OneH

主にトレーニングとダイエットのブログ。それとプリンス。

プリンスの TV インタビューの動画などを見るにつけ、プリンスは公の場でとても美しい振る舞いをするなあ、とつくづく思います。穏やか、優美、上品、ユーモラス、そしてお茶目でチャーミング……しかも他人には真似することのできない唯一無二の存在感を持っています。

ところで前回は、1999年に放送された、プリンスのラリー・キング・ライブへの TV 出演を取り上げました。その番組の中で、プリンスは、不当な世評を作り上げるメディアに対して、戦うことも、怒りをぶつけることもせず、それで気にならないという旨の発言をしていました。普通、世間から不当な評価を受ければ怒りやストレスを感じるものです。そして、何とか誤解を解いて不評を払拭しようと考えるものです。しかし、プリンスは、そのような積極的な抵抗はせず、平然として不当な世評をあるがままに放置する、という選択をする人でした。

これに少々関連して、私には、長年疑問に思っていることがあります。

怒りやストレスを溜め込んで我慢するのは良くない。だから、怒りは吐き出さなればいけないし、ストレスは発散しなければいけない。

世の中ではよくこう言われます。しかし、これって嘘ではないか?と私は思うのです。といってもこの主張の前半はその通りです。確かに怒りやストレスを溜め込んで我慢するのは良くないと思います。しかし、後半は本当に正しいのでしょうか?怒りを吐き出すのは良いことなのでしょうか?ストレスを発散するのは良いことなのでしょうか?

ジャーナリストの David McRaney という人のブログ「You Are Not So Smart」に、Catharsis (カタルシス) というタイトルの記事があります。カタルシスとは、ここでは溜まった負の感情を何らかの代替手段で発散させる、というような意味です。例を挙げると、ジムに行ってサンドバッグを叩く、枕に顔をうずめて思いっ切り叫ぶ、といった行為のことです。また、世の中には皿を割ってストレス発散を促してくれるようなサービスもあるようですが、これもカタルシスと言えます。

このように積極的に感情を吐き出す行為は、一般には怒りやストレスの解消に役立つものだと思われています。しかし、David によると、心理学の実験ではこれは逆効果であることが実証されているのだそうです。David はこれをカタルシスにまつわる誤解 (誤り) と真実として、次のように纏めています。

The Misconception (誤り)
Venting your anger is an effective way to reduce stress and prevent lashing out at friends and family.
怒りを発散することは、ストレスの軽減や、友達や家族に矛先を向けてしまうのを防止するのに効果的である

The Truth (真実)
Venting increases aggressive behavior over time.
怒りの発散は、攻撃的な行動を増長させる

また、実験によると、運動でストレスを発散するというのも誤った考え方なのだそうです。怒りを原動力に運動をすると、怒りの感情は維持され、興奮レベルも高まり、結果的により攻撃的になる恐れがあるのだそうです。これも常識に反する考え方かもしれません。ただ、個人的には、この主張はとてもしっくりきます。

このブログからもう少し引用します。

If you get into an argument, or someone cuts you off in traffic, or you get called an awful name, venting will not dissipate the negative energy. It will, however, feel great.
他人と口論をしたり、運転で割り込まれたり、悪態をつかれたりした時、怒りを吐き出すのはネガティブな感情を解消させることには繋がらない。ただし、気分は良くなる。

That's the thing. Catharsis will make you feel good, but it’s an emotional hamster wheel. The emotion which led you to catharsis will still be there afterward, and if it made you feel good, you’ll seek it out again in the future.
しかし、それが問題なのだ。カタルシスは気分を良くしてくれるが、それは感情におけるハムスターの回し車だ。カタルシスの源となったその感情はその後も残存し続ける。そして、もしカタルシスで気分が良くなったならば、今後もまたそれを求めることになるだろう。

......

Smashing plates or kicking doors after a fight with a roommate, spouse or lover doesn’t redirect your fury, it perpetuates your rancor.
ルームメイト、配偶者や恋人と喧嘩をした後に、皿を叩き割ったり、ドアを蹴ったりしても怒りの矛先を変えることにはならない。それはあなたの憎しみを持続させるだけだ。

If you spank your children while infuriated, remember you are reinforcing something inside yourself.
怒りの感情を持ちながら子供を叩いてしまったら、それはあなたの内にあるものを強化しているのだと心に留めておくこと。

Common sense says venting is an important way to ease tension, but common sense is wrong. Venting - catharsis - is pouring fuel into a fire.
常識では怒りの発散は張り詰めた感情を柔らげるのに重要な方法だということになっているが、その常識は誤りである。怒りの発散 - カタルシス - とは、炎に燃料を注ぐことである。

ちなみに、このブログは書籍にもなっており、日本語の翻訳も出版されているようです。タイトルは変えられていますが、原著は同じです。


さて、常識に反して、怒りを発散するのはストレス解消の適切な解決策ではない、というのは分かりました。とはいえ、怒りやストレスを溜め込んでしまうのも避けなければいけないことです。そうなると残った解は、単に怒りやストレスを感じる状況に陥らないようにすれば良い、ということなります。これは簡単に思えて簡単ではないことかもしれません。

ここでもう一度プリンスがどんな人だったか思い出してみます。プリンスは、メディアの相手をすることよりも、ミュージシャンとして音楽を作り演奏し続けることを遥かに大切にする人でした。両者を天秤にかけたとき、音楽と向き合うことの大切さの前では、プリンスはメディアが作り上げる不当な世評と戦うことに価値を見出さなかったのだと思います。

抽象的な表現になりますが、怒りやストレスを溜め込んでしまう状況を避けるためにすべきこととは、人生でより大切なものと向き合うことなのだろう、と思います。そうすれば、何か良くないことが起きたとしても、怒りやストレスを感じる価値などない場合が沢山あることに気付くのではないかと思います。

前回、「Illusion, Coma, Pimp & Circumstance」(Musicology 収録、2004年) から脱線して「Sex」(Scandalous B-side、1989年) を取り上げましたが、脱線ついでに1999年12月10日にプリンスが TV 出演したラリー・キング・ライブのインタビューも取り上げたいと思います。プリンスが読み方を持たないシンボルマーク「O(+>」に改名していたのは1993〜2000年なので、このインタビューは、プリンスがまだ改名中の時期に当たります。

このインタビューにはちょっと面白い場面があります。ラリーがプリンスに有名になった経緯について質問をした後、プリンスが名前のことで話を逸らしたために、生放送中、ラリーは尋ねたばかりの質問を一瞬忘れしてまいます。質問を思い出そうとするラリーに対して、プリンスは機転を効かせてこう言ってあげます。

The Artist: You were saying how much you love live television.
あなたは、あなたがどれだけ生放送のテレビが好きでらっしゃるかについて喋っていましたよ。

歌詞がストーリーになっている「Illusion, Coma, Pimp & Circumstance」には、コーラスを終えた後に "Where was I? Oh Yeah... (どこまで話したんだっけ? ああそうだった…)" と、話を思い出す部分があります。何となく、私の中では上のプリンスとラリーのやり取りと重なります。


インタビューの内容を少し引用したいと思います。

プリンスは、自身の改名について、精神的な面から次のように語っています (4:00〜)。

King: About the highest risk one would think someone who gets famous would take is to drop the name that got them famous.
有名人にとって自分を有名にした名前を捨てるというのは、犯しうる最大のリスクと言ってもよさそうなものですが。

The Artist: Well, that was one of the things that I dealt with, is that I really searched deep within to find out the answer to whether fame was most important to me or my spiritual well being, and I chose the latter.
それは私が向き合ったことのひとつで、自分にとって最も大切なのは名声なのか、それとも精神の健康や幸福なのか、答えを見つけるために深く熟慮しました。そして、私が選んだのは後者でした。

ラリーが質問を一瞬忘れてしまう場面です (11:05〜)。

King: And how -- what burst you on the scene? How did the world get to know Prince, the then Prince?
あなたが有名になったきっかけは何でしたか? 世間はどうやってプリンスを知ることになったのでしょうか? その、あなたは当時はプリンスでしたが。

The Artist: Well -- by the way, I'm still Prince. I just use a different sound for my name, which is none.
そうですね、ところで、私は今もプリンスなんです。ただ名前として違う読み方にしただけで。それは読み方は存在しない、というものですけれども。

King: But it's hard not to refer to you. It's hard to call you uh.
そのせいで我々はあなたへの言及や呼び掛けをするのが大変なんです。

The Artist: It's cool. It's cool.
それで構いませんよ。

King: You're understanding of this plight we're faced with.
あなたは我々が面している困難に理解を持ってらっしゃる。

The Artist: Oh, yes, no problem.
ええ、問題ありません。

King: Thank you.
ありがとう。

The Artist: What was the question?
それで質問は何でしたっけ?

King: The question was -- good, you threw me. I forgot the question. The question -- what was the question? I just asked a question. I forgot the question.
私がした質問は…あれ、今ので混乱しました。質問を忘れました。質問は…質問は何でしたっけ?私はたった今質問をしたばかりです。質問を忘れました。

The Artist: You were saying how much you love live television.
あなたは、あなたがどれだけ生放送のテレビが好きでらっしゃるかについて喋っていましたよ。

King: Yes. That wasn't the question, though. No, the question was, how did you get famous? How did you -- how did the world get to know you? What happened? Was it a record, an appearance, something?
その通り。それは私がした質問ではありませんけど。質問はこれです。あなたはどうやって有名になったのですか?世間はどうやってあなたを知ることになったのですか?レコード、何かの出演、何だったのでしょう?

続いてデビューした頃の話から、音楽のインスピレーション、さらにはアーティストの権利などに話が移っていきます (12:34〜)。

King: immediately became a hit, and you were known?
(デビューして) すぐにヒットして、有名になったのですか?

The Artist: Quietly, but a lot of people knew about me because I was -- I used Stevie Wonder as an inspiration, whom I look up to a great deal just for the way that he crafted music and his connection to the spirit. And, boy, back then I used him as a role model in trying to play all the instruments and be very self-contained and keep my vision clear. So word spread very quickly about what I could do.
静かに、ですね。でも多くの人が私のことを知っていました。私はスティービー・ワンダーをインスピレーションにしたんです。私は彼の音楽を制作の仕方や精神とのコネクションを尊敬しています。彼を手本にして、全ての楽器を演奏し、自己完結させ、自分のビジョンを明確に持つよう心掛けたんです。なので私が何を出来るかということはすぐに広まりました。

King: How would you describe your music? What idiom would you put it in?
ご自身の音楽を言葉で表現するとしたらどう呼びますか?どんなイディオムで表現しますか?

The Artist: The only thing I could think of, because I really don't like categories, but the only thing I could think of is inspirational. And I think music that is from the heart falls right into that category, people who really feel what it is that they're doing. And ultimately all music is or can be inspirational. And it's -- that's why it's so important to let your gift be guided by something more clear, you know?
私はカテゴリーというのは好きではないんです。でも唯一考えつくとしたら、インスピレーショナル、でしょうか。自分が行っていることをきちんと感じている人々によって心が注がれた音楽は、このカテゴリに当てはまるものだと私は考えます。突き詰めると、全ての音楽はインスピレーショナルであるか、あるいはそうなり得るものです。なので、明確な導きの元に自分の資質・才能を置くことが大切なんです。

King: The thing is, we don't know -- you think you know where that gift comes from?
つまりそれは…あなたは自分の資質・才能がどこから来たものか知っているということですか?

The Artist: Oh, yes, absolutely.
ええ、もちろんです。

...

King: Where does your inspiration come from?
あなたのインスピレーションはどこからやって来るものですか?

The Artist: I like to believe that my inspiration comes from God and that...
私は自分のインスピレーションは神から来るものだと思っています。

King: Did you always believe that?
常にそう思っていたのですか?

The Artist: No. As you grow older, you learn and you start to -- you get smarter, yes.
いえ、年を重ねるに従い、学び、気付き始め…人はより賢明になっていくものですから。

...

The Artist: I have always known that God was my creator and that without him, boy, nothing works. It works to a point, and then it just kind of deteriorates. Entropy takes place.
私は常に神が自分の創造主であると考えてきました。神なしでは何も上手くいきません。ある所までは上手くいきますが、やがて堕落します。エントロピーの増大です。

King: When bad things have happened to you, do you blame him?
悪いことがあなたの身に降りかかったときは、神を責めますか?

The Artist: Absolutely not, no.
いいえ、決してそのようなことはしないですね。

King: How do you explain -- how do you resolve it in yourself?
ならばそういったことを自分の中でどのように解決するのですか?

The Artist: I learn from it. And I don't wallow in it. I don't spend time in a place. I let myself move on, you know? Right today, I could sit and say, I have animosity towards...
そこから学びます。その中でもがいたりしませんし、一つの場所に留まることはしません。次へ進むんです。今日のこの場でだって、私は敵意を持っていると言うこともできたでしょうが…

King: ... a record company.
それは、レコード会社への。

The Artist: Yes, a company that owns the rights to my work, you know. They're businessmen. They're doing what it is that makes their business successful, and I also am allowed to do things that make my business successful. And for me, that would be to own my work. So I just chose to step away from that. And knowing that, I sent a nice letter to the president -- then-president because they changed a lot weekly during that time, and I told him that I loved him, and that, you know, I was glad that I had this experience, you know.
はい。私の作品の所有権を持っている会社に対してです。彼らはビジネスマンです。彼らはビジネスを成功させるために行動しています。そして私もまた自分のビジネスを成功させるために行動することができます。私にとって、それは自分の作品の所有権を持つことです。だから彼らから離れることにしたんです。その上で、私はワーナーの社長、当時は毎週のように社長が替わっていましたけれども、当時の社長に感謝の手紙を送りました。私は彼を敬愛し、この経験をしたことを嬉しく思っていることを伝えました。

King: So you would say, even though we don't like to look back, that dispute turns out now to be an experience that worked for you?
ということは、過去を振り返ることになりますが、あの不和はあなたにとって実りのある経験になったということでしょうか?

The Artist: Well, I think my understanding of it is what worked for me. I don't consider it proper that my creations belong to someone else. I can go up to a little kid on the street and say, do you know that I don't own "Purple Rain," and they're appalled by that.
その、私の認識で何が上手くいったかということなんですが、私は自分の制作したものが他者に所有されるのが妥当だとは考えないんです。もし私が街で小さな子供に会い、その子に「知ってる? "パープルレイン" は僕のものではないんだ」と言ったら、その子は驚くでしょう。

King: Do you still not own "Purple Rain?"
今もパープルレインはあなたのものではないのですか?

The Artist: No, I'll have to rerecord it to own a new master copy of the... we've done that with the song "1999." There is a new master recording of it.
はい。マスターコピーを所有するためには私はそれを再録音しなければなりません。"1999" という曲にについてはそれを行い、新しくマスターを録音しました。

本来、プリンスの改名は、「アーティストとして生きる者は、ビジネスの喰い物にされないためにどうあるべきか」というテーマにおける重要な問題提起でもありました。しかしながら、当時のメディアや批評家達は、概ねプリンスの決断を嘲笑するような論調だったように思います。1億ドルという業界に前例のない高額な契約を結びワーナーの副社長にまで就任したのに、突然その座を捨てて発音できない奇妙なシンボルに名前を変えるなんて、プリンスは何て無責任で身勝手な奴なんだ、という批判的な空気があったように思います。

その中で、プリンスはアーティストのあるべき姿を求め続け、改名から20年近くの年月を経て、2014年にワーナーにカムバックし、遂にマスターを所有する権利を得るに至りました。きっとプリンスには、その先の考えもあったのだろうと思います。

最後にもう1つ、個人的に興味深く感じたやり取りです (29:14〜)。

King: A lot of people were telling me today -- I was just telling the artist -- that, boy, you're going to have the artist on for an hour? It's going to be very hard because he's very hard to talk to. Now you're not hard to talk to. Where did this reputation begin that you are difficult, do you think? I imagine you're not hearing it here for the first time.
今コマーシャルの間に話をしていたところなんですが、今日は私は沢山の人達から言われたんです。ジ・アーティストを迎えて1時間もインタビューをするなんて大変なことだと。なぜならあなたはとても話しづらい人だから。ところがいざ話してみると、あなたは話しづらい人ではありません。これを耳にするのは初めてではないと思いますが、あなたが気難しい人間だという世評はどこから生まれたと思いますか?

The Artist: Probably where all reputations begin. I think the media plays a big part in one's perception of me. Until one actually sits down and talks to me they can't really know me.
おそらく世評というものが作られる所からでしょう。メディアは私に対するイメージに大きな影響を与えていると思います。しかし、実際に直接向かい合って話をしない限り、私を知ることはできません。

King: Well, should you have been more public? Should you have done more of things like this?
ならばもっと前から公の場に出てくれば良かったとは思いませんか? 今やっているようなことを前からもっとやっておくべきだったとは思いませんか?

The Artist: No, I kind of did what I wanted to do. I wanted my music, as even now, to speak loudest for me.
いえ、私は自分がやりたいことをやってきましたから。私は、今もそうですけど、自分の音楽に最も強く語らせることを望んできました。

King: But you -- you're not uncomfortable here, are you?
しかし、それで居心地は悪くならないのですか?

The Artist: No, not at all.
いいえ。全くなりませんよ。

King: But the reputation is that you would be. How do you fight that other than by counteracting it?
しかしあなたのイメージは世評から作り上げられます。それに対抗せずにどうやって戦うのですか?

The Artist: Well, I don't think in terms of fighting. I don't think that you win anything by fighting. I'm the type of person that likes to look at things for exactly the way they are. And...
その、私は戦うという考え方をしないんです。私は戦って何かを勝ち取れるとは思っていません。私は物事をあるがままに見るので…

King: Do you get angry? You're a perfectionist musically, right?
怒りを感じたりはしませんか? あなたは音楽では完璧主義者でらっしゃる、そうでしょう?

The Artist: Yes.
ええ。

King: You must get angry then?
ならば怒りを覚えるでしょう?

The Artist: I use my anger with humor. I have a way of being very stern, but I always find the irony in it, and I always make it funny. I make it funny for myself and the person that I'm...
私は怒りはユーモアにします。私には厳しく振る舞う側面もありますが、怒りの中に皮肉を見つけ、いつも面白可笑しくします。それは私のためでもありますし、その人の…

King: So the person you're directing it at is not humbled or made to feel less than a human.
それが向けられている人物が、恥じ入ったり人間以下に小さく感じられたりすることがないように。

The Artist: Well, no one can make you feel anything. You pretty much are going to fall in there if you, you know, aren't spiritually based.
いえ、人の感情を左右することなど誰にもできません。といっても、精神的な基盤がなければそのような状況に陥ってしまいますけれども。

私がこの発言で思うことは2つあります。1つは憤りや不満の感情と精神的な基盤についてです。そして、もう1つは完璧主義者 (Perfectionist) という言葉についてです。このインタビューのように、プリンスは、完璧主義者というイメージで語られることがあります。しかし、私はプリンスをそのように評することには非常に強い違和感を覚えます。わざわざ強調するようなことでもないかもしれませんが、私には、プリンスは完璧主義者とは遠く離れた人物、という印象があります。

これらの点についてもっと掘り下げて書こうかと思ったのですが、脱線が止まらなくなるのでどうしようか考えています。とりあえず、このブログ記事はこれで終わりにします。

2004年の「Musicology」の曲を続けるつもりでしたが、脱線して1989年の B-side 曲である「Sex」を取り上げることにします。「タン、タン、タン、タンタン」というシンセのリフが「Musicology」に収録されている「Illusion, Coma, Pimp & Circumstance」にちょっと似ています。また、これは「The Hits / The B-Sides」に収録されていないため、見落とされやすい曲かもしれません。

思えば去年の今頃は、私のような者が分をわきまえずプリンスについてあれこれ書くなんて一生ないことだと思っていました。日本にプリンスを語る人があまりいないので厚顔無恥を承知でつらつらと書いている次第ですが、色々書き出すと、まあ必然的にこういう曲も取り上げることになります。


ところで、「プリンスが肩の力を脱いて作ったアルバムは?」と聞かれたら、真っ先に思い付くのはどの作品でしょうか?

古くからのファンであれば、この問いに10人中10人が「Batman」と即答するのではないかと思います。1989年のヒットアルバム「Batman」は、それくらい頻繁に「肩の力を脱いた」といった言葉とセットで評されます。基本的にこれは好意的な表現ですが、それと併せて、プリンスの作品としてはどこか物足りない、という意味も込められています。

このように、見方によっては物足りなく感じるアルバム「Batman」ですが、その B-side 曲群は小粒ながらどれも冴えた出来であり、アルバムの世界に奥行きを与える格好になっています。アルバム「Batman」が TV ゲームの表ステージだとすると、さしずめ B-side はひとクセあるボーナスステージ・裏ステージといった感じです。「Batman」の B-side では次の4曲が発表されています。

200 Balloons (1989年録音、B-Side of Bat Dance)
映画の脚本からインスパイアされたと思われるものの、映画では使われず、アルバムにも入らなかった曲です。映画でこれに相当するシーンには「Trust」が使われています。B-side に押し込められてしまっていますが、個人的にはとても映画「バットマン」を感じる楽しい曲です。
Feel U Up (1986年録音、B-side of Partyman)
未リリースプロジェクト「Camille」からの蔵出しです。
I Love U In Me (1989年録音、B-side of The Arms Of Orion)
綺麗な曲でありながら、歌詞が官能的すぎるために B-Side になってしまったような曲です。
Sex (1989年録音、B-side of Scandalous)
今回取り上げる曲です。この中で唯一「The Hits / The B-Sides」に収録されていません。

「Sex」は、プリンスらしい才気溢れるフックが様々に散りばめられていて、耳に残りやすい曲です。歌詞についてはひとまず置いといて、あまり考えずにとりあえず聴いて楽しめ、というタイプの曲だと思います。

そして歌詞はというと…昔は「う〜ん、ちょっと…」と思っていましたが、失なって気付く淋しさというか…今となっては「うん、プリンスなら OK」という感じです。後半の掛け合いの女性パートもプリンスがやっており、演奏もすべてプリンスで、1人録音で仕上げられた曲です。

  • "The 80s are over and the time has come" - 80年代は終わり新しい時代が訪れた
    こう歌っておきながら、サウンド的にはかなり80年代のヴァイブを感じるのがちょっと可笑しいです。
  • "Monogamy and trust is what I'm talking 'bout" - それは一夫一婦婚と信頼ということ
    一応これが歌のベースになるアイデアで、ふしだらな生き方は終わりにして、一人の恋人を大切にしようという内容です。
  • "S is 4 scandalous" - S はスキャンダラスの S
    Scandalous の B-side ということから着想した曲なのだろうな、という歌詞です。
  • "I'll climb a thousand trees if I have 2" - 必要ならば私は千本の木々に登ってみせる
    ちょっと変わった表現なせいか、個人的にはなぜか漫画「男塾」をイメージしてしまいます。画像は男塾に登場する巌娜亜羅十六僧・三宝聖の一人、猿宝です。猿宝は、男塾・三面拳の一人である雷電との闘いの中で、2本の長い鉄柱を設置し、それを支柱として、頭上から優れた体術を駆使した攻撃を仕掛けます。猿宝は、次の (私にとっては) 印象深い言葉を残しています。
    「本来ならば 山林竹林にあってこそ その妙 真価を発揮する技なれど………この平地では これで十分でごじゃる!!」
    prince-sex-otokojuku-empo
    …全然プリンスと関係なくてすみません。
  • "One lover - Sex / Two lovers - Death" - 一人の恋人 - セックス / 二人の恋人 - 死
    これは…エイズの社会問題など色々背景があったのかもしれませんが、他に韻を踏む言葉ってなかったのかな?とちょっと思います (苦笑)

So my name is Endorphin
私の名はエンドルフィン
I can make U happy, U see
貴方に幸福を与えられる者
I come from Planet Venus and I'll take U there
私は金星より訪れ、貴方を連れてゆく
U can be my ecstasy
貴方は私の喜悦となる

The 80s are over and the time has come
80年代は終わり新しい時代が訪れた
4 a new proclamation of love and fun
愛と愉しみを新たに宣言する時代
Monogamy and trust is what I'm talkin' 'bout
それは一夫一婦婚と信頼ということ
I'll give up all my lovers if U can make me shout
貴方が私に叫ばせるなら、私は他の恋人達を諦められる

Oh, S is 4 scandalous
S はスキャンダラス
E is 4 exciting
E はエキサイティング
X is 4 adults-only
X はアダルト・オンリー
Let's do something frightening
さあゾクッとすることをしよう

Chorus:
Sex, sex - Can't stop the feelin' baby, nobody should
Sex, sex - この感覚は止められない - 誰も止めてはいけない
Sex, sex - Anything this dangerous has 2 be good
Sex, sex - これほど危険なことは良いことに違いない

Now I'm the type of alien
Who knows just what he wants
私は自分が欲しいモノを知っているタイプの異星人
But U're the type who plays in the trees
しかし貴方は木々に囲まれ遊ぶタイプ
U got it maybe that's why U flaunt
貴方が見せびらかすのはそのせいか

Oh, I'll climb a thousand trees if I have 2
必要ならば私は千本の木々に登ってみせる
But baby I'm warning U
だけど貴方に警告しておく
One of us is gonna end up on our knees
貴方と私のどちらかはひざまずいて懇願するだろうと

Chorus

Sex, sex

(Get up) On the chair baby
椅子に立ってくれないか
Let me dance under your skirt
貴方のスカートの下で踊りたい
(Get up) (Everybody on the dance floor now)
C'mon now

(Get up) Get up on the table now
テーブルに乗ってくれないか
Let me show U how 2 flirt
誘惑の仕方を見せてあげよう
(Get up) (Ooh feels good, ooh feels good)

Ahh, ooh

I like it baby, when U let me touch U there
貴方が私に触らせる時、私の心は躍る
I like it girl, I knew U weren't wearin' any underwear (Get up)
貴方が下着を履いていないことを私は知っていた
Baby, is it wrong that I want U so?
ねえ、貴方が欲しいのはいけないことかい?
I want U baby
欲しい
I want U now
今すぐ欲しい

S. E. X.

Sex, sex - Can't stop the feeling baby, nobody should
Sex, sex - この感覚は止められない - 誰も止めてはいけない
Sex, sex - Anything this dangerous has 2 be good, good, good
Sex, sex - これほど危険なことは良いことに違いない
Just has 2 be good

Fellas, all the boys that know about the good thing say, "Yeah yeah!"
おい男達、良いコトについて知っているなら言うんだ - "イェー、イェー!"
And all the girls with no underwear on say, "Yes!" (Yes!)
女の子達、下着を履いていないなら言って - "イエス!” (イエス!)
We gettin' funky 2night
今夜はファンキーになろう
Sex

Yo! Peep this out
ほら、ちょっと
Fellas, I want everybody saying it on the one, come on
ほら男達、1拍目に合わせて言うんだ
S.E.X.
Say it (S.E.X.)
Come on, say S.E.X, say it (S.E.X.)

Keep that going fellas, come on (S.E.X.)
そのまま続けて
Yeah (S.E.X.)
Come on (S.E.X.)

Ladies back'em up one time (S.E.X.)
レディー達はバックアップして
(S.E.X.) Is the best, (S.E.X.) is the best, come on
それって最高 - それって最高
(S.E.X.) (Is the best) (S.E.X.) (Is the best)

One lover - Sex
一人の恋人 - セックス
I don't think U heard me
聞こえなかったようだね
One lover - Sex
一人の恋人 - セックス
Yeah

2 lovers - Death
二人の恋人 - 死
Wit it?
いいかい?
2 lovers - death
二人の恋人 - 死

So my name is Endorphin
私の名はエンドルフィン
I can make U happy, U see
貴方に幸福を与えられる者
I come from Planet Venus and I'll take U there
私は金星より訪れ、貴方を連れてゆく
And U can be my ecstasy
貴方は私の喜悦となる

Ooh sex (La la la la...) {x2}
Ooh sex, sex (La la la la...)
Ooh sex (La la la la...)

Now's the time 4 new proclamation of love and fun
今こそ愛と愉しみの新しい宣言を示す時
U can be nasty with only one love, but only one
一人の恋人と淫らになろう - 一人の恋人と
Ooh sex

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