ass as tight as a grape
I want to spit some game but I said to myself
Hmmm, just conversate
Cuz I'm usually quite the calm one
You never found me out prowling, boy
I'm just havin' fun
But I had 2 change my state of mind for this behind
I bet that if you threw that ass into the air it would turn into sunshine
娘と付き合う奴らに注意を払え
セクシー MF はとびきり素敵だ - オレは彼女のお風呂の水だって飲める
スタイル抜群の 173cm に葡萄の粒のように詰まったヒップ
早く口説きたいところだがオレは一呼吸を置く
フム、まずは会話といこうか
オレは落ち着いた男だから
ガツガツしてるところなんて見せたことがないのさ
オレは余裕のある男だからね
だけどこの娘には心の持ちようを変えざるをえないな
キミがヒップを放り上げたら、それはきっと輝く太陽に変わるだろうね

Sexy motherfxxker shakin' that ass, shakin' that ass, shakin' that ass
Sexy motherfxxker shakin' that ass, shakin' that ass, shakin' that ass

U sexy motherfxxker
Sexy motherfxxker
Sexy motherfxxker

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