OneH

主にトレーニングとダイエットのブログ。それとプリンス。

以前、「She Gave Her Angels」という曲について、私を含めてリアルタイムでこの曲を知っている人の間ではこれが悲しい曲だという認識があるけれども、その解釈は全くの誤解で、実はこれはプリンスとマイテとの幸せな曲だ、ということを書きました。これに関連する素敵なエピソードに、二人の結婚式と天使たちの話があります。1996年にプリンスがオプラ・ウィンフリー・ショーに出演した際、プリンス自身がこのエピソードについて語っていたので取り上げることにします。

以下に動画をリンクします。インタビューではプリンスは白いフカフカの洋服を着ていて、何だか草食動物に似たようなのがいそう…と思えるくらい穏やかです。

その前のやり取りから印象深いので、リンク動画で少し前の15:50頃から引用します。動画もそれくらいにスタートするようにリンクしてあります。プリンスは、マイテを前世から知っているソウルメイトだと言い、次のように語ります。

o(+>: I feel like she was either my sister or we were the same person or something in another life. It - there's a closeness that - that you know is right and you don't argue with.
前世のどこかで、マイテは僕の妹だったか、あるいは僕らは一人の同じ人間だったかのように感じるんだ。僕にはこの親密さは間違いのないものだと分かるし、それには異論を挟む余地もないんだ。

Oprah: Well, isn't this all kind of weird?
それって何だか奇妙に感じたりはしないかしら?

o(+>: Well, it depends on how you look at life.
まあ、それは人生をどう見るか次第だよね。

Oprah: It seems to me - I would just say this is a description of the two of you. I'm -- when he talks about you, there's a thing that happens in his eyes.
ちょっと言ってもいいかしら。あなたたち二人を描写するとこうなのよ。彼があなたのことを話すときって、彼の目の中に特別なものが発生するのよ。

o(+>: I do feel that I've come closer to who I aspire to be by being with her.
マイテと一緒にいると、僕はなりたいと願う自分の姿に近付いていると感じるんだ。

Oprah: And what does she do for you that you didn't - that you didn't have alone?
それって、マイテはあなたに何をしてくれるということなのかしら? あなたが一人のときはなかったことで。

o(+>: (pause) She makes it easier to talk to God.
(沈黙を置いて) マイテは僕を神と話しやすくさせてくれるんだ。

Oprah: Oh, I could cry. Was it like a traditional ceremony? Like there's a minister and... 'You take and you say and until death do us' - the whole thing?
まあ、泣いちゃいそう。式はトラディショナルなものだったの? 牧師がいて、"私はあなたを妻とし、死が二人を分かつまで" とか全部?

o(+>: Yes. Mm-hmm, mm-hmm. We had a very small wedding. We only invited friends and family -- mostly family. And there was a big empty section in the church. And she said that she's glad that it was empty because it left room for the angels.
そう、そうだよ。僕らの結婚式はとても小さなものにしたんだ。友達や家族だけを招待して - それも家族が殆どで。そしたら教会に大きな空きスペースができちゃって。でもマイテは天使たちのために席を残すことができて嬉しいと言って、喜んでくれたんだ。

この後、プリンスがどれだけロマンチックかという話になり、マイテが口を開こうとすると、プリンスは照れてマイテの口をふさごうとします。


この TV 出演は他にも色々と印象に残るシーンがあるので、後でもう少しだけ追記したいと思います。ちょっと時間が取れなくて更新に間があいてしまいそうなので、とりあえず天使の話だけ引用していったん投稿しておきます。

「Clouds」は、2014年のアルバム「Art Official Age」の2番目の曲です。既に前回の記事で軽く感想を書いていますが、歌詞全体を和訳して改めて取り上げることにします。

その前に「プリンスって何が凄いの?」について少し

と、その前に少し別なことを書きます。前の記事で、「Clouds」はシンプルなようでシンプルでなく、「プリンス以外に作れる人がいない」タイプの曲だと書きました。この点について個人的に思うことを少し書きます。

まず、プリンスを知らない人がプリンスを聴いたときにありがちな反応って、こういうものだと思います。

プリンスって凄いアーティストだと言われているけど、曲が単調で大したことない。実際に聴いてみても何が凄いのか分からない

この印象は的外れも良いところなのですが、実際、多くの人にとって、プリンスを聴き始めたときの出発点にはこんな気持ちが多少なりとも混ざっているものだと思います。何を隠そう、隠すことでもありませんが、私も最初はこのような感想を抱きました。このように感じてしまう理由は色々ありますが、とりあえず三つ挙げると、一つには注意深く聴かないと「単調ではない」ことに気付かないこと、二つ目として曲の構成の違い、三つ目として歌詞が分からないと表現されている世界の面白さに気付かないことがあると思います。これらの点についてもう少し詳しく書きます。

まず一点目は、注意深く聴かないと「単調ではない」ことに気付かないことです。実のところ、プリンスほど「単調ではない」音楽を作るアーティストは他にいません。「複雑」という言葉はしっくりこないので、「単調ではない」としておきます。この点に関しては、プリンスの比較対象になりうるアーティストは本当に他に誰も存在しない、と断定的に言い切って良いと個人的には思います。これはプリンスの音楽を語るうえで絶対外せない前提条件のようなものなのですが、他に類似するアーティストがいないために、逆に気付きにくいことかもしれません。そして、これは今回取り上げる「Clouds」にも当てはまります。「Clouds」を注意深く聴くと、曲の展開やサウンドの組み合わせが次々と移り変わり、特定のタイミングにしか出現しないサウンドもあり、何度繰り返し聴いてもその度に新しい何かを感じ取れるのではないか、と思えてきます。これは私にとってはプリンスと他のアーティストを分ける決定的な違いの一つです。

しかしながら、これほど決定的な違いであるにもかかわらず、不思議なことにこの視点でプリンスが語られることは殆どないように思います。例えば、(日本の) 音楽批評家は、私の印象では「それしかできないのか?」というくらいよく他のアーティストを引き合いにしてプリンスを語ります。深く考えずに名前を挙げると、ジェームス・ブラウン、スライ、ジミ・ヘンドリックス、カルロス・サンタナ、ジョニ・ミッチェルといったように。しかし、私はそういう批評は少し違うと感じるのです。なぜならば、たとえこれらの音楽を全て融合させたとしても、決してプリンスの音楽にはならないからです。誰の名前を出そうとも、ここで挙げた「単調ではない」音楽を作るというプリンスの特徴に関しては、比較対象になりうるアーティスト自体が存在しないのですから。それに、特定のアーティストの名前を出してその影響に話を限定すると、それと比較してプリンスがいかに特異な形態に変性したアーティストであるかを意識せずにはいられません。こういった点には全く触れず、他のアーティストの名前を出すだけて終わってしまうような批評を読んでも、「ふーん、それで、プリンスの批評はどこに書いてあるの?」という印象が私には残ります (一応断っておくと、これは誰が一番凄いかという議論ではなく、プリンスがそれだけ他者とは違うという話です)。

二点目は、曲の構成の違いです。プリンスの音楽を単調に感じてしまう理由としては、それが典型的な邦楽ポップスの構成に従っていないため日本人にはピンと来ないというのもあると思います。典型的な邦楽ポップスとは、私のイメージでは次のような構成で、サビの出来具合で善し悪しが判断されるような曲のことです。

1番: Aメロ - Bメロ - サビ
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2番: Aメロ - Bメロ - サビ (1番と同パターンの繰返し)
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場合によりブリッジ
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サビ繰返し (一部音階を変えるアドリブを添えて)

「いつ凄いサビが来るんだろう」といった待ち方をして聴くと、プリンスにはそういう展開にならない曲が多いために「凄いサビを待っていたのに期待と違う。プリンスって大したことない」となってしまいます。プリンスには、邦楽ポップスの「Aメロ - Bメロ - サビ」、あるいは洋楽ロックや R&B で言う「ヴァース - コーラス - ヴァース - コーラス」の展開を作らないことでグルーヴを作り出す曲が数多く存在します。また、「ヴァース - コーラス」の構成を取っていても、ヴァースとコーラスでメロディが一緒、という曲も多いです (これはプリンスを聴き始めたときに「なんでこの構成で曲が成立しているのだろう」と驚嘆する点でもあります)。

何だかくだらないことを書いてるような気もしてきましたが、ここで挙げた二点目の理由は、実際私がプリンスを聴き始めた頃に戸惑ったことです。私の場合、予め「Purple Rain」や「When Doves Cry」は聴いたことがありましたが、これらの曲を良さを感じ取ることはできませんでした。「なんだ、プリンスって有名らしいけど "パーポーレイン、パーポレイン♪" ってサビが弱いな、というか "ビートに抱かれて" に至ってはサビがないじゃないか」という感想で、歌詞も分からないので曲の根底にあるストーリーや曲に込められている感情も当然理解できるはずもなく……1991年の「Diamonds And Pearls」を中学三年の時に聴いて、私は初めてプリンスに惹かれました。

ただし、この点に関して言えば、「Clouds」の場合は前半部分だけを切り出せば一応普通のエレクトロな R&B といった感じで、コーラス (サビ) は明確に存在しています。といってもコーラスは曲の主役ではなく全体の構成要素の一つといった感じで、ヴァースも一回きりしか登場しません。「凄いサビを作って他はサビに至るまでの引き立て役」という感覚では曲を作っていないのだと思います。

ちなみに、この曲ではヴァースとコーラスがかなり明確に分かれて存在している印象を受けると思いますが、そこがまたこの曲の素晴らしいところです。それがなぜ素晴らしいかを理解するには歌詞を知る必要があるので、これについては後述します。

三点目は、歌詞が分からないと表現されている世界の面白さに気付かないことです。ノーベル賞を取るタイプの歌詞ではないかもしれませんが (苦笑)、面白さで言えばプリンスは世の中で最も素晴らしい歌詞を書くアーティストの一人です。プリンスは曲が無数にあるため例を絞って挙げるのは難しいのですが、今回の「Clouds」も含め、このブログでわざわざ歌詞を和訳しつつ曲を取り上げているのはこれが理由になります。

「Clouds」の歌詞について少し

さて、「Clouds」の歌詞を見ていくことにします。「Clouds」という曲のタイトルは、言うまでもなくクラウドコンピューティングなどのテクノロジーの進歩によりもたらされた、"Artifical (人工的)" な現代社会の変化を意識したものだと思われます。また、アルバムの内パッケージに雲の写真があるように、文字通り空に浮かぶフワフワボンヤリ (blurry) した雲をイメージしている部分もあると思います。

この曲のヴァース部分では、その「Clouds」のテーマに沿った内容が歌われます。かつて、スターと呼ばれる人物は人々を魅了する特別な存在であったのに対し、現在ではテレビのリアリティ番組で素人出演者がスターのように注目を浴びたり、インターネットのステージに立てば誰もが世の中に情報を発信したりすることができるようになりました ("All of our life's a stage / Everybody stars, reality so blurry")。また、タトゥーを入れるのはかつては特別なことだったのかもしれませんが、今では特別なことではないし、別にわざわざタトゥーなんて入れなくても良いよ、といった考えをチラリと覗かせます ("Tattoo-less and proud")。

一方で、コーラス部分は歌詞がガラリと変化します。コーラスでは「Clouds」のテーマとは一見無関係に、恋人との親密なひとときが歌われます。ヴァースとコーラスでは歌の内容が分断されており、サウンドの方も、ヴァースの少しネトッと粘るようなサウンドに対して、コーラスは一転してまるで小鳥のさえずりのような可愛らしいものになります。個人的に、この変化はこの曲の素晴らしい点の一つだと思います。要するに、この曲は「Clouds」とタイトルが付けられていますが、クラウドの "Artificial" な時代になっても、本当に大切なものは恋人との親密な繋がりだよ、ということを歌っているのです。そして、プリンスは恋人が一人シャワーで歌っているのに気付いたら、Lovesexy のカバーアートの花を持って一緒にシャワーをするのです。

また、この曲は後半の展開も面白いです。この曲のもう一人のヴォーカリストでもある Lianne La Havas が、プリンスに対して語りかけるのですが、プリンスが仮死状態に置かれた期間を明かす場面 (「Well, in fact, about 45 years / 具体的には、45年ほど」) で、声にエコーがかかります。目覚めたばかりでまだ朦朧としてるプリンスが、事実を知ってガーンとショックを受けているように思えて面白いです。

また、語りの最後に Lianne が「And we are here to help U / 私たちはあなたの助力になろうとしているのです」と言うところでは、なぜか声が変質して不気味な雰囲気になります。聴く方としては「えっ、助けてくれるって言うけど本当なの? どっちなの?」と戸惑うのですが、すぐさまコーラスのフレーズが流れて、あたかも何事もなかったように曲が展開していきます。

この語りの部分、私は可笑しくって笑いそうになるのですが、こんな聴き方で良いのでしょうか? 後になって何か深い意味が込められているのを知ってショックを受けるかもしれません。そういえば、プリンスは2009〜2010年頃に股関節手術を受けたと言われているので、だとするとその時におそらく全身麻酔を経験していることになります。その経験がこの語りのインスピレーションになっているのかな、と思ったりはしますが、それ以上の推測をする気にはならず、私にはただただユーモラスで可笑しく感じます。

この曲は YouTube に見つからないので歌詞だけ載せますが、「Clouds」は個人的にアルバムの中でも特に印象の強い曲の一つです。


Chorus:
U should never underestimate the power of
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck
彼女に不意にしてあげる首筋へのキスの力を決して軽く思わないで
彼女に不意にしてあげる首筋へのキス
首筋へのキス

And every time U catch her singin' in the shower
U should go and get a flower
Don't matter what the hour
Just rub it on her back, rub it on her back
rub it on her back
彼女がシャワーで歌っているのを見つけたら
それが何時であっても毎回お花を取りに行って
それで背中を流してあげて、背中を流してあげて
背中を流してあげて

In this brand new age
We do everything quick, fast, in a hurry
この新しい時代では
人々は何事も早く急いで済ませてしまう
All of our life's a stage
Everybody stars, reality so blurry
人生は全てステージと化し
皆がスターになり現実は曖昧になる
If U screamed out loud
The top of your voice wouldn't be higher than the crowd
たとえ精一杯叫んだとしても
その声は集団の中に埋もれてしまう
Tattoo-less and proud
We're getting high on something that doesn't require clouds
We don't need no clouds
タトゥーを入れずに誇りを示す
クラウドを必要とせずにハイになろう
クラウドを必要とせずに

Chorus

All over me

I wanna give U something, baby
But I wonder does it really even matter if it ain't on a stage
君にあげたい物があるんだ
だけどそれがステージの上でなければ意味があるのだろうか
If it ain't on a stage
I don't really think it matters in this brand new age
それがステージの上でなければ
この新しい時代では意味がないように思えてしまう

When life's a stage in this brand new age
How do we engage?
この新しい時代、人生がステージならば
人はどのようにして契りを交すことができるのだろう
Bullying just for fun, no wonder there's so many guns
Maybe we're better off in space
ただ楽しむために弱い者いじめをする、たくさんの銃が溢れるのも無理はない
それなら宇宙空間にいた方がましなのかもしれない

Mr. Nelson, Mr.Nelson, can U hear my voice?
ネルソンさん、ネルソンさん、私の声が聴こえますか?
Sir, we know U're a little bit groggy
ネルソンさん、少し意識が朦朧としていますね
And U're probably going to find it hard to speak
そして言葉を上手く発せられないと思います
But don't try to talk or process too much now
でも今はまだ頑張って話したり思考を働かせたりはしないでください
We just want to let U know that the medication U were given
実は私たちの投与した薬剤により
Has put U in a suspended animation for quite some time
あなたはかなりの時間に渡って仮死状態に置かれていました
Well, in fact, about 45 years
具体的には、45年ほど
But where U are now
Is a place that does not require time
しかし今、あなたは時間を必要としない場所にいます
That being said, U are completely safe
その上で、あなたは完全に安全な状況にいることをお伝えします
And we are here to help U
私たちはあなたの助力になろうとしているのです

U should never underestimate the power of
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck
彼女に不意にしてあげる首筋へのキスの力を決して軽く思わないで
彼女に不意にしてあげる首筋へのキス
首筋へのキス

It's in my power to love U
It's in my power to love U up
It's in my power to love U
それは君を愛する私の力の中に
それは君に愛を注ぐ私の力の中に
それは君を愛する私の力の中に

It's in my power to love U up
それは君に愛を注ぐ私の力の中に
(Hot)

些細なことかもしれませんが、去年からずっと心に引っ掛かっていたことを書きます。

2016年4月23日、日本時間では4月22日となったニュースの翌日に当たる日、Rolling Stone 日本版サイトに次の記事が掲載されました。タイトルがタイトルなだけに、ファンには見覚えのある人もいると思います。

「俺は死はこの世を去るって意味じゃないと思ってる」
2014年の未発表インタヴューでプリンスは、「死は、ある時俺がリアルタイムで話せなくなった時のことだと思う」と話していた。

このタイトル、おかしいと思いませんでしたか? 私はおかしいと思いました。「あれ? プリンスって、こんなことを言う人だっけ…?」と。

実はこれ、全くの誤訳です。英語の元記事をチェックすると分かりますが、これは「I don't think about gone (この世を去った時のことは考えていない)」という全く違う意味の発言を誤訳したものです。原文と照らし合わせればすぐにおかしいと分かるミスですが、急いで内容をチェックせずに掲載してしまったのだと思います。英語の元記事はこれです。

問題の部分は、インタビューでは次のやり取りになります。未発表アルバムの話の中で、保管庫には The Revolution のアルバムがいくつかと、The Time のアルバムが2つ、Vanity 6 のアルバムが1つあるとプリンスは言います。そして「将来、同じ時期のイケてる曲をまとめて、リリースなんてこともできるよね」と言うプリンスに対して、インタビュアーが質問します。

Brian: Do you want this to happen when you're gone?
この世を去った後に未発表アルバムをリリースしてもらいたいですか?

Prince: No, I don't think about gone. I just think about in the future when I don't want to speak in real time.
いや、僕はこの世を去った時のことは考えていないんだ。将来、リアルタイムな話をしたくなくなった時のことを言っているだけだよ。

(日本語は記事の引用ではなく私の訳です)

要するに、プリンスはここでは「今はこの瞬間にリアルタイムでやりたいことがあるから、レボリューション時代の昔の未発表アルバムをまとめるつもりはないよ。将来は分からないけどね」といったニュアンスのことを言っているだけです。

ちなみに、後に公開された別の記事でもプリンスは似たようなことを語っています。

He claims not to feel the passage of time, and says mortality doesn't enter his thoughts: "I don't think about 'gone.'" To the contrary, he is immersed in the moment, invested in a creative future that he believes will be long and bright.

プリンスは時間の経過を感じることがないと言い、いずれ死ぬことについて思いを巡らすこともないと言った。「'この世を去った時のこと' は考えていないんだ」。逆に、彼は今この瞬間に没頭し、創造的な未来に力を注いでいる。光り輝き、そして長く続くであろうと彼自身が感じている未来に。

(日本語は記事の引用ではなく私の訳です)

あれだけの資産がある人が遺書を残していないというのは信じ難いことのように思えますが、この文章を読むと、「まあプリンスだから…」ということで仕方ないのかなと思います。

とにかく、このポジティブな文章は、私には記事の中で特に印象的だった部分です。プリンスの最期については、服用した錠剤に誤表記のラベルが付けられており、実際には致死量の医薬品だったことなど様々な疑問点があります。しかも発見された場所がエレベーターだったことから、本人は致死量の医薬品を服用したことは自覚していなかったと考えられます (自らの意思でオーバードースしたのであれば、普通はベッドやソファなどで発見されるものだと思います)。プリンスの最期は今なお謎が残ったままであることや、2014年の意味深なコンセプトアルバム「Art Official Age」などから、中には「プリンスは自分の寿命を感じ取っていたのではないのだろうか」と思う人もいるようです。ただ、私はそう判断できるほどの情報は知らないので、そのようには思っていません。

また、個人的には次の箇所も印象的です。何となく「Art Official Age」の最終曲の「Affirmation III」を思い起こします。

He seems to be hinting at past problems of his own, so I ask if he was ever self-destructive. His eyebrows shoot up. "Self-destructive? I mean... do I look self-destructive?" This leads him to a disquisition on why he avoids talking about the past. "People say, 'Why did you change your name?' and this, that and the other. I'm here right now, doing what I'm doing right now, and all of the things I did led up to this. And there is no place else I'd rather be than right now. I want to be talking to you, and I want you to get it.

プリンスは自身の過去の問題を仄めかしているように私には思えたので、彼に自己破滅的になったことがあるかと尋ねてみた。プリンスは眉を上げて言った。「自己破滅的? それって、僕がそう見えるってこと?」。なぜ過去を語るのを避けるかについて、プリンスの長い話が始まった。「人は "どうして名前を変えたの?" とか、あれこれ色々なことを聞いてくる。でも僕は今ここにいて、今やっている通りのことをしている。全てのことは今に繋がっているし、今この場所以外に僕がいたいと思う場所はないんだ。僕は今、君と話をしたいと思っているし、君にもこのことを分かってほしいんだ」

(日本語は記事の引用ではなく私の訳です)

Art Official Age

アルバム「Art Official Age」は、2014年1月に行われたこの未発表インタビューの後、2014年9月末にリリースされた作品です。3rdEyeGirl をフィーチャーしたロック色の強い「Plectrumelectrum」も一緒にリリースされました。

実を言うと、私はこのアルバムは一応購入したもののずっと放置していて、去年の夏ぐらいになってやっと封を開けました。まだ主に、殆ど乗らない車の中でしか聴いていないのですが、いざ聴いてみて「56歳にしてこんなアルバムを作ってしまうなんて!」と驚愕しました。私が「Art Official Age」から受けた印象は、上の Rolling Stone のインタビューで語られているような明るい未来です。今の所、ファーストインプレッションから感想はあまり変わっていません。

いくつか曲をピックアップして、簡単に感想を書きます。

1. Art Official Cage

最高のアルバムオープナーです。何せプリンスの第一声が、教室で先生が生徒に語るようにこう来るのです。

Welcome home, class / U've come a long way
よく来たね、みんな / 長い道のりだったね

「Let's Go Crazy」や「The Sacrifice Of Victor」などで冒頭に聴衆や門徒に対して語り掛けをする展開というのは過去にもありましたが、再びこんなことをやってくれるとは想像していませんでした。

曲の方は僅か3分40秒程の中に3つか4つの音楽ジャンルを混ぜこぜにしたとんでもない構成で、おまけになぜか水責めの拷問まで受けるというカオスっぷりです。さらにはカミール声みたいなものまで登場します。カオスを凝縮したような曲といえば、私が咄嗟に思い付くものとしては例えば「Dream Factory」などがありますが、こんな曲は80年代にだってなかったと思います。

2. Clouds

個人的にかなり好きな曲です。セクシー、タイト、クール、ファンキー、様々なフィーリングが複合していて、一言でこの曲を的確に形容できる言葉は存在しません。一聴した感じシンプルな曲という印象を受けるものの、繰り返し聴く内に最初の印象が完全な誤りであり、実は全くシンプルな曲ではないことに気付くという、プリンスらしい、というか「プリンス以外に作れる人はいない」と感じさせるタイプの曲です。前半の歌部分のセクシーなコーラスにエレクトリックなサウンド、後半の Lianne La Havas の品のある語り掛けのバックで演奏されるピアノ、目立たないけどいつのまにか出現して良い雰囲気を醸し出すアコースティックギター、終盤のエレキギターソロなどバラエティーに富んだ構成とサウンドです。歌詞はクラウドという言葉も含めて全体的に様々な意味が込められている感じがしますが、コーラス部分だけを見るとシンプルで胸がキュンとする歌詞です。

U should never underestimate the power of
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck, when she doesn't expect
A kiss on the neck
彼女に不意にしてあげる首筋へのキスの力を決して軽く思わないで
彼女に不意にしてあげる首筋へのキス
首筋へのキス

And every time U catch her singin' in the shower
U should go and get a flower
Don't matter what the hour
Just rub it on her back
Rub it on her back
Rub it on her back
彼女がシャワーで歌っているのを見つけたら
それが何時であっても毎回お花を取りに行って
それで背中を流してあげて
それで背中を流してあげて
それで背中を流してあげて

後半の Lianne La Havas による語り掛けにより、このアルバムの設定では、プリンスは45年間の仮死状態から目が醒めた状態であることが判明します。アルバム単位で音楽を聴くことが少なくなっている昨今、この曲をアルバムから切り離して聴いた時に、この突拍子のない展開がどれだけ奇妙に聴こえるかを想像すると可笑しくなります。

ちなみに、Peach & Black Podcast のレビューで知ったのですが、この曲には2回だけクラシックなリンドラムサウンドが鳴る瞬間があります (2分19秒と2分40秒頃)。これは私みたいに流し聴きをするような聴き方をしていると中々気付かないと思います。ただし、このレビューを聴いたために「プリンスが彼女の背中を洗うのに使ったのは Lovesexy のカバーアートの花だよ」とか、余計なイメージも擦り込まれてしまいました。これを読んだ人に同じイメージが植え付けられるように、文字を強調しておきます。

3. Breakdown

あなたは初めて「Gett Off」のオープニングを聴いたときのことを覚えていますか?

私はもう忘れてしまいましたが、「Gett Off」のオープニングの叫び声ですらこの曲ほどの衝撃は受けなかったかもしれません。これほど場の空気を微妙にする悶え声を出す56歳は、プリンスの他に誰がいるでしょうか (いやいません)。ここで私が言っているのはもちろん2分55秒〜3分15分頃のプリンスのボーカルのことです。車の中などでボリュームを高めにして聴くと、切り裂くような悶え声が出現する突然の展開に、場の空気が微妙になること受け合いです。

4. The Gold Standard

こういう曲はプリンスならいくらでも作れそう、とちょっと思ったりもしますが、オープニングの "Bob George" 声には「おお!」と思います。

10. Way Back Home

「56歳にしてこんな曲を作るなんて」

これしか言えないのか?と突っ込まれそうですが、私にとってこのアルバムは、「56歳にしてこんな曲を作るなんて」の連続です。

13. Affirmation III

アルバムの最終曲です。「Way Back Home」のビートとバッキングボーカルが流れる中、再び Liana がプリンスに語り掛けます。

U've probably felt many years in your former life
U were separate from not only others, but even yourself
Now U can see that was never the case
U are actually everything and anything that U can think of
All of it is U

Remember there really is only one destination
And that place is U
All of it, everything is U

「貴方は他人だけではなく、貴方自身からも切り離されていました」
「貴方は実は全てであり貴方が思考できるあらゆるものです。その全てが貴方です」
「目的地はたったひとつしかありません。その場所は貴方です。その全て、全てが貴方です」

「Way Back Home」もそうですが、解釈の幅が広い詩です。ただ、私はこのアルバムから受ける「現在、未来、そしてそこに至るまでの過去」という印象を素直に受け取っています。「Clouds」の説明にある仮死状態にされた45年というのは、普通に考えると未来の45年後という意味なのかもしれませんが、個人的には過去との繋がりをイメージします。56歳から45年を引くと11歳です。1999年の Larry King のインタビューで、プリンスはミュージシャンを職業にして生きていくことを12歳頃に考えるようになったと言っていますが、その頃に近い年齢になります。

この曲は、一時期改名して再びプリンスに名前を戻したことや、遂にワーナー時代のマスターの所有権を得たこと、さらにはミュージシャンとして生きていくことを考え始めた子供の頃も含め、昔の様々な過去から遡って現在に繋がったプリンスの今の心境を表現したのだと思っています。

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