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主にトレーニングとダイエットのブログ。それとプリンス。

●持久運動と筋トレ

前回書いた通り、タンパク質の基準1日摂取量 (RDI) は、特に運動しない普通の人のための基準であり、アスリートを対象としたものではありません。実際、RDA ハンドブックには「No added allowance is made here for the usual stresses encountered in daily living, which can give rise to transient increases in urinary nitrogen output (窒素損失を増大させるような一時的なストレスに対する追加の所要量は考慮しない)」と記述されています。

* RDA (Recommended Dietary Intake. 古い基準で現在は RDI に置き換えられています)

しかしながら、激しい運動が「窒素損失を増大させるストレス」になることは多くの研究で示されています。持久運動も筋トレもタンパク質の必要摂取量が増える要因になりますが、タンパク質の必要摂取量が増える理由はそれぞれ異なります。

持久運動では、BCAA 等のアミノ酸が直接エネルギーとして消費されます。タンパク質は長時間の持久運動ではエネルギー消費の 5-10% に達する場合があり、この傾向は筋グリコーゲンが低下した状態でより顕著になります。

一方、筋トレでは、アミノ酸が直接エネルギーとして顕著に消費されることはありませんが、ダメージを受けた組織を修復し、筋肉を成長させるためにタンパク質の必要摂取量が増えます。

また、トレーニングを行うと、アスリートにとって重要となる様々な代謝プロセスがアップレギュレートされます。これらのプロセスは食事のタンパク質必要量が増える要因となると思われますが、具体的な量については現段階では十分な研究がされていません。アスリートにとって重要な代謝を全ての側面から最適化するには、窒素バランスを保つのに必要なタンパク質の摂取量だけでは十分ではない可能性もあります。

ともあれ、実践的な観点で見ると、タンパク質の必要量が増えるメカニズムは、厳しいトレーニング下ではタンパク質の必要量が多くなるであろうという事実と比べると、それ程重要なものではありません。

Peter Lemon は過去の様々な研究データをレビューし、1991年の論文で、タンパク質の必要摂取量を持久系アスリートは 1.2-1.4g/kg、筋力/パワー系アスリートは 1.2-1.7g/kg と提案しています。これは RDI の 0.8g/kg よりも 50-100% 多い量です。

また、より最近発表された Tarnopolsky のレビューでは、持久系アスリートではタンパク質の必要量はトップアスリートの場合で最大で 1.6g/kg と提案しています。また、より少ないトレーニング量でやっている趣味レベルの持久系アスリートでは、エネルギーおよび炭水化物の摂取が十分であるという前提で、タンパク質の必要量はより少なくて良いとしています。

追記として、ボディビルダー等、筋トレの実践者の間では昔から 2g/kg 以上の摂取が推奨されていると思います。また、2.5-3g/kg 以上のようなより多くの摂取が推奨されることも珍しくありません。

●タンパク質ターンオーバーと窒素バランス

通常、人の体は長期でみてタンパク質量がめまぐるしく変化することはありませんが、体内ではタンパク質の分解 (Breakdown) と再合成 (Resynthesis) のプロセスが盛んに行われています。この分解と再合成の2つプロセスを一つの言葉でタンパク質のターンオーバー (Protein Turnover) といいます。

普通の人では、1日に 300g 程度のタンパク質のターンオーバー (分解と再合成) が発生します。ただ、これは1日に 300g のタンパク質を摂らなければいけないということではありません。分解されたタンパク質の大部分は単純に再合成に使われます。

しかしながら、ターンオーバーのプロセスは 100% の効率では行われません。通常の条件では、ターンオーバーの 4% 程度のタンパク質が体から失われてしまいます。そして、これが人間が食事でタンパク質を摂らなければならない大きな理由です。ターンオーバーで失われる少量のタンパク質は、食事から補充する必要があります。

タンパク質 (細かくいうとアミノ酸) は、人間にとって唯一の窒素源であるという特徴を持っています。窒素の損失量が分かれば、タンパク質の損失量が分かります。失われる窒素の大部分は尿から排泄されるので、尿からの窒素排泄を調べ、全体の窒素の損失量を推定することで、タンパク質の損失量を推定することができます。

この考え方によって体のタンパク質バランスを測定するのが窒素バランスの研究です。窒素バランスの研究では、体に入る窒素 (食事のタンパク質) と体から出る窒素を比較します。体に入る窒素が出る窒素よりも多ければ、窒素バランスはプラスで、タンパク質の保持量が増えたことを意味します。窒素バランスがマイナスならタンパク質が体から失われたことを意味します。

余談ですが、窒素バランスの研究では窒素量を測定するだけであり、具体的にどのアミノ酸が失われたのかを調査することはできません。近年では、タンパク質の代謝を調査するためのより精密なメソッドとして、放射標識 (Radioactive Labeling) したアミノ酸を用いることで特定のアミノ酸について調査することが可能になっています。

話は戻って、窒素バランスの研究から、不可避の窒素損失 (Obligatory Nitrogen Loss) として、窒素は1日に 50-60mg/kg/day 程度が排出されると見積もられています。これは、70kg の人間では 3.5-4.2g の窒素になり、タンパク質は約 16% が窒素ですから 22-26g のタンパク質になります。食事のタンパク質は 100% の効率で消化され利用されるわけではありませんから、これに安全率を考慮して余裕を持たせます。タンパク質の基準1日摂取量 (Reference Daily Intake、RDI) はこうして定められています。

米国ではタンパク質の RDI は 0.8g/kg で、体重 70kg の男性では 56g のタンパク質に相当します。RDI は、世の中の殆どの人にとっては十分に所要量をカバーする量です。

しかし、筋トレをするような人も RDI の摂取量でタンパク質の所要量が満たされるのでしょうか?中には「RDI で必要量が 0.8g/kg と決まっているんだからタンパク質はそれ以上必要ありません」と主張する人もいるかもしれません。

でも、この考えは誤りです。RDI は「窒素の損失量が増大するようなストレスにさらされていない (したがってタンパク質の必要量が増大しない)」普通の人に対する基準量です。窒素の損失量が増大するような状況をカバーすることを目的として定められたものではありません。実のところ、窒素の損失量やタンパク質の必要量は、状況によって変わります。

筋トレ、持久運動、そして、ダイエット。それぞれがタンパク質の必要量を増大させる要因になります。これらの活動を行う人はタンパク質を RDI よりも多く摂取することが推奨されます。

タンパク質は、筋トレをする人にとっては切っても切れない関係にある栄養素です。しかし、タンパク質をどれくらい摂ったらよいかということについては様々な意見があり、何をどう判断したらよいか迷ってしまっている人も多いと思います。そこで、タンパク質の摂取について考えてみたいと思います。

途中で投げ出さなければ7~8回の記事になる予定です。挫折するかもしれないので、最初にタンパク質摂取について、私の意見を書いておきます。

- タンパク質は大切です。基本的には、摂らないよりもいっぱい摂った方が良いです。あと、細かいことは考えなくていいと思います。

また、この記事は、Lyle McDonald の The Protein Book を参照しながら書いています。より正しく詳しいことを知りたい方は、この本を読んでください。

●どのように決めるか?

タンパク質の摂取量には、2通りの決め方があります。主要栄養素の割合で決めるか、体重当たりの量で決めるかです。

主要栄養素の割合での決め方では、例えば、「タンパク質 30%、脂質 20%、炭水化物 50%」というように他の栄養素との割合から摂取量を決定します。一般の栄養士さん的なアドバイスではこの方法が用いられることが多いと思います。また、通常のカロリー摂取を想定した栄養指導ではこれで問題ありません。

しかし、主要栄養素の割合での決め方では、通常の基準を外れるようなカロリー摂取ではおかしなことになってしまうという問題があります。例えば、1000kcal と 4000kcal のダイエットを考えてみます。タンパク質 30% と決めると、前者は 75g、後者は 300g となり、225g もの差が出てしまいます。筋トレをする人では、目的によってカロリー摂取が大きく変動することがありますので、主要栄養素の割合で決める方法では、この例のように上手くいかない場合が出てきます。

一方、体重当たりの量で決めると、例えば、体重 70kg の人が 2g/kg のタンパク質摂取をする場合、1000kcal ダイエットでも 4000kcal ダイエットでも同じ 140g のタンパク質を摂取することになり、カロリー摂取に左右されなくてすみます。ということで、筋トレをする人は、体重当たりの量で決めるのがより適切な方法になります。

ところで、体重当たりの量で決めるとなると、人によっては悩ましい問題が出てきます。基準を体重 (Body Weight, BW) にするか、それとも除脂肪体重 (Lean Body Mass, LBM) にするか、です。

体脂肪のためにタンパク質を与えてあげても嬉しくありませんから、理論的には除脂肪体重を基準にするのが適切です。しかしながら、除脂肪体重を基準にすると、これはこれで問題があります。どういう問題かというと・・・算出が面倒になるということです。一般のトレーニーにとって、自分の体脂肪率を正確に知ることなんてできませんし、研究でも除脂肪体重ではなくシンプルに体重を基準にしていることが多いです。

個人的には、タンパク質の摂取量の決定は、あまり悩まずに体重を基準にするのが楽だと思います。普通の人よりも体脂肪が多く乗っていると思う人は気持ちタンパク質を減らすとかすれば良いと思います。

また、女性は一般に男性よりも体脂肪率が高く、また、生理学的にも男性ほど多くのタンパク質を必要とはしません。男性向けの推奨量を参考にしてしまうと、タンパク質必要量の見積りが過大になってしまいますので、女性の方はそれよりも少し減らすと良いと思います。

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