OneH

主にトレーニングとダイエットのブログ。それとプリンス。

You know, I wrote this while I was looking in the mirror, right?
知ってるよね? 僕は鏡に映る自分を見ながらこの曲を書いたんだよ。

プリンスは弾き語りでこの曲を歌いながらこのように言いました。「Cream」は1991年のアルバム「Diamonds And Pearls」からの全米 No.1 ヒット曲です。ちなみにこの発言は下にリンクした動画で14分10秒頃にしています。動画は2004年「Musicology」の時期のものです。

個人的に、上に引用したプリンスの発言にはなかなか考えさせられます。というのも「Cream」という曲は、単純な曲の意味を越えて、まさに自分を映し出す鏡のようだと私には感じられるのです。この曲、引いてはプリンスという存在を突き出されたとき、それをひとつの芸術が形を成したものであると受け止め、生きることへの讃歌を感じ取るのか、それとも批評家のようにシニカルな態度で冷笑するのか。これは自分が心の底でどちら側の人間なのかを試すような曲だと思います。もしこの曲を語る言葉に棘や毒が見え隠れするとしたら、それはこの曲ではなく、その人自身の内面を映し出しているのだろうと私は感じます。

と、初めてこの曲を聴く人には、私がなぜこんなことを言っているのかと思うかもしれません。知らない人のために補足をすると、実はこの曲のタイトルは婉曲的にある別なモノを指しているようにも受け取れるのです。ピンと来ない方もいるかもしれませんが、それをはっきり言わないことがこの曲の味わいを深めている面もあるので、私もぼかした説明に留めておきます。とにかく、この曲が別な意味で解釈可能なことから、それをことさら強調してこれを下賤な曲だと切って捨てる人も中にはいるでしょう。しかし私は、このことも含めて、いや、だからこそこの曲は素晴らしいと思います。考えてもみてください。こういう含みを持たせつつ、こんなにチャーミングに仕立て上げられた人生讃歌って他にあるでしょうか? この曲は紛れもなくプリンスの傑作のひとつであり、同時にプリンスが唯一無二のアーティストであることを改めて思い知らしめる曲だと思います。

ちなみに、私はこの曲が下賤だとは全く思いません。それどころか逆に、「上品なプリンスの曲は?」と訊かれたら、私は真っ先にこの曲を思い浮かべます。なんだか感覚が変だと思われそうですが、この曲のミュージックビデオを見てみてください。白いシャツにお洒落なベストとネクタイを着こなすプリンスは、凄く上品で紳士的だと思いませんか?


この曲がリリースされた当時中学生だった私は、リアルタイムではなぜこの曲がヒットしたのか理解に苦しんだものでした。しかし、大人になり、年月を重ねてじわじわとこの曲の素晴らしさを実感できるようになりました。"Filthy cute" なんてどう日本語に訳せば良いのか分かりませんが、この曲の歌詞は本当に最高だと思います。

U are fine (Fine)
U're filthy cute and, baby, U know it
君はイかしてる - 君はとびっきり魅力的で、自分でも知ってるはずさ

Make the rules (Rules)
Then break 'em all cuz U are the best
ルールを作りなよ、そして全部破っちゃえ、だって君は最高なんだから

この曲のミュージックビデオには、最初の寸劇で女性がセクシーな口調でクリームソーダを頼むシーンがあります。この台詞のためか、私はこの曲を聴くときクリームソーダを思い浮かべます。底に沈めようとしても、"クリーム - シュ・ブギー・バップ♪" と反発しててっぺんに浮かんでくるアイスクリーム。コーラスの歌詞とイメージがぴったりだと思います。

この曲の音楽の方は、ブギーという言葉も出てきますし、下地は古いアメリカの音楽といった感じがします。しかし下地が古いからといって、この曲が古臭いかと言われれば、そうは感じません。リリースから25年以上経った今聴くと、リリース当時よりもむしろ音は新しさを増しているのではないかとさえ感じます。コーラスのときに鳴る前作「Graffiti Bridge」の「Shake!」みたいな音もとても良いです。1986年の「Kiss」にも言えることですが、「Cream」もまた、古い音楽をルーツとしながらも時代を超越した特別な場所に存在する楽曲だと思います。こういった時代の超越感というのもまたプリンスの音楽の特徴のひとつであり、プリンスの音楽の凄いところだと思います。


This is it
It's time 4 U 2 go 2 the wire
U will hit
Cuz U got the burnin' desire
It's your time (Time)
U got the horn so why don't U blow it
U are fine (Fine)
U're filthy cute and, baby, U know it
さあいよいよだ - 遂に達する時が来たんだ
上手く行くさ - 君には燃え上がる欲望があるんだから
君の時間だ - ホーンがあるなら吹き鳴らさなくっちゃ
君はイかしてる - 君はとびっきり魅力的で、自分でも知ってるはずさ

Chorus:
Cream - Get on top
Cream - U will cop
Cream - Don't U stop
Cream - Sh-boogie bop
クリーム - てっぺんに登って
クリーム - 掴み取るんだ
クリーム - やめたりしないで
クリーム - シュ・ブギー・バップ

U're so good
Baby, there ain't nobody better (Ain't nobody better)
So U should
Never ever go by the letter (Never ever)
U're so cool (Cool)
Everything U do is success (Ooh)
Make the rules (Rules)
Then break 'em all cuz U are the best
Yes U are
君はとてもイイよ - 誰だって君には敵いやしない
だから絶対、指図に大人しく従っちゃだめ
君はイカしてる - やることなすこと全てが成功
ルールを作りなよ、そして全部破っちゃえ、だって君は最高なんだから

Chorus:
Cream - Get on top
Cream - U will cop
Cream - Don't U stop
Cream - Sh-boogie bop
クリーム - てっぺんに登って
クリーム - 掴み取るんだ
クリーム - やめたりしないで
クリーム - シュ・ブギー・バップ

Look up in the air, it's your guitar
見上げてごらんよ、君のギターだ

Do your dance
Why should U wait any longer?
Take your chance
It could only make U stronger
It's your time (It's your time)
U got the horn so why don't U blow it (Go on and blow it)
U're so fine (U're so fine)
U're filthy cute and, baby, U know it, U know it (U know it, U know it)
自分のダンスを踊るんだ - これ以上何を待つ必要があるんだい?
とにかくやってみるのさ - それで君は強くなるんだから
君の時間だ - ホーンがあるなら吹き鳴らさなくっちゃ
君はイかしてる - 君はとびっきり魅力的で、自分でも知ってるはずさ

(Come on)
Cream - Get on top
Cream - U will cop
Cream - Don't U ever stop
Cream - Sh-boogie bop
クリーム - てっぺんに登って
クリーム - 掴み取るんだ
クリーム - やめたりしないで
クリーム - シュ・ブギー・バップ

Cream {x2}
Cream - Sh-boogie bop
Cream {x2}
Right there
Cream - Don't U stop
Cream - Sh-boogie bop
Boogie
Cream - Sh-boogie bop {fade out}
Cream, baby

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「Walk Don't Walk」は1991年のアルバム「Diamonds And Pearls」に収録されている曲です。濃くて存在感の強い曲が並ぶこのアルバムにあって、素直で可愛らしい感じのするこの曲は尺も3分7秒と短く、あまり目立たない曲に思えるかもしれません。しかし、私はこの曲がたまらなく好きです。

この曲に対する思いは、この曲から何を感じ取るかによって変わります。私にとって、この曲をより特別なものにしているのはその歌詞です。しかしながら、素直な曲調とは対照的に、その歌詞はなかなかのあまのじゃくで一瞬戸惑います。曲の前半は、まるで自分を抑えて他人にいいようにされる生き方を肯定するかのような言葉が並び、かなりの違和感を受ける内容になっています。ちなみに "walk (all) over" というのはイディオムで、他人に敬意を示さず酷い扱いをする、といった意味があります。

Don't walk with a confident stride
Then people will walk all over U
But don't talk till they tell U 2
Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
自信ありげな足取りでは歩いちゃダメ
そしたら君は皆のいいようにされるだろう
でもいいと言われるまでは話しちゃダメ
ルール違反になるなら話しちゃダメ
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね

しかし、後半になると主張が変化します。そして最終的に次のポジティブなメッセージに行き着きます。

The sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

この部分だけを抜き出すと、安直とも受け取れるほどにシンプルなメッセージです。しかし、そこに至るまでの歌詞にも目を向け、そしてこの曲を書いたのがプリンスであることを思い出してください。このメッセージに辿り着くまでにどれほどの葛藤があったのでしょう? そして逆境に打ち克つためにどれほどの勇気と覚悟が必要だったのでしょう? プリンスは世の中の誰にも真似のできない人生を送った人でした。プリンスがどんな人物で、どんな人生を送ったかを知らないと、私がどれほどこの曲を特別に感じているかが伝わりにくいと思います。そんなこともあって、前回と前々回の記事でスーザン・ロジャースのインタビューを2つ紹介しました。

また、個人的には、後に表面化することになるマスターテープの所有権を巡るレコード会社との戦いにも思いが及びます。特に思うのは、プリンスが頬に "SLAVE" と書き、名前を変えてシンボルになっていた時期にあたる1996年の、Rolling Stone 誌のインタビューでの発言です。

Then people say I'm a crazy fool for writing on my face. But if I can't do what I want to do, what am I? When you stop a man from dreaming, he becomes a slave. That's where I was. I don't own Prince's music. If you don't own your masters, your master owns you.
今、頬に "SLAVE" と書いていることで僕は頭のおかしい人だと思われている。しかし、やりたいことをさせてもらえないのなら、僕は何者だっていうのだろう? 他人の夢を断つということは、その人を奴隷 (slave) にするということ。それが僕が置かれていた状況なんだ。僕はプリンスの音楽の所有権を持っていない。マスター (マスター音源) を所有しない者は、マスター (レコード会社) に所有されるんだ。

マスターを所有するか、それともマスターに所有されるか。この発言は、何となくこの曲のタイトルや主張にも通じるところがあるように思います。


さて、この曲が素晴らしいのは歌詞だけではありません。この曲のさらに素晴らしいところは、これほどの意味深いメッセージが、とても愛らしい素敵な音楽に乗せられていることです。

ちなみに、Peach & Black ポッドキャストのレビューでは、この曲はセサミストリートでやったら楽しいだろうね、と言っていて、なるほどと思いました。例えばマペット放送局バージョンの「Starfish And Coffee」を思い浮かべてみてください。「歩くの?歩かないの?」とマペット達と一緒になってプリンスが道を行ったり来たりして、道の真ん中でクラクションを鳴らされながらも「そんなの気にしないよ」と言わんばかりに「シャーララーラララー♪」と歌うビデオがもし作られていたら・・・。そんなビジュアルイメージが脳裏に浮かぶと、ますます素敵な曲に思えてきます。

ところで、PrinceVault を確認すると、この曲のベースギターはリーヴァイ・シーサー・Jrが演奏していることになっているようなのですが、実際にはベースギターの音は聴こえません。「ンンンー♪ ンンンー♪」というプリンスの低音ハミングが聴こえるだけです。この曲は遂にプリンスのコンサートで演奏されることはありませんでしたが、もし演奏されていたとしたら低音ハミングは誰がやることになったのでしょうか。トニー・Mでしょうか・・・なんてことを思ったりします。


Walk on their side of the street
Don't walk where it feels the best
Walk away from people U meet
Don't talk 2 strangers unless
They walk the way U want them 2
Don't walk unless the others do
歩かなきゃ - 通りの彼等の側を
歩いちゃダメ - ベストだと感じる場所は
離れなきゃ - 出会う人達から
話しかけちゃダメ - 見知らぬ人が君にとって
好ましい歩き方じゃなかったら
歩いちゃダメ - 皆も歩いてなかったら

I said walk like U could use a ride
Don't walk with a confident stride
Then people will walk all over U
But don't talk till they tell U 2
Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
Yeah, that's what they want U 2 do
歩かなきゃ - 乗り物に乗りたそうな素振りで
歩いちゃダメ - 自信ありげな足取りでは
そしたら君は皆のいいようにされるだろう
でも話しちゃダメ - いいと言われるまでは
話しちゃダメ - ルール違反になるのなら
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね
それが皆の望むことだからね

Sha, na, na, na, na {x4}
シャ・ナ・ナ・ナ・ナ {x4}

Don't talk if it's against the rules
Just walk away and be a fool
That's what they want U 2 do
話しちゃダメ - ルール違反になるのなら
その場を去って物笑いになるのさ
それが皆の望むことだからね

So U gotta walk like U wanna make it
Don't walk like U just can't take it
G'on walk on whatever side U like
Don't walk wherever they tell U 2 - psyche!
The sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way
だから間に合いたいと思って歩かなきゃ
耐えれられなそうな素振りで歩いちゃダメ
どんどん歩かなきゃ - どちらでも好きな側を
歩いちゃダメ - 言われた通りの所は - なんてね!
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

Oh, the sun will shine upon U one day
If U're always walkin' your way (Hey)
いつの日か太陽は君に輝くよ
自分の道を歩き続けることさ

Sha, na, na, na, na {x4}
シャ・ナ・ナ・ナ・ナ {x4}

(Checkin' me now just walkin')
Said I'm walkin' on your side of the street
(Checkin' me now just walkin')
I'm talkin' 2 the people I meet
(Checkin' me now just walkin')
Alright
Hey
(Alright)
(ほら私は歩いているわ)
ほら歩いているよ - 通りの君の側を
(ほら私は歩いているわ)
話しているよ - 出会う人達とも
(ほら私は歩いているわ)
オーライ
ヘイ

Walk - don't walk
Talk - don't talk
Walk - don't walk {fade out}
Talk - don't talk
歩いて - 歩いちゃダメ
話して - 話しちゃダメ
歩いて - 歩いちゃダメ
話して - 話しちゃダメ

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前回に続き、もうひとつスーザン・ロジャースがプリンスの人間性について語ったインタビューを紹介します。こちらは 2017年11月に催された Loop というイベントでのインタビューです。このインタビューセッションは音楽に関するより幅広い話題をカバーしたもので、その中の話題の一つとしてプリンスの話が出てきます。このため、ここでのスーザンは、プリンスをあまり知らない聴衆を念頭に置いて、そういった人たちにも伝わるようにプリンスを語ってくれています。
(とはいえ、最後の質疑応答ではより突っ込んだ質問を受けており、アルバム「Sign O' The Times」や「If I Was Your Girlfriend」、せっかく素晴らしい楽曲を作っても簡単にお蔵入にしてしまうプリンスの行動などについても語っています。)

このインタビューでは是非実際に動画を通してスーザンの声を聴いてみてほしいです。スーザンはアカデミックな人なので、Purple Rain Deluxe のブックレットへの寄稿などでの活字を読んで、この人に少し固い印象を持っている方もいるかもしれません。しかし実際の口調を聴くと、この人がどんな思いでプリンスを語っているのかが分かると思います。ちなみにあのブックレットの寄稿で書かれているいくつかのエピソードも、他のインタビューでスーザンは実際に語っていたりするので、それを聴くとまたあの寄稿も印象が変わるかもしれません。

翻訳したのは下のリンクで20分12秒から24分40秒頃までです。
Loop | Susan Rogers on Prince, production and perception

インタビュアー: ここで少しギアを入れ替えて、プリンスの話をしましょう。皆さんの中にはプリンスのことを聞いたことがある人もいると思います。事前にメールのやりとりをするにあたって、私はあなたが既に別のキャリアに移っていることが気になっていました。あなたは人生で様々なキャリアを積んできました。その一方で、私が読んだインタビューでは、あなたの神経科学者としての仕事には一切触れられず、プリンスについてのみ語られているものが沢山ありました。そのため、この場でプリンスに関する話をしても大丈夫なのか気になっていたのです。あなたの現在の仕事はそれではないのですから。ですが、ここであなたからのメールを引用したいと思います。あなたはこう返信してくれました。

「プリンスと仕事をしたことのある人の殆どは、彼についての話を共有できることを光栄に思っています。私たちは次の世代に、彼がいかに素晴らしい人物であったかを知ってほしいという思いを持っています。そして、もっと多くの知られていないことがあるのです (there was more to uncover)」

これは非常に素晴らしく、とてもありがたいことです。それで、もっと多くの知られていないこととは何でしょうか? 我々は何を知らないのでしょうか?

スーザン・ロジャース: ここの皆さんは、多かれ少なかれ、プリンスの名前を知っていることでしょう。彼の名前は知っているでしょうし、彼が偉大なアーティストであったことも知っているでしょう。プリンスは偉大なアーティストとして人々の記憶に刻まれることを望んでいました。それが彼の望みでした。彼は、自身がただの人間として、私たちと同じようにいずれ命の尽きるただの人間として知られることは望んでいませんでした。もちろん実際には彼も命のある人間でしたけれども。

そして、彼の元で働いていた人々や彼と親交のあった人々は彼の思いを尊重しました。私たちは彼をただの人間として語ることはしませんでした。なぜなら彼はそれを望んでいなかったからです。断っておきますが、これは屈折した偏狭なエゴによるものではありませんでした。これは、彼が仕事をするために必要な保護の役割を果たすものでした。彼は自身の精神と自身の作品との間にバリアが必要だったのです。彼は自身の作品だけを人々に見てもらうことを望んでいました。

彼は元々シャイな性格で、それを利用してインタビューは受けないと言いました。それは彼が鼻持ちならない奴だからというわけではありません。彼は単に自身のことを話したくなかったのです。彼は本当に話したくなかったのです。彼はそいう性格の人でした。だから、彼が世を去った今、彼を知る私たちにとって、彼には別の側面があり、彼が人としていかに素晴らしい存在であったかを語るのはとても大切なことだと思うのです。もちろん彼にも欠点はありましたし、彼はミスもしました。彼は若い頃は沢山の人を怒らせました。しかし彼は勇敢で、従業員達に寛大で、私たちを大切に扱ってくれました。

例えば私たちが Purple Rain ツアーを行った時のことです。このツアーでは、私の記憶が確かならば85名のクルーがいました。Purple Rain ツアーは私にとって初めてのツアーで、9ヶ月間に渡る長期のツアーでした。そこで私が覚えていることなのですが、照明や音響のクルー、Showco からのクルー、それともうひとつの会社の名前は忘れてしまいましたが、彼らは皆、プリンスの計らいに驚かされることになりました。彼はスタッフの一人一人にホテルの個室を用意したのです。普通、ロックスターのツアーでは、クルーは相部屋に纏められるのが常でした。舞台設置のクルー、ドライバー、その他のクルー、一部屋に最低二人が詰め込まれるのが常でした。しかし、プリンスは皆に気持ちよく過ごしてもらうため、余分な費用を払い、各スタッフにそれぞれホテルの個室を取ってプライバシーを保てるようにしました。私はツアークルーからこう言われました。
「これはまずありえないことなんだ。普通、人はこんなに気前が良いはずがないんだ」
大きなことから小さなことに至るまで、プリンスにはこういう面がありました。

また、大きなアリーナでのショウを夕刻に控える中、私たちは昼の間、小型のトラックを出して機材を乗せ、病院を訪れて、病気のためコンサートに来ることができない子供たちのために演奏をしました。病気で入院しており、コンサートに来ることができない子供たちのために。その際に彼はひとつだけ条件を付けました。それはプレスを入れたり広報宣伝を行ったりしないことです。彼はこういったことで名声を得ることを望みませんでした。彼の望みはただ子供たちのために演奏をすることでした。

私たちは障害を持つ子供たちがいる学校も訪れました。障害のためやはり大きなアリーナコンサートに来ることができない子供たちがいる学校に。そこで私たちはスカーフやお花や照明をセットアップして、フルセットのコンサートをしました。一曲や二曲をやって終わりではありません。フルセットのコンサートです。子供たちのために。これもひとつだけ、世間に知らせてはいけないという条件を付けて。

彼がどんな人物であったかについて、こういった例は数えきれないほど挙げることができます。私たちが失ったのはただの偉大な人物ではありませんでした。私たちは本当に善い心を持った、善良な人を失いました。彼は表立って主張することがありませんでしたから、彼については沢山の噂が生まれました。彼が人々の記憶に「ああ、彼はただの変人だったよ (he was just some freak)」というふうに残されるとしたら、私はいたたまれません。彼は変人などではありませんでした。確かに彼は普通ではありませんでした。しかし、彼は善い心を持った人でした。

このインタビューで、プリンスが障害を持つ子供たちのためにフルセットのコンサートをしたという話が出てきますが、それと思われる映像が YouTube に上がっています。プリンスが「Little Red Corvette」を歌っているわずか36秒の動画ですが、26秒頃から手話をしている女性が脇に立っているのが見てとれます。

アラン・ライトのパープルレイン本「Let's Go Crazy: Prince and the Making of Purple Rain」には、確か、Purple Rain ツアー前のリハーサルの時点でプリンスはもうやり尽くした気分になって、実際のツアーが始まる頃には心はもう次のプロジェクトに移っており、既に Purple Rain ツアーには飽きてしまっていたという話が書かれていたように思います。上の YouTube リンクは 1985 年とのことなので、この長いツアーも後半に入っている時期です。それだけに、このプリンスの活き活きとしたパフォーマンスを見ると、コンサートに来ることができない子供たちのために演奏するというのは、プリンスにとって本当に大きな喜びだったのだろうと思います。

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